彼女の頭の中では、「息子を権力の座に就かせること」こそが唯一の正解であり、自分の行動はすべて息子のための無償の愛だと、心底から信じ切っているのだから。これ以上、何を言っても無駄なのだろう。冷たく言い放たれた言葉を前に、紫音は深い無力感に苛まれていた。貴子の決意は、鋼のように固い。どんな言葉を尽くして説得しようと、はなから聞き入れる耳など持っていないのだ。結局のところ、これは塚山家の内部の問題に過ぎない。外野である自分がこれ以上口を挟めば、ただ事態を悪化させるだけかもしれない。当事者である浩一自身が家族と向き合い、解決するしかない問題なのだから。しかし、紫音はどうしても引き下がれなかった。浩一は大切な親友だ。親友が望まぬ政略結婚で人生を縛られようとしているのを、ただ黙って見過ごすことなどできない。「……おば様。おっしゃることは分かります。すべては浩一さんの将来を思ってのことだということも」紫音は震えそうになる声を必死に抑え、まっすぐに貴子の目を見つめ返した。「でも、母親なら……息子の本当の幸せを願うべきではないですか?浩一さんにとって、塚山グループの権力や家柄なんて、ちっとも重要じゃないんです。彼は自分の力だけで十分すぎるほど優秀な結果を出しています。欲しいものがあるなら、誰の力も借りずに自分で手に入れられる人です。どうして政略結婚なんて古い鎖で、彼を縛り付ける必要があるんですか」必死に言葉を紡ぐ。どうか、少しでも彼女の心に届いてほしいと願いながら。「それに、彼に蘭を諦めさせる必要なんてどこにもないはずです。二人が結ばれるまで、どれだけ苦労したか……ずっと傍で見てきた私には分かるんです。蘭と一緒にいる時の浩一さんは、本当に、心から幸せそうに笑うんですから」紫音は真摯に訴えかけた。だが、その切実な願いを遮るように、くすくすと上品な笑い声が響いた。貴子はまるで、聞き分けのない子どものお伽話でも聞いたかのように、可笑しそうに口元を隠した。「紫音ちゃんってば、本当に純粋なのね」その声音には、容赦のない嘲りが混じっていた。「あなたはあの子の親友を自称しているけれど、あの子の本当の深情けを少しも理解していないようね。そもそも、あの子とあの女が釣り合うはずなんてないのよ。それにね――」貴子は
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