「紫音さん、どうかそんな顔しないでください。私、紫音さんには感謝しかないです。私のためにずっと心配してくださったこと、わかってますから」泣き出しそうな顔を隠すように、蘭は無理に口角を上げた。「恋愛って、本当にどうにもならないんですね。どんなに頑張ったって、結果が出るとは限らない。だから……誰のせいでもありません」紫音にこれ以上申し訳なく思わせまいとする、蘭なりの必死の思いやりだった。「……そうね。せっかく会社に戻ってきたんだし、今日からは仕事に打ち込みましょう。今、すごくやり甲斐のあるプロジェクトが動いてるの。これを蘭に任せようと思うわ。成功させれば、絶対あなたの大きなキャリアになるから」恋愛で力になれなかった分、せめて仕事で彼女を引っ張り上げたい。紫音はそう心に決めていた。「ありがとうございます、紫音さん……私、頑張ります!」蘭の目に、微かに光が宿った。「私に遠慮なんかしないで。最近の蘭の働きぶりなら、一人で立派に回せる実力は十分にあるわ」失恋の傷を癒す一番の特効薬は、忙しく働くことだ。目の前のタスクに没頭していれば、辛い記憶もいずれ薄れていくはずだと、紫音は力強く微笑んだ。「はい。それじゃあ、仕事に戻りますね」気丈に振る舞い、自席へ戻った蘭だったが、モニターに向かっても文字はまるで頭に入ってこなかった。心の中にぽっかりと大きな穴が空いたようで、何をどう手をつければいいのかわからない。仕事への集中力など到底保てるはずもなく、気がつけば浩一のことばかり考えていた。やれることは全てやった。持てる力を振り絞って、この恋に向き合ってきたつもりだ。これで駄目ならきっぱり諦めようと、自分に何度も言い聞かせてきた「最後の挑戦」だった。けれど、いざ本当にその結末を突きつけられてみると、そう簡単に割り切れるものではない。あれだけ尽くしてきたのに、報われなかったという事実が、どうしても悔しくてたまらなかった。気もそぞろなまま、どうにか定時を迎えた。今日ばかりは残業する気にもなれず、蘭は逃げるようにオフィスを飛び出した。全く仕事にならず、一日中上の空だった自分を責めながら、重い足取りで家路につく。いつになれば、この苦しさから解放されるのだろうか。外の冷たい空気に触れた途端、我慢していた涙がどっと溢れ出した。まだ付き
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