私は今日、ファッション界のカリスマ大河内セイと結婚する。私とセイ、彼の弟のカイ、私の娘の幸子だけが列席する挙式。幸子はセイの子ではない。悪魔のような桃山夫婦に監禁され孕んだ子。あの地獄のような日々を思い出すだけで、胸が締め付けられる。湖畔に佇むガラス張りのチャペル。湖に太陽の光が反射してバージンロードの先にいるセイを照らしていた。あまりの美しい光景にここが天国なのではないかと錯覚しそうになる。幸子がバージンロードを私と腕を組んで一緒に歩いてくれる。たった四歳の小さな手は少し湿っていた。「ママ、おめでと」舌足らずに呟く彼女に思わず笑顔が溢れる。娘とバージンロードを歩く選択は私がしたものだ。幸子は間違いなく私の心を支え続けてくれた恩人で、両親を知らない私にとって唯一の家族だった。そして、今日もう一人私の家族が増える。パイプオルガンの重厚な音と共に一歩一歩セイに近づいて行く。大好きな娘と愛する人の元へたどり着いた瞬間を私は一生忘れないだろう。神父の低い落ち着いた声がしても、私は心臓の鼓動が早くなるのを抑えられなかった。大河内セイは私が初めて恋をした人で、この瞬間も私は彼に恋をし続けている。「大河内セイ。そなたは、冴島寧々子を妻とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分つまで愛を誓い、妻を想い添うことを、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」 「はい、誓います」セイが穏やかな声で、私との永遠の愛を誓ってくれる。私を見つめる色素の薄いヘーゼル色の瞳が優しい光を放っている。「冴島寧々子、そなたは、大河内セイを夫とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分つまで愛を誓い、夫を想い添うことを、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」「はい、誓います」幸せな気持ちで胸がいっぱいになりながら、私は嘘偽りのない彼に捧げる永遠の愛を誓った。淡いターコイズブルーのベルベットにキラリと光る結婚指輪が2つのせられていた。グローブを外し彼が私の左手の薬指に指輪を嵌めてくれる。私は緊張しながら、彼の左手の薬指に指輪を嵌めた。彼と夫婦になれた喜びで涙が溢れそうになるのを必死に堪える。結婚の誓約書に震える手でサインをした。愛する彼の名前に自
Last Updated : 2025-12-25 Read more