紫音はどうにかして二人を繋げようと、必死にきっかけを作る。蘭は促されるまま慌てて立ち上がり、グラスを手に取った。蘭は意を決し、一気に酒を流し込む。「塚山さん、この度は本当にお世話になりました。特許の知識が乏しい私を、皆さんが嫌な顔一つせず導いてくださって……心から感謝しています」だが、蘭の頭の片隅には、打ち消せない思いがあった。彼が自分を助けてくれたのは、あくまで自分が『紫音の部下』だから。その事実が、胸をチリリと焼く。「そんなに畏まらなくていいよ。君は紫音の片腕なんだから。彼女が見込んだ相手に、優秀じゃない人間なんていないだろうしね」浩一は特に気負う様子もなく、さらりと言った。蘭は震える手で、もう一度グラスを煽った。感情が昂り、心臓の音がうるさい。ひどく狼狽しているのが自分でも分かった。好きな人の前で、平然を装うなんて到底無理だ。彼の何気ない一言が、鋭いトゲのように胸に突き刺さる。「蘭、あまり無理しないで。そんなに強くないでしょ?」紫音が心配そうに声をかけた。蘭が酒の力を借りて、必死に臆病な自分を奮い立たせようとしている。その意図は痛いほど伝わっていた。酒でも飲まなければ、想い人の正面に座り続けることすらできない。だが、こればかりは本人が乗り越えるしかない壁だ。紫音にできるのは、ただ静かに見守ることだけだった。「平気です。心配しないでください。これくらいなんてことありませんから。……ただ、どうしても、この一杯に感謝を込めたかったんです」一気に飲んだ酒が、胃の中でカッと熱を放つ。途端に蘭の顔はみるみるうちに朱に染まった。もともと彼女は酒など一滴も飲めない体質だった。アルコールに興味もなかったが、今日ばかりはどうしても、この胸の苦しさを誤魔化したかったのだ。「……すみません、お二人でお話ししていてください。少しお手洗いへ」アルコールが急に回ったせいか、全身がひどく重い。こみ上げてくる吐き気を必死に堪えながら、蘭はフラフラと立ち上がった。「蘭、私も一緒に行くわ。あんな飲み方、無茶すぎる」紫音が心配して席を立とうとする。「大丈夫です、紫音さん。一人で行けますから」蘭はそれを制した。今は誰の慰めも欲しくなかった。ただ一人になって、乱れた心に蓋をしたかったのだ。彼女の頑なな態度に、紫音は仕方なく腰を下
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