浩一の言葉には、退路を断った男特有の鋭利な覚悟が満ちていた。もう誰にも、自分と蘭の絆を引き裂かせるつもりはない。その揺るぎない意志を感じ取り、紫音も一つ深く頷いた。だが、だからこそ友人として、少しだけ冷静な視点からアドバイスをしておく必要があった。「あなたのその覚悟は十分に伝わったわ。でもね、浩一さん。……お父様、征爾(せいじ)おじ様のことは、もう少し慎重に考えた方がいいかもしれない」紫音は腕を組み、少しだけ声をトーンダウンさせた。「征爾おじ様は、貴子おば様とは違って本来はとても筋を通す理知的な方よ。一族のビジネスを守るために厳格に振る舞っているだけで、決して話が通じない相手ではないはず。頭ごなしに反発するのではなく、まずは一度、冷静に話し合う場を設けるべきよ」紫音は、愛する蘭を守るために家族と完全に縁を切ろうとしている浩一の焦りを理解しつつも、それが最善の策ではないと考えていた。「親が子供の結婚に口を出すのが間違っている、というのは正論よ。でもね、あなたたちが本当に結ばれた後のことを想像してみて。いつか二人が結婚したとして、蘭に一生、あなたの家族から逃げ隠れするような窮屈な思いをさせるつもり?そんなの、彼女にとっても幸せな形とは言えないわ」愛し合えればそれでいい、というのは若さゆえの綺麗事だ。結婚となれば、どうしても家と家との繋がりがつきまとう。特に浩一のような名家であればなおさらだ。母親の貴子はともかく、せめて当主である父親の征爾にだけでも二人の関係を認めさせることができれば、蘭の背負う重圧は劇的に軽くなるはずだ。紫音の現実的な指摘に、浩一は眉間を揉みほぐしながら深く息を吐き出した。「お前の言いたいことは痛いほどわかる。蘭に、一生俺の親族から後ろ指を指されるような惨めな思いはさせたくない……でも、あの父さんだぞ?『愛しているから結婚させてくれ』なんて感情論、まともに取り合ってくれるわけがない。温厚に話し合って解決できるなら、俺だってこんなにこじらせてないさ」浩一の顔に、濃い疲労の色が滲む。「だからこそ、俺が行動で示すしかないんだ。言葉で説得できないなら、力でねじ伏せる。例え父さんたちが相手だろうと、俺の人生の舵取りは誰にも渡さないと、徹底的に思い知らせてやる必要がある」浩一の
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