「……好きにしろ」浩一はそれだけを吐き捨てると、今度こそ一切振り返ることなく、足早にサロンを立ち去った。「おい、待て!浩一!私の話はまだ終わっていないぞ!」背後から征爾の怒号が響き渡ったが、浩一の歩みは一度たりとも止まることはなかった。重厚な玄関のドアがバタンと乱暴に閉められ、本邸には不気味な静寂が取り残された。「……あの馬鹿息子がッ!本当にどこまでも生意気になりおって……!」征爾は怒りに任せて、近くにあった高価な花瓶を床に叩きつけた。ガシャーンという甲高い破砕音が響き渡る。征爾の目には、浩一はいつまで経っても「自分の言いなりになるべき未熟な子ども」としてしか映っていなかった。まさかここまで親に牙を剥き、家を捨てる覚悟で反抗してくるとは想定していなかったのだ。どこで育て方を間違えた……あんな小娘の分際で、私の息子をここまで誑かすとは。もはや親子の関係など修復不可能に思える状況の中、征爾の胸には息子への怒りよりも、息子をそそのかした蘭に対する底知れぬ憎悪と、己の権力を見せつけてやらねばならないという傲慢な自尊心だけが黒く渦巻いていた。塚山家の本邸を飛び出した浩一は、夜風に吹かれながら自嘲気味に笑った。俺は……いったい何を期待していたんだろうな。胸の奥には、どうしようもない喪失感と悲しみが渦巻いていた。表面上は両親を拒絶し、憎まれ口を叩いていたが、彼の心の奥底には「親に愛されたい」「家族として歩み寄りたい」という、捨てきれない幼い願いがずっと眠っていたのだ。だからこそ、長年海外にいた両親が帰国すると知った時、浩一は心のどこかで密かに喜んですらいた。もしかしたら、今度こそ普通の親子のように笑い合えるのではないか――そんな淡い期待を抱いていたのだ。だが、現実はあまりにも残酷だった。彼らがわざわざ帰国した本当の理由は、息子を政略結婚の道具として利用するためだけ。両親にとって自分は、最初から最後まで、塚山家の事業を拡大するための「便利な駒」でしかなかったのだ。これまでの俺の努力も、思いも……全部無駄だったってことか。冷たい絶望に蝕まれ、浩一は足取り重く夜の街をさまよった。今すぐ蘭の待つマンションへ帰って、彼女の温もりにすがりたかった。しかし、これ以上彼女に負担をかけるわけにはいかない。こんな荒れ
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