「父さんが長年、おばあちゃんを放っておいたのは、絶対に間違っていたと僕も思っています。でも、これからの時間で僕たちに埋め合わせをさせてくれませんか。もしよければ、ここに残ってお手伝いをさせてください。でも、僕が目障りならすぐに帰ります。おばあちゃんが心穏やかでいてくれることが、僕にとって一番大切ですから」颯馬はひたすらに聞き分けの良い孫だった。徹頭徹尾、祖母の体を第一に気遣うその振る舞いは、律に負けず劣らずの優しさに満ちているように見える。そんな真っ直ぐな言葉に偽りない誠実さを感じ取ったのか、志津は涙を拭い、目の前の青年をじっと見つめ返した。「……親たちのいざこざに、お前を巻き込むつもりはないよ。今日はわざわざ顔を見せに来てくれてありがとう。でも、少し疲れたし、一人で考えたいことがある。もう休ませておくれ」ようやく口を開いた志津だったが、その返しは思いのほか淡々としたものだった。心の奥底では、血を分けたこの孫とじっくり言葉を交わしてみたいという思いもある。しかし、あまりにも突然の出来事に心が追いつかず、目の前の青年とどう向き合えばいいのか戸惑いが勝っていたのだ。「颯馬、おばあちゃんがお休みになるそうだ。おれたちは外に出よう」横から宏がすかさず言葉を添えた。これまでの厚かましさが嘘のように、今の宏はまるで別人のような物分かりの良さを装っていた。病室を出る際、律と紫音も余計な口は挟まなかった。志津が何を思い悩み、休息を求めているか、二人には痛いほどわかっていたからだ。宏たちと言葉を交わす気など毛頭ない。二人がそのまま背を向けて立ち去ろうとした瞬間、颯馬が呼び止めてきた。「律兄さん、紫音さん。父さんからお二人のことは聞いています。この数年間、兄さんがグループを取り仕切ってきたことも。兄さんの手腕には本当に頭が下がります。あれほどの企業を完璧にまとめ上げるなんて、誰にでもできることじゃありませんから」颯馬の態度は父親とは似ても似つかないほど丁重で、二人への敬意に満ちていた。「兄さんは僕の目標なんです。もしよかったら、これから色々と教えてもらえませんか。もっとお話ししてみたいんです」「今は時間がない。……機会があればな」律は淡々とそれだけを言い捨てると、紫音の手を強く引き、足早にその場を後にした。歩調を合わせ
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