その前向きな姿に、紫音は友人としても上司としても心底ホッとした。とはいえ、交際というのはここからが本番だ。紫音の友人である浩一と、一般の社員である蘭とでは、元々の生活圏も価値観もまるで違う。これから時間をかけて二人のペースですり合わせていく必要があるため、紫音としてはどうしても親心のような心配が尽きないのだが――今のキラキラと輝く蘭を見ていると、それも杞憂に終わりそうだと感じられた。社員たちの活気ある働きぶりと、蘭の幸せな報告。不在の間の懸念がすべて払拭され、紫音は満足してオフィスを後にした。まだ本調子ではないため、これ以上の長居は無用だ。エレベーターホールに向かったところで、タイミングよく着信音が鳴った。画面を見ると、母である琴音からだ。怪我の身で出歩いている娘がなかなか戻ってこないため、気が気ではないのだろう。「紫音?会社に顔を出したらすぐ戻るって言ってたのに、どうしてまだ帰ってこないの。もうお父さんと一緒に、あなたの会社のロビーまで来ちゃってるのよ」電話口から聞こえてきた言葉に、紫音は思わず苦笑した。お母さん、さすがに過保護すぎじゃない……?年々母親の心配性がエスカレートしている気がするが、それが娘を想っての愛情ゆえだと痛いほど分かっているからこそ、邪険にはできない。「分かったわよ、お母さん。今ちょうど一階に降りるところ。もう、家で待っててって言ったのに、わざわざお父さんまで 引っ張り出して来なくていいのに。あなたの娘はもうピンピンしてるんだから、そんなに腫れ物みたいに扱わなくても大丈夫よ」エレベーターの降下ボタンを押し、紫音は電話越しに明るく笑いかけた。「それに私、そんなにヤワじゃないわ。ずっとベッドで大人しくしてたんだもの、息が詰まりそうだったのよ。こうして外の空気を吸えて、すごくリフレッシュできたわ。会社も私が思っていた以上に順調だったし……おかげで、今日はすごく気分がいいの」自分に向けられる重すぎるほどの愛情に、紫音は苦笑するほかなかった。両親がここまで過保護になるのはすべて自分のためだと分かっているが、腫れ物でも扱うかのように心配されてしまうと、さすがにお手上げ状態だ。だが、親の立場からすれば無理もないことだった。娘が足の怪我を押して長時間出歩いているというのに、まだ病院で最
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