「……ありがとうございます、先生。少しでも変化があれば、すぐに知らせます。それから……先生、どんな治療でも、どれほど僅かな可能性でも構いません。彼女を救う方法があるなら、何でも教えてください。試せるものはすべて試したいんです……!」すがるような州の言葉に、医師は痛ましげに目を伏せた。医師の言葉の裏にある『これ以上の積極的な治療は無意味だ』という残酷な事実を、州は痛いほど理解していた。とっくに覚悟を決め、運命を受け入れるべき時期は過ぎている。それでも、彼の心は激しく現実を拒絶していた。最愛の女性がこの世から消えてしまうという事実を、どうしても認めることができなかったのだ。「……わかりました。ですが、くれぐれも無理はなさらないでください」医師は短く頷くと、静かに告げた。「熱はすでに下がっていますので、まもなく意識も戻るでしょう。引き続き体温の推移には十分注意してあげてください。ひとまず、彼女をVIP用の特別個室へ移しましょう。何かあれば、すぐに私を呼んでください」そう言い残し、医師は足早にその場を立ち去った。手術室の前に残された州と、紫音、そして律。重苦しい沈黙の中、三人は顔を見合わせることもできず、ただ途方もない無力感に苛まれていた。どんなに絶大な権力を持っていようと、どれほど莫大な富を積もうと、人間の命を引き留めることなど誰にもできない。懸命に手を伸ばしても、指の隙間から命がこぼれ落ちていくのをただ見つめることしかできないのだ。……志津様の時と、同じね。紫音は、隣に立つ律の横顔をそっと見上げながら、密かに胸を痛めた。律を誰よりも愛し、拝島家の実権を彼に託して亡くなった絶対的権力者――拝島志津。彼女が病に倒れ、この世を去った時もそうだった。あんなにも強く偉大だった彼女が、最期の瞬間にどれほどの未練や悲しみを抱えていたのかは、誰にも分からない。けれどあの時、律をはじめとする残された者たちは、彼女のためにできるありとあらゆる手を尽くした。限界まで運命に抗い、やれることをすべてやり切ったからこそ、彼らは志津の死を「後悔」ではなく、静かな「受容」とともに見送ることができたのだ。兄さんもきっと、無意識のうちに分かっているんだわ。いつか必ず訪れる別れの時に、自分の中に一つでも後悔を残さないため
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