それは、あまりにも残酷で、決定的な絶望の宣告だった。医師の言葉は、つまり「もう覚悟を決めてください」という宣告に他ならない。州は雷に打たれたように立ち尽くし、その場に崩れ落ちそうになるのを必死で堪えていた。「先生……っ、頼む!どんな手を使ってでも、いくら金がかかってもいい!あいつを助けてくれ……っ!あいつは、あんなに一人で苦しんできたんだ、こんな理不尽な終わり方なんて絶対に間違ってる……!」州は医者の白衣にすがりつき、なりふり構わず懇願した。その顔は涙と絶望でぐしゃぐしゃだった。「……お気持ちは痛いほど分かります。我々も、万に一つの可能性でもあれば決して諦めません」医師は沈痛な面持ちで、州の手をゆっくりと離した。「ですが……小坂さんのご病気については、すでにご自身でもお調べになっているはずです。この病の末期がどういうものか……我々医療従事者にとっても、いかに残酷で無力な壁であるかということを」医師の言葉に、州は弾かれたように動きを止めた。そう、州だって有加里の病気について、狂ったように医学書を読み漁り、海外の論文まで調べ尽くしていたのだ。この病気に、奇跡は起きない。ただ、絶望的な事実から目を背けたかっただけなのだ。「お兄ちゃん、もうやめて……!」紫音はたまらず州の腕を掴み、医師から引き離した。「先生たちは、最善を尽くしてくださったわ。手を抜いたわけでも、見捨てたわけでもないのよ。お兄ちゃんだって、頭では分かっているんでしょう?」紫音は泣き崩れそうな兄を必死に支えながら、静かに頭を下げた。「先生、ありがとうございます。兄は気が動転していて……ご迷惑をおかけしました」「……いえ。ご家族が現実を受け入れられないのは、当然のことです。ご本人にとっては、ここからが一番苦しい時間になるかもしれません。どうか、側にいてあげてください」医師は深く一礼すると、静かにその場を立ち去っていった。その後ろ姿には、命を救えなかった医療者としての重い無念さが滲んでいた。静まり返った廊下。残された紫音と州の頭上には、ただ重く、冷たい沈黙だけがのしかかっていた。機械によって無理やり生かされている有加里。それはもはや、彼女にとっても、見守る州にとっても、果てしない苦痛と拷問でしかないのではないか。
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