All Chapters of 幸せ色の恋~想いよ、永遠に~: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話

結局、コウ先輩の買ってきたお酒やお菓子は冷蔵庫にしまうことになった。柊先輩が唸っているから当たり前なんだけど。パーティーパーティーと張り切っていたコウ先輩は、渋々お酒を我慢していた。柊先輩の部屋に集まったのはいいものの、当の本人がかなり苦しそうにしている。ここに来るまで仮病だと思っていたコウ先輩は、仕方ないというような感じでゆっくりお尻を持ち上げた。「今日はおとなしく帰るか」「そうしてくれ」柊先輩は、『早く帰れ』と、布団の中からシッシと手を振っていた。コウ先輩に続いて、レオくんと日和も立ち上がる。「柊先輩。 うるさくしてごめんなさい。私達帰るんで、ゆっくり寝て早く治して下さいね」日和が言うと、『うーん』と、唸り声に近い声で、柊先輩が答えた。レオくんは、何も言わず、ドアまで歩いて行く。と思ったら、くるりと振り返り、柊先輩を見下した。「壮吾」レオくんの声に、柊先輩が顔を上げる。……何?しばらく柊先輩を見下していたレオくん。しかし、その後の言葉を出すことなく、そのままドアから出て行った。眉をひそめてレオくんの背中を見送る柊先輩。日和と、コウ先輩も同じような表情だ。レオくん……?「何だあいつ」声を出したのは、コウ先輩だ。「言いたいことあんなら最後まで言えよ。中途半端なヤツだな」コウ先輩は肩をすくめて「んじゃな、壮吾。 ちゃんと寝とけよ」と、手を振った。「それじゃ、柊先輩。 明日、学校で待ってますね」私も2人に続くように、小さく頭を下げ柊先輩のベッドから離れた。と、またしても掴まれた手首。これで2度目なのに、やっぱり私の心臓は大きく脈打った。「送れなくてごめん」先輩のかすれた声。「気をつけて帰れよ」
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第42話

「心配しなくても、俺が責任もって送ってくよ」コウ先輩がそう言うと、私の手首をつかむ柊先輩の手に少し力が入った。「こいつに何かされたら、ソッコー連絡しろよ。ボコボコにしてやる」ドクンっ!!今までにないくらい、心臓が高鳴った。顔の中心に血液が集まり、徐々に頬の温度が上昇していく。「そんなに信用ねーの? 俺」「おまえだから信用ならねー」先輩たちの言い合いなんて、私の耳には入ってこない。さっきから自分の鼓動の音だけが鳴り響いて、呼吸が苦しくなってきた。体がフワフワと浮いているような感覚で。「つーか、美羽」名前を呼ばれて、とうとう、私の頭から白い煙が出てしまった。「これからは、“先輩”っつーのはやめろよ」ボッと火がつく。『やべー。日和、消火消火』と、コウ先輩の笑い声が遠くに聞こえる。「壮吾でいいから」それからの私は、どうやって家まで帰ったのか覚えていない。コウ先輩に家まで送ってもらったのは確かなんだけど。帰り道の会話なんて、全く記憶に残っていないんだ。『壮吾でいいから』ただ、この言葉が私の頭をグルグル回っていた。壮吾。壮吾。いつもの通学路を歩きながら、心の中で連呼する。“柊先輩”から、いきなり“壮吾”に呼び方を変えるなんて、そう簡単にはできないと思う。だけど、嬉しかった。柊先輩… ううん。壮吾と付き合うことになったなんて、本当は夢だったんじゃないかって思っていたから。『壮吾でいい』昨日の、壮吾の声がまだ耳に残ってる。風邪で少しかすれていた、セクシーな声。不謹慎かもしれないけれど、心臓が壊れてしまうほど、その声に鼓動が高鳴った。私は、本当に壮吾の事が好きなんだな。そう思うと、片時も離れたくないと、また欲が深くなった。キュ――ッ!!後方で聞こえた、自転車のブレーキの音。振り返った瞬間朝日が眩しくて、私は顎を引いて手を前にかざした。
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第43話

「よお」自転車にまたがっていたのは、壮吾だった。朝日に細めていた目を、今度はぐっと見開く。「おまえさ……。もっと気持ちのいい反応はできないのか。人を化け物みたいに見やがって」「か、風邪は? もう平気なんですか?」「ああー。 そういえば俺、風邪ひいてたんだっけ?覚えてねー」そう言った壮吾は、私の頬をつねってきた。「いたっ!!」「んな、大袈裟な」本当は、壮吾につねられた頬なんて全く痛くなかった。だけど、忙しく脈打つ鼓動を悟られたくなくて、わざと大きなリアクションをしたんだ。苦笑する壮吾が眩しい。声をかけられただけで調子が狂うようだったら、これから先、どんなに心臓があっても足りない気がする。「乗れよ」「え?」「遅刻する」壮吾は不思議。見た目はこんなに悪ぶっているのに、遅刻を気にするなんて。「ちゃんとつかまれよ」自転車の後ろに横向きに座った私を、壮吾が振り返る。やっぱり壮吾はキラキラと光っていて、眩しい笑みを浮かべていた。眩しすぎる。「違う」「へっ?」眉間にしわを寄せて壮吾を見上げる。すると、壮吾の腰に遠慮がちに置いていた私の腕をグイっと引っ張って、「落っこちたくなかったら、ここ握っとけ」そう言って、自分のウエストにしっかり固定させた。ドクンドクンドクン――…。こんなに密着したら、この鼓動がバレてしまう。こんなに緊張しているなんて、絶対にまたからかわれる。「行くぞ」「う、うわっ!!」壮吾が勢いよく自転車をこぐと、それだけで自転車から落ちそうになった。わーわー騒ぐ私と、それを面白がって笑う壮吾。通学途中の生徒が次々と私達を振り返り、目を丸め、呆然としていた。
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第44話

「せ、先輩!!もっとゆっくり漕いで下さい!!」私がどんなに叫んでも、全く聞く耳を持たない。スピードを落とすどころか、立ち上がりどんどんスピードを上げて行く。「お、落ちるーーっ!!」私の大声が、通学する生徒の横を風とともに流れて行く。壮吾のウエストにぴったりくっついて、固く目を閉じた。1つもボタンをしめていない壮吾のブレザーが風になびき、何度か私の顔に当たる。恐る恐るだけど目を開け、自転車を一生懸命漕ぐ壮吾を見上げた。強い風に壮吾の金髪が大きく揺れていて。横顔は、どこか誇らしげで、自信に満ち溢れていた。私の視線に気づいた壮吾が、ちらりと私に視線を落とす。笑ってくれる壮吾に、自然と笑みがこぼれた。壮吾と一緒に校内に入ると、通学路を走っていた時よりも周りの視線が私達に集中した。壮吾の自転車の後ろに女が乗っているんだ。そりゃ、注目するよね……。ちょっと、怖い。それなのに、この人ときたら「おまえ、めっちゃ見られてんぞ。人気者だな」と、やっぱりどこか抜けていて。ここまでくると、もう尊敬の域。私が眉間にしわを寄せながら見ている事にも気付かない壮吾は、自転車のカゴから鞄を取り、私に笑みを向けた。その時――。壮吾の鞄の横ポケットから、何かが落ちた。小さなスケジュール帳のようだ。スケジュール帳の角はすれていて、かなり使い込んでいるような感じ。「何か、落ちましたよ」地面にかがんでそれを取ろうとすると、横から、スイッと壮吾の腕が伸びてきた。
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第45話

私が拾おうとしたスケジュール帳を、壮吾が拾い上げる。私は、かがんだままの体勢で、壮吾を見上げた。……壮吾?壮吾は、スケジュール帳を拾い上げると、驚くほどの速さで鞄のポケットにそれをしまった。私はまだ、かがんだまま。体が動かせなかった。壮吾の動きが速かったからじゃない。壮吾の様子がおかしかったから。拾い上げる瞬間妙に慌てていて、私と目を合わせようとしなくて。何か…隠してる?それは、直感で感じたこと。私の中で、不安とか、戸惑いとか、そんな感情が生まれる前に、本当に一瞬の出来事だった。壮吾は、私に背を向けたまま。私がゆっくり背筋を伸ばしたとき、壮吾はようやくクルリと振り返った。さっき、自転車に乗っていた時と、同じ笑顔で。「行くぞ」そう言って差し出された手。私は、何度も細かく頷いて壮吾の手を取った。疑問は消えないままだったけど、私の見間違いかもしれない。だって、刹那の出来事だ。「美羽」名前を呼ばれて、壮吾を見上げる。手帳について、何か言われるのかな……。そう思ったけど、違った。「さっき、“先輩”つっただろ」あ……。「昨日言ったよな。名前で呼べ。 敬語も禁止」 ポカンとするあたしに「おまえ、俺の女だろ」さらりとそう言った。壮吾は、私の手を引いて歩いて行く。『俺の女だろ』きっと、私のように単純な女はいない。だって、その一言で、さっきの疑問なんてどうでもよくなったんだから。壮吾の手はすごく大きくて、とても温かった。
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第46話

「如月さんっ!!」教室に入った瞬間、クラスの女子全員に囲まれた。あまりの多さに、体がよろける。「お、おはよ」苦笑いを向けると、それぞれわかりやすい表情を浮かべて私を見ていた。泣いている人、眉間にしわを寄せ私を睨んでいる人、憧れの眼差しで大きく瞬きしている人。内容は、何となく想像がつく。「柊先輩と付き合ってるって本当!?」……やっぱり。私は、ものすごい形相で睨んでいる人達に一発殴られるんじゃないかと、手に持っていた鞄を顔まで上げて、身を守りながら『うん』と小さく頷いた。その瞬間。『ぎゃぁ〜〜』やら『カリスマ〜』やら『あたしの人生終わった〜』なんて、叫び出した彼女達。私はさらに身を縮め、鞄で顔を隠した。「邪魔なんだけど」教室の入り口を塞いでいた私の背後で、突然ぶっきら棒な声がした。振り向くと、私の目の前には白いシャツが。さらに上を見上げると、その白いシャツの正体はレオくんだった。「ご、ごめん」私が道をあけると、他の女子も私に続いてぞろぞろと避けていった。レオくんの為に開けられた狭い道を、無表情で悠々と歩いて行く。レオくんの背中を見送っていると、突然くるりと私を振り返った。私は、ただ目を丸くするばかり。「あんたさ、あんま目立つことしないほうがいいよ」それだけ言って、レオくんは自分の席に向かい、登校早々机に突っ伏していた。それは、初めての忠告だった。いつも、何に関しても無関心なレオくんからの忠告はやけにリアルで、この後何かが起こる、と、嫌な予感がしてならなかった。
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第47話

「いい? 美羽。練習通りにやれば大丈夫だからね。緊張しないで」体育館に向かう途中で、日和が自分に言い聞かすように胸の前で拳を握っていた。「緊張してるのは日和のほうでしょ?」悪戯っぽく言うと、日和は真っ赤な顔して私を振り返った。「なっ! この私がクラスマッチごときで緊張するわけないでしょ?」そう言いながら、声が上ずっている。今日は、1年生のクラスマッチ本番。クラスによっては、まとまりが出るようにと手作りのTシャツを着ていたりするけど、私達は学校指定のジャージのまま。男子が青で、女子が赤。高校生になって、初めての行事。みんな気合いが入っているようだった。女子バレーの第一試合は9時30分から。そのあと、男子ソフトの試合がある。レオくん……。大丈夫かな。「気合い入れて行くよ〜!!」コートに入る前に、女子バレーのメンバーで円陣を組む。「ッシャー!!」大きく声をあげると、他のクラスメイトが声援を送ってくれる。男子も自分たちの試合開始まで、コートの周りに集まって私達を応援してくれていた。だけど、その中にはやっぱりレオくんの姿はない。コートに入ってから目だけでレオくんを探してみたけど、いる気配はなかった。どこにいるんだろう……。「美羽ちゃん頑張れっ!!」突然体育館に響いた聞き覚えのある声。その声に、少し緊張がほぐれたんだけど。なぜ、ここに……?今日は、1年生のクラスマッチですが……。コウ先輩。「お兄ちゃん!! 授業はどうしたのよ!?」日和の反応は尋常じゃないほど速かった。コウ先輩は、日和のかな切り声に耳をふさぎながら眉をしかめる。喧嘩しっぱなしでお互い毛嫌いしている感じだけど、なんかすごく楽しそうだ。
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第48話

「美羽ちゃんが活躍するのに、授業なんて受けてられっかよ。なあ、壮吾」ドクン――。どうして私は、“壮吾”と名前を聞いただけでこんなに飛び跳ねてしまうんだろう。私の彼氏だ。いい加減、それに慣れなきゃ――…。「転んでケガすんじゃねーぞ」悪戯に笑う壮吾。「そんなダサいことしませんよーだ」こんな可愛げのないことしか言えないけど、私の心は、幸せでいっぱい。ピーっという合図で試合が始まった。私達のクラスからのサーブ。中学時代にバレー部に所属していた子のサーブだ。私の後ろからバシっとあり得ない音が響き、味方のサーブだというのに、物凄い音に、思わず肩が跳ねた。相手チームじゃなくてよかったと、胸をなでおろす。もちろんこんな弾丸サーブを相手チームが取れるわけもなく、私達のチームに点が入る。この子がいなかったら、どうなっていたんだろうと、試合中にも関わらず、そんな事を思った。だけど、相手チームも黙っていなかった。相手チームにも、もちろんバレーが得意な人はいるわけで。弾丸サーブをものともせず返してきた人がいた。そのアタックが、私の足元を直撃。体育館の床から、白い煙が出ている。床がへこんで見えるのは、あたしだけ?目が点になって、手も足もでない。おまけに、足がぶるぶる震えてくる。「美羽っ!!ボーっとしてちゃダメだよ。ほらっ!! また次が来るよっ」そんな事言われても……。反応する前に、ボールが床に叩きつけられるんだよ。私にどうしろと?前を向くと、さっき私の足元にボールを叩きつけてきた長身の子と目が合った。ニヤリと笑われて。嫌な予感。「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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第49話

「ドンマイ。 美羽」私の体から、魂が抜けて行く。あの子、完全に私をターゲットにしやがった。私が一番運動音痴だって、あの一瞬で読み取ったんだろうね。さすが、スポーツ選手。その洞察力に乾杯(完敗)。「みんな、ごめんね……」コートを出て、私達の為に応援に来てくれてたクラスメイトに頭を下げる。心優しい皆は、『あの子には敵わないって』とか『よく頑張ったよ』なんて温かい言葉をかけてくれたけれど。一回戦敗退って……。高校生初めての行事が……。「はい。 お疲れさん」肩を落とす私の視界に、紙パックのオレンジジュースが。声の主を見上げ、口元だけでほほ笑む。「ありがとうございます」お礼を言って、壮吾からオレンジジュースを取ろうとした。それなのに。壮吾はなぜか、それをひょいと上に持ち上げて、私をかわした。意味がわからず、眉をひそめる。「俺、敬語禁止って言わなかったっけ?」横目で睨まれる。しまった……。ついつい敬語に。「慣れるまで、お預け」そう言って、オレンジジュースにストローをさしチューチューと飲んでいく。「それ、私の為に買ってきてくれたんでしょ?」「自惚れんな。 ちげーよ」勝ち誇ったように笑う壮吾。それなのに、憎めなくて。壮吾は、ずるい。私は、壮吾を横目で睨んでぷくっと頬を膨らませた。壮吾と肩を並べて体育館を出て、教室に続く渡り廊下を渡る。すると、横からため息が聞こえてきて、また私の視界にさっきのオレンジジュースが入ってきた。うん? と壮吾を見上げる。「ガキじゃねーんだから、すねんなよ」そう言って、さらにオレンジジュースを私に差し出してくる。「やるから、怒んなって」オレンジジュースを受け取ってもまだ頬を膨らませたままの私の頭に、壮吾の大きな手が伸びてきた。ポンポンと優しく撫でられ、まるでお父さんにあやされてる子供みたいになる。「ガキだな」笑われているのに、心はすごく温かくて。壮吾のその笑顔を、独り占めしたくなった。
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第50話

「つーか」ため息をついた壮吾が、眉間にしわを寄せた。「レオのヤツ。 まーたどっかで寝てんのか」頭の後ろで両手を組んで、呆れたように言う。その一言で、私はハッとした。「そうだっ!!この次、男子ソフトの試合なの」「マジかよ。まぁ、あいつの事だから、絶対に出ないだろうな。やりたくもないソフトなんかさ」そう言った後に、ほほ笑む壮吾。だけど、それは少し哀しげなほほ笑み。レオくんの事になると、いつもそんな表情をするよね。その顔を見る度に、私の心は痛くなるんだ。私に出来ることをずっと探しているんだけど、なかなかピンとくるものがない。どうしたら……。まずは、少しでもいいから、皆とコミュニケーションを取ってもらいたい。クラスの輪に入れるように。そしたら、心を開いて、笑ってくれるんじゃないかな。「壮吾。 私行ってくる」「行くって、どこにだよ」「レオくんのとこ」「行ってどうすんの?」「ちょっと話してくるの。本当は試合に出てほしいんだけど、いきなり皆と協力してっていうのは難しそうだから。だから、とりあえず話して、少しでも心を開いてもらおうと思って」私が言うと、また壮吾の手が頭に伸びてきた。そして、私の大好きな笑顔になる。「頼もしいな、おまえ」その言葉に、私も笑みを返す。「この前も言ったけどさ。あいつの事、頼むな」うん。と大きく頷く。壮吾の大きな手に撫でられた頭が、部分的に熱くなる。全細胞が震えあがって、私の中は、もう壮吾一色。照れ隠しの為に、壮吾からもらったオレンジジュースを口に含んだ。熱を持った体の中を、冷たいオレンジジュースが流れて行く。壮吾とこのまま一緒にいたかったけれど、それをぐっと我慢して手を振った。壮吾が一緒に来てくれると言ったけど、壮吾がいたら、ダメなんだ。レオくんに冷たくされたときに、どうしても甘えてしまうから。私1人じゃ、レオくんは相手にしてくれないかもしれないけれど。レオくんの支えになると決めたのは自分だ。相手にされなくてもいい。その覚悟で行く。少しずつ。本当に少しずつでいいから、レオくんと、普通に話せるようになりたい。
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