しかし、これ以上落ち込んだ姿を見せて、兄を心配させるわけにはいかない。紫音は小さく深呼吸をして、無理やり顔を上げた。「……うん、そうだね。あんまり考えすぎないようにする」そして、わざと少しだけおどけたようなトーンを作って、兄に言葉を返した。「それにしても、お兄ちゃんも人のこと言えないじゃない。自分のことだって、まだまだ全然整理がついてないくせに。お兄ちゃんこそ、色んな悩みを抱えて毎日しんどい思いをしてるんでしょ?お互い様だよ」紫音の指摘に、州は少しだけ苦笑いを浮かべた。「……やっぱり、お前には敵わないな。正直、こんなことでいつまでも悩んでる俺って、男として情けないんじゃないかって、時々すごく嫌になるんだよ」「そんなことないよ!どうしてお兄ちゃんが自分を責めるの?」紫音は少し強い口調で否定した。「お兄ちゃんは何も悪くないよ。お兄ちゃんも……浩一さんも、結局は同じ。自分の意志とは関係なく、周りの力に振り回されているだけの被害者じゃない。大好きな人がいるのに、自分の家や親の力によって無理やり引き裂かれようとしている。それって、一番残酷で逃げ場のない苦しみだもの」一番愛情を注いでくれるはずの家族が、自分を最も縛り付ける枷になる。その抗いようのない絶対的な力の前では、どれだけ足掻いても絶望と無力感しか残らない。「お兄ちゃんがどれだけ苦しい思いをしてきたか、私には痛いほど分かるよ。でも、私はただ話を聞いてあげることしかできなくて……お兄ちゃんを、その苦しみから救い出してあげられないのが、すごくもどかしいの」紫音の悲痛な思いに、州は何も答えることができなかった。リビングには、重く、沈んだ沈黙が降り下りた。兄妹の抱える悩みは、それぞれ全く違うようでいて、根底にある「親の支配」という理不尽さにおいて共通していた。どうにもならない現実。逃げ場のないプレッシャー。二人とも、もはや自分たちの力ではどうすることもできない泥沼の真ん中で、ただ息を潜めて耐えることしかできないのだ。抗うすべを持たない無力さが、二人の心を深い悲しみと閉塞感で満たしていく。この息の詰まるような重圧を、彼らはただ黙って飲み込み、耐え続けるしかなかった。「……やめよう、この話は」州は耐えきれなくなったように、深いため息をついて
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