そもそも自信なんてものは、持てる人が持てばいい。私にとってはずっと、自分とは関係のないものだった。手を伸ばしても届かない、遠くの棚に置かれた飾り物のようなもの。誰かが持っていればそれでよくて、私が持つ必要はないもの。「ふーん。ま、どうでもいいですけど、そんなにおどおどしてたら舐められちゃいますよ?」私は瞬きをひとつした。まるで、自分の姿を鏡で突きつけられたように感じられた。「舐められ…」その言葉を繰り返そうとした瞬間、喉の奥がきゅっと縮まった。誰かに見下されることを、恐れたことはなかった。ただ、どうすれば波風を立てずにいられるか、そればかりを考えてきた。あの家では、いつもそうだった。「舐められますよ。反論しなさそうだし、怒らなさそうだし。そもそも、自分を守る気がなさすぎるというか…」 怒りたいと思ったことがなかったわけではない。悔しいと感じたことも、悲しいと感じたことも、何度もあった。けれど、その感情を外に出すという選択肢が、私の中には最初から存在していなかった。怒りを外に出すよりも、飲み込む方を選んだ。飲み込んで、飲み込んで、飲み込んで。気づけば、怒りという感情そのものが、どこにあるのか分からなくなっていた。「反論すると、余計にこじれるので」それは、私が長い時間をかけて身につけた生き方だった。傷が浅く済む。反論したところで、相手が変わるわけではないから。むしろ、反論した自分が悪く見えるだけ。「藤原家のお嬢様でしょ?」その言葉が落ちた瞬間、視線がゆるく揺れた。その肩書きは、私にとって誇りでも自慢でもなく、ただの重さだった。藤原家の人間だから。それだけの理由で、堂々と振る舞えるはずだと、周囲は思うのだろう。けれど、私は一度だってそん
Última actualización : 2026-02-01 Leer más