彼女なりに、この恋にはすべてを懸けていた。二人の関係がこのまま順調に深まっていけば、いつかは彼と結婚して、平凡でも温かい家庭を築けるかもしれないと、甘い夢を見ていたこともあった。だが、浩一の母親からの冷酷な拒絶は、そのささやかな夢を容赦なく打ち砕いた。残酷な「家格の差」という現実を突きつけられ、彼女の自信は根元からポッキリとへし折られてしまったのだ。「分かってる。君が今は混乱していることも、俺を想うからこそ重圧を感じてるってことも……全部、分かってる」浩一は、弱々しく引き抜こうとする蘭の手を、絶対に逃がさないとばかりにさらに強く握り締めた。「でも、俺を信じてくれ。母さんのことは絶対に俺が説得するから。君を受け入れてもらえるように、俺が必ず何とかするから!」「浩一さん……」「付き合い始めてから今まで、俺の心には君しかいない……!全部俺の見通しが甘かったせいだ、俺の責任だ。だからお願いだ、俺を見捨てないでくれ。二人で一緒にいれば、誰が相手だろうと絶対に説得できる。だから、そんな風に一人で重荷を背負い込まないでくれ……!」浩一自身も、想定外の事態にひどく狼狽し、焦燥しきっていた。どんな言葉をかければ彼女の心を繋ぎ止められるのか。どうすれば彼女の不安を拭い去れるのか。気の利いた言葉など一つも見つからず、ただ不器用に、なりふり構わず自分の愛と覚悟を訴え続けるしかない。彼にとって、この理不尽なトラブルのせいで最愛の女性を失うことなど、絶対に受け入れられない結末だった。「二人とも、一旦落ち着きなさい」すがりつく浩一と、頑なに目を逸らす蘭。膠着状態に陥った二人を見かねて、紫音は静かに口を開いた。「いいこと?あなたたち二人の間に、愛情が冷めるような致命的な問題が起きたわけじゃないでしょう。なら、必要以上に悲観して問題をこじらせる必要はないわ。明日、私が貴子おば様のところへ行って直接話をしてくるから」紫音の言葉に、浩一と蘭は弾かれたように顔を上げた。「私は昔からおば様に可愛がってもらっていたし、気心の知れた仲よ。だからこそ、おば様が心の底で何を懸念しているのか、どうすれば彼女を納得させられるのか、腹を割って聞き出せるはずだわ。だから蘭、今はそんなに自分を追い詰めないで。あなたたち二人が本気で愛し合っているな
Read more