All Chapters of 幸せ色の恋~想いよ、永遠に~: Chapter 51 - Chapter 60

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第51話

レオくんを探す為に、教室に向かった。クラスマッチで全員が外に出ているため、1年生の校舎はシンと静まり返っている。私の歩く音だけが、長い廊下に響き渡った。ガラガラっと大きな音を立てながら教室のドアを開けると、そこはもぬけの殻。レオくんが寝てるんじゃないかと思ったが、完全に空振りだった。だとしたら...図書室……?この前、壮吾達が何の迷いもなく行ったのがそこだった。確信は持てないけれど、可能性がある場所を探すしかない。だけど。やっぱり、そこにもレオくんの姿はなかった。身を縮めがら3年生の廊下を歩く。上級生の校舎って、どうしてこんなに怖いんだろう。その時だった。何やら、嫌な視線がある。するどく刺さるような視線で、背筋が凍った。立ち止まって周りを見渡しても、廊下には人の気配はない。どの教室も授業中で、こちらを見ているような人もいなかった。気のせいかと思ったけれど何だか気持ち悪くて、その場から逃げるようにして階段を駆け上った。向かう先は、屋上。やっぱり、屋上のドアを開けると、錆びついた鉄のドアが嫌な音をたてた。だけどその音を我慢したら、ドアの向こうは天国だ。穏やかな風が吹き、緑や花の匂いを運んでくる。見下す景色は相変わらず美しくて、まるで別世界に来たような気分になった。青空に浮かぶフワフワの雲を掴むようにグッと伸びをし、深呼吸をする。綺麗な空気を吸い込むと、体が浄化されたような気がした。辺りを見渡し、レオくんを探す。...いた。フェンスの近くにあるベンチに、横になっている。目を腕で覆って、寝息を立てていた。太陽の光に反射して、レオくんの髪が輝いて見える。おまけに、透き通るような白い肌。全てにおいて眩しいレオくんの寝顔を見ると、どうしても、足が勝手に動いてしまうんだ。気がつけばレオくんのそばまで行き、ベンチの前に座り込んでいた。
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第52話

レオくんの茶髪が、ゆったりとした風に揺れている。すごくサラサラだ。シャンプー、何使ってるんだろ……。「なに?」突然の声に、私は咄嗟に立ち上がった。鼓動が暴れて、目の前がぶれて見える。目も尋常じゃなく泳ぎだして、言葉が出てこない。私がオロオロしていると、レオくんは目から腕をあげて、太陽の光に目を細めた。そのまま、視線が私に向けられる。レオくんは迷惑そうにあたしを見たあと、むくっと体を起こした。前かがみになり、ため息をつく。レオくんの美しすぎる容姿と、寝起きのアンニュイさで余計に美しく見えてしまう。男の子なのに、レオくんはずるい。私にも、ひとつくらい美しさをわけてくれてもいいのに。「ねえ」レオくんの声に、私はハッと我に返り背筋を伸ばした。「邪魔すんの、やめてくんない?」すごく静かな声。私を見上げるその視線も、今の言葉も、何一つ感情が込められていない。レオくんは今、何を考えているのか、全く想像もできない。どうしてこんなに壁を作るんだろう。壮吾や日和が心配している、『レオくんの過去』。他人を受け付けない、感情を表に出さない。そんな壁を作らなければいけない程の、辛い過去なの?「ねぇ、レオくん」私が呼んでも、レオくんの表情は変わらない。前かがみになり、地面に視線を落としている。「レオくんのそばにいるの、迷惑かな」「………」「すぐに仲良くなれなくていいの。私が一方的に話すのが迷惑じゃなければ、レオくんの」そばにいさせて...。そう言葉を続けようとしたのに、突然ベンチから立ち上がったレオくんに遮られた。「あんたさ、俺の何を聞いたの?」
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第53話

今度は、私がレオくんを見上げる形になった。強い風が吹き、私達の髪が左右に大きく揺れる。「壮吾に、俺の面倒を見ろとでも言われたの?俺、言ったよね。同情は嫌いなの」無表情で、淡々と言った。そして、私に背を向け屋上のドアの方へ歩いて行く。――レオくん。違うよ。壮吾は関係ないよ。それに……。いつから、そんなに我慢しているの?誰にも本心を見せずに、ずっとその自分を演じてるの?心の休まる場所。思いを丸裸にできる場所。私が、作ってあげたい……。「レオくんっ!」私は、ドアノブに手をかけたレオくんの背中に声を張った。「私、壮吾達がレオくんの事を話してるのは聞いたよ。けど、詳しいことは聞いてない。レオくんの事は、何も知らないの」「………」「ただ...時々、レオくんがすごく哀しげな表情をするから」そう。あの時、花屋の前にいたレオくんの表情。私の方を向いた時に、明らかに動揺していた。哀しげに眉間にしわを寄せていたのに、咄嗟に元に戻してた。「同情なんかじゃないよ。壮吾の友達だからとか、そんな事も関係ない。ただ、レオくんに笑ってもらいたくて...」本当だよ、レオくん。確かに、壮吾に『あいつの事、頼む』と言われた。だけど、壮吾の言葉は関係なく、レオくんの支えになりたいと心から思った。レオくんの抱えている問題を、全て取り除けるなんて思ってない。ただ、重荷を半分にしてあげたい。そんな事、簡単な事じゃないんだってのもわかってる。だけど、何もせずにいるなんて、私には耐えられないから。「もう一度言うね。壮吾は関係ない」「………」「レオくんが迷惑だって逃げても、あたし、追いかけるから。覚悟しといて」私が言い終わると、ドアノブに手をかけたままのレオくんが私を振り返った。相変わらず無表情だけど、私のこの気持ちは伝わったんじゃないかと思う。確信はないけれど、レオくんが動きを止めたり、振り返ったりしてくれた時は、ちゃんと聞いてくれた時だから。レオくんが出て行ったあとも、ーはずっとドアへ目を向けていた。どんなに時間がかかっても構わないから、せめて高校を卒業するまでには笑えるようになっていてほしい。あと、3年近くある。私が本気で頑張れば、光が見えてくるかもしれない。レオくん、一緒に、笑おうね。
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第54話

「ああ~、昨日、ほんっとおしかったよね~。もう少しで男子バスケ優勝だったのに」学食で、カレーの乗ったおぼんを持った日和が、席を探しながら言った。「そんなにいい試合だったの?」私の手には、学食で一番人気のある激安うどん。安くて、すごくおいしいんだ。「美羽も見とけばよかったのに。一体どこにいたのよ~。私、めっちゃ探したんだからね」ぷくっと頬を膨らませる日和。私は苦笑しながら肩をすくめ、ごめんと一言謝り、空いている席に腰を下ろした。「ちょっとレオくんのとこ行ってて」私が言うと、日和が身を乗り出してきた。その衝撃で、テーブルに置いたおぼんがガタンと大きな音をたてた。「レオくんと話したの?」私は、ううんと首を振る。「まぁ、話したと言えば話したのかな。私が一方的にだけどね」「そっか」「少しでもレオくんの抱えてるものを取り除けたらと思うんだけど、なかなか難しいよね」私が言うと、日和は昼食のカレーをスプーンですくって、『そーだねー』と苦しそうに言った。「私も何度か試みたんだけどね。全くダメだった。『コウに何か言われたのか』とか、『同情が一番嫌いだ』とか言われてね。小学校4年くらいから、ずっとこの調子」え...?そんなに長く?レオくんは、小学生のころからずっと自分を隠したままなの?長い時間を共に過ごしている日和ですら、レオくんを変えられないなんて。本人の前であんなにたんか切ったけど、本当に卒業するまでに笑ってもらえるようになるんだろうか。
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第55話

「私ね、実は美羽にちょっと期待してるんだ」私は、え?と眉を上げる。「今まで彼女を作ろうとしなかった柊先輩の心を動かした人だし」そう言って、悪戯に笑う日和。改めて言われると、恥ずかしくなる。一生、この胸の高鳴りには慣れないかも。「だからさ、もしかしたら、レオくんの心も変えられるんじゃないかと思ってさ」「そうだったらいいんだけど」「私ね、美羽にはそういう力があると思うんだ」私はまた眉を上げる。「人の心を、いい方向に動かせる力」日和の言葉に目を丸めた私だけど、そう言って貰えたことがすごく嬉しくて、さっきとは違う胸の高鳴りに襲われた。「買いかぶり過ぎ」照れ隠しの為に、うどんを豪快にのどに流し込んだ。その時。ガヤガヤと賑わう学食が、さらに騒がしくなった。女子の黄色い声が、学食の入り口辺りから聞こえる。その黄色い声を浴びている人物が移動すると、女子たちの眼差しも一緒に動いて。徐々に、眼差しが私達の方へと向けられた。それと同時に、人ごみの中から現れた人物。「相変わらず人気者だね」私がほほ笑むと、壮吾が私の横に座った。コウ先輩は、日和の隣だ。日和の体が、コウ先輩を避けるように横に傾いている。「うどん、うまそ」壮吾が、私の食べているうどんをねだるように見てきた。「壮吾も買ってきたら? おいしいよ」「それが食いてー」「え?」私が壮吾を見上げた時には、おぼんごと壮吾にうどんをとられていた。もちろん、それを見ていた壮吾のファンから次々に悲鳴が上がる。「壮吾のファンが泣いてるよ」耳打ちするように壮吾に言うと、「関係ねーよ。ほっとけ。俺は、おまえのが食いてーんだから」
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第56話

……うっ。今、心臓掴まれた……。壮吾はいつも、私の心臓をわしづかみしてかっさらっていく。どんだけ自分勝手なんだ、と思う発言だけど、嬉しくてたまらない。周りの女子とは、扱いが違うんだ。彼女だから、当たり前なんだけど。「昨日どうだった? レオのヤツ」うどんのお椀を私に差し出しながら壮吾が言った。答える代りに、肩をすくめて苦笑する。「まぁ、そうだろうなー。あいつ、なかなか手強いからな」私の気分を和らげるように、壮吾が笑ってくれる。壮吾の笑顔は、また頑張ろうって気分にしてくれる不思議な力があるんだ。「そんな事より、美羽。明日、何も用事ねーだろ?」突然言われた私は、ぽかんとしながら『うん』と頷いた。「明日、13時に駅前で待ち合わせな」どうして? そう聞く前に壮吾は立ち上がり『絶対来いよ』と念を押してコウ先輩と去って行った。意味がわからない私は、眉間にしわを寄せて首を傾げ2人の背中を見送った。「デートだよ、美羽」コウ先輩がいなくなると急にテンションを取り戻した日和。また身を乗り出してきて、目を輝かせている。「デ、デート?」思わず、声が上ずった。「どこ行くんだろうね。とにかく、女の子らしい服装で行くんだよ」翌日。私は日和に言われた通り、できるだけ女の子らしい服を選んだ。髪もヘアアイロンで巻いて、大人の雰囲気にしてみた。壮吾が好きかはわからないけど、これでも、昨日雑誌を買って研究したんだ。待ち合わせ場所の駅に向かう途中、雑貨屋のウインドウに並ぶかわいいスケジュール帳を見つけた。性格的に、今までスケジュール帳なんて持ったことがなかったけど、これから壮吾と過ごす思い出に、ちょっと買ってみようと思った。赤い表紙に、かわいいキャラクターがのっている小さな手帳だ。これから壮吾と過ごす時間を、これに記していこう。どんなに小さなことでも構わない。日記を書いたり、もちろん、今日みたいなデートの約束を記したり。このスケジュール帳が色鮮やかに染まる日が、楽しみだ。そう言えば、壮吾もスケジュール帳を持っていたよね。この前、鞄から落ちたやつ。壮吾の使い方が荒くてもうぼろぼろになっていたけど。もしかして、壮吾も私の事を書いてくれていたりして。そう思うと自然と頬が緩んでしまう。何度か頬を叩き、緩みを元に戻そうとした、その時。
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第57話

「何ニヤけてんだよ」突然声をかけられて、はっと顔を上げた。そこには、すでに駅に着いていた私服姿の壮吾が。「うわっ!!」思わず、びっくりして飛び上がってしまった。「おまえさ、どうして俺を見るとそうやってびっくりするわけ?俺、不審者みてーじゃん」「そ、そんなことないよ」慌てて否定した私だけど。いつも、壮吾の事を考えてる時に現れるんだもん。びっくりするに決まってる。「そ、そんなことより。 早いね、壮吾。まだ待ち合わせの10分前だよ」話題を変えると、壮吾は照れ臭そうに首の後ろに手を当て、少し上を見上げた。「おまえより先に待ってねーと、心配だろ」心配?私は小首を傾げる。「物騒な世の中だから、おまえが変な男に絡まれねーか心配なんだよ」「え?」「いっつもボーっとしてっからよ。隙がありすぎるんだよ。おまえは」「ぼ、ボーっとなんてしてないよ」「してんだろ。つーか、行くぞ」「えっ、うわっ!!」いきなり壮吾に腕を引っ張られ、前のめりになる。歩き出すと、一度も私を振り返ることなく歩いて行く。改札を抜け、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ。っていうか、いつの間に切符買ってたのよ。準備がいいんだから。休日の電車内は満員で、背の低い私は押しつぶされそうだった。「ひと駅我慢すれば、たぶん席が空くから」そう言って、壮吾は自然な流れで私を壁側にして守ってくれた。こんなこと初めてで、壮吾の厚い胸板を前に、心臓がはちきれそうになる。壮吾が言った通り、次の駅でたくさんの人が降りて行き、2人分の席が空いた。壮吾に誘導されて、その席に座る。と、またしても、私の心臓が暴れだした。電車が揺れるたびに、肩と肩がぶつかるんだ。壮吾と触れ合う体の左側半分が、どんどん熱を持ち始める。「ね、ねえ、壮吾」うわっ!!声が上ずったよ。バカ美羽。落ち着け、落ちつけよ。デートはこれからなんだ、こんなことで緊張してちゃダメだ。「こ、これからどこに行くの?」
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第58話

「まぁ、着いてからのお楽しみ」緊張している私とは対照的に、壮吾はとても落ち着いている。鼻歌なんて歌いだして、たまに私の太ももを叩いたりして遊んでいる。さすが、モテる男は違う。二人っきりで出かけるなんて、壮吾にとっては普通のことなのかな。彼女はいなかったとしても、普通に女友達とかいたんだよね……。「うしっ。降りるぞ」壮吾に言われ、行き場所を教えられていない私は、ただ黙って壮吾の後をついて行くだけ。私の手を引いて、時々頬笑みながら振り返る壮吾。ねえ、壮吾。私のこの鼓動、その手から伝わってる?その笑顔を向けられるだけで、痛いくらい心臓が高鳴るんだよ。バスに乗って約30分。「見てみろ」壮吾に言われて、バスの窓から外を見る。「うわっ!! 観覧車」私が目を丸めると、壮吾は得意そうに鼻をかいた。「今日のデート場所」「遊園地?」私が声を弾ませると、壮吾はうんと照れたように頷いた。「きゃは〜!! 遊園地だぁ」中に入り、色んな乗り物を見上げながら声をあげていると、「おまえ、ほんっとガキだよな。こんな小さな遊園地で喜ぶなんて」両手をポケットに突っこんでいる壮吾が呆れ気味に言った。「だって、遊園地なんて何年ぶりって感じなんだもーん。大きさなんて関係ないじゃん」どれから乗ろ〜 なんてはしゃいじゃう。だって、ホントに嬉しかったんだ。初めてのデートで遊園地なんて、幸せすぎ。「あれから乗ろうぜ」と壮吾が指さす先には、2回も回転するジェットコースター。「あ、あれに乗るの?」「ビビってんじゃねーよ。早く来い」そう言って、私を置いて歩いて行く。私、絶叫系は嫌いじゃない。っていうか、むしろ好きな方だけど、最初からあれ?しかも、2回も回転するやつ?体、もつのかな。
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第59話

案の定、壮吾もあたしもフラフラ。乗る前は得意げにあれに乗ろうなんて言っていた壮吾も、まだ1つ目だというのに顔が青ざめていた。ベンチに全体重を預ける壮吾がおかしくなって、思わず笑ってしまう。「何笑ってんだよ」「だって。最初はあんなにはりきってたのに、降りたらこれなんだもん。笑っちゃうよ。壮吾、実は絶叫系苦手なんでしょ?」私が口に手を当てながら吹き出すと「おまえな……。やっぱり、男心がわかってねー」と、膝に両肘をついて前かがみになった。「最初のデートは、遊園地だって決めてたんだ」壮吾の声が、とても優しくなる。「女って、何かこうゆーの好きじゃん?それに――…」壮吾はそこで言葉を区切ると「おまえが、喜ぶと思って……」小声で、ハニカミながら言った。だけど。「今、何て言ったの?」スピーカーから流れる音楽や、ジェットコースターなどの騒音で、残念ながらよく聞こえなかった。「おまえが喜ぶと思ってって言ったんだよ。つーか、1回で聞いとけ」「いたっ」私の頭を小突いた壮吾は、「ホント男心のわかんねーヤツだよなー」とぼやきながら、次の乗り物へと歩いて行った。熱い……。壮吾。小突かれた頭が熱いよ。私、すごく壮吾の事が好きだ。拗ねた横顔も、大きな背中も、照れ隠しの為に首の後ろをかく仕草も。それに、左肩が下がる、癖のある歩き方。壮吾の全部が好き。「早く来いよ」壮吾。私、本当に好きなの。初めてのデートでこんな素敵な遊園地に連れてきてくれて。壮吾は、こんな小さな遊園地ではしゃぎ過ぎなんて言ってたけど、壮吾と一緒なんだ。壮吾と2人でいられるなら、場所なんてどこでもいい。ジェットコースターも、本当は苦手だったんじゃないの?私が好きそうだからって、無理して乗ってくれたんでしょ?もし、私が絶叫系苦手だったらどうしてたのよ。無理してカッコつけちゃってさ。でも...そんな壮吾が、大好き。
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第60話

「そ、壮吾。ダメ。それだけは絶対にダメ」遊園地の乗り物を殆ど制覇した私達。クタクタになるどころか、乗り物を制覇していくごとに元気が出てきて、休憩しながらだけど、たくさん遊んだんだ。もう空は茜色に染まり始めている。最後はやっぱりこれだろう。 と、壮吾に連れられてやって来たのは。バスの中から見えた、大きな観覧車。さっきから10分くらい、壮吾の腕にしがみついている。「おまえ、絶叫系とかお化け屋敷は平気なのに、こんなのが怖いのか?」眉間にしわを寄せる壮吾は、いい加減乗るぞと、半分キレかけていた。「おっまえ、遊園地つったら最後はこれだろうが」「待って、本当にこれだけは無理なの。あり得ないの」強引に引っ張る壮吾に必死でしがみつく。だけど男の力に勝てるはずもなく、とうとう、観覧車の中に引きずり込まれてしまった。どんどん高くなっていく観覧車。目の前に座る壮吾の顔が、沈む夕日でオレンジ色に染まっている。普通は、ロマンチックな雰囲気になるんだろうけど……。「おまえ…… 震えすぎ」さっきから、体の震えが止まらない。「だ、だから、無理だって、あり得ないって、言ったじゃんか」私が身を縮めながら目を瞑っていると、カタンと小さな音がした。恐る恐る目を開けると、壮吾が立ち上がりこっちに来ようとしている。「だ、だめっ!!」大声を上げ、壮吾を止める。「何でだよ」「か、傾くでしょ」「傾かねーよ」「か、傾くの。 って、来ないでってばっ!!」私の言葉を無視して、壮吾は平気な顔して私の隣に座った。「傾いてねーじゃん」私がどれだけ怖さを耐えてるか知らないでしょ。「平気だって。何かありゃ、俺が守ってやるし」
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