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26話

Author: 東雲桃矢
last update Last Updated: 2026-01-02 22:00:04

「成也さん、聞こえる?」

「あ、あぁ……」

 意識があることを確認するが、安堵するのはまだはやい。

「成也さん、体勢変えますね。1、2、3!」

 成也を横向きにし、カバンを枕にして呼吸しやすい体勢にする。

「お嬢様!」

「花蓮ちゃん、救急車呼んで」

「ほな、俺は店員に声かけてくるわ。あんたはなんもせんと、そこに座っとき」

 駆けつけた花蓮に指示を出すと、花蓮は救急車を、涼は店員を呼びに行った。ミアはふてくされた顔で、成也から離れた席に座っていた。

 明里はその間、成也に症状について質問した。

 救急車が来ると、救急隊員が担架を持って個室に来た。明里は彼らに医師免許証を見せて成也の症状を伝えると、一緒に救急車に乗る。

 ミアも救急車に乗ろうとしたが、救急隊員に呼び止められる。

「すいませんが、これ以上は乗車できません」

「なんで!? 私はあの人の妻なのに。あの女降ろしてよ!」

「ご主人の症状からして、外科医の神宮寺先生に同乗してもらったほうが、生存率はあがりますので」

 救急隊員は早口でそう言うと、ミアを置いて出発した。

「成也さん、大丈夫だから。私が必ず、あなたを救ってみせる」

「明里……」

 弱々しい声で名前を呼ばれ、はっとする。いくら緊急だったとはいえ、何故彼を下の名前で呼んでしまったのだろう。

 病院に着くと、早急に検査をした。痛み止めを打っても問題ないと分かると痛み止めを投与し、更に検査をする。結果、月ノ宮成也は、末期の胃がんだった。

「まさか、こんなことになるなんて……」

 レントゲンを見て、愕然とする。様々な感情が渦巻いて、自分でもわけが分からない。

 軽蔑していた成也を心配する気持ちがあったことへの驚きを、どう処理していいのか、自分でも分からない。何故自分が成也の病気に絶望しなくてはならないのか、理解に苦しむ。

「あの、先生。どうされましたか?」

「え?」

「何故、泣いてらっしゃるのですか?」

 レントゲン技師の遠慮がちな問いで、自分が泣いていたことに初めて気づいた。明里は急いで涙を拭い、笑ってみせる。

「きっと目にゴミが入ってたのね。検査に夢中で気づかなかったわ」

「はぁ、そうですか」

 技師は訝しげな顔をしながらも、仕事に戻っていく。

「切り替えないとね」

 自分の頬を軽く叩くと、明里はレントゲンを封筒に入れて、成也が待つ病室へ足を運んだ。

 成
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    「成也さん、聞こえる?」「あ、あぁ……」 意識があることを確認するが、安堵するのはまだはやい。「成也さん、体勢変えますね。1、2、3!」 成也を横向きにし、カバンを枕にして呼吸しやすい体勢にする。「お嬢様!」「花蓮ちゃん、救急車呼んで」「ほな、俺は店員に声かけてくるわ。あんたはなんもせんと、そこに座っとき」 駆けつけた花蓮に指示を出すと、花蓮は救急車を、涼は店員を呼びに行った。ミアはふてくされた顔で、成也から離れた席に座っていた。 明里はその間、成也に症状について質問した。 救急車が来ると、救急隊員が担架を持って個室に来た。明里は彼らに医師免許証を見せて成也の症状を伝えると、一緒に救急車に乗る。 ミアも救急車に乗ろうとしたが、救急隊員に呼び止められる。「すいませんが、これ以上は乗車できません」「なんで!? 私はあの人の妻なのに。あの女降ろしてよ!」「ご主人の症状からして、外科医の神宮寺先生に同乗してもらったほうが、生存率はあがりますので」 救急隊員は早口でそう言うと、ミアを置いて出発した。「成也さん、大丈夫だから。私が必ず、あなたを救ってみせる」「明里……」 弱々しい声で名前を呼ばれ、はっとする。いくら緊急だったとはいえ、何故彼を下の名前で呼んでしまったのだろう。 病院に着くと、早急に検査をした。痛み止めを打っても問題ないと分かると痛み止めを投与し、更に検査をする。結果、月ノ宮成也は、末期の胃がんだった。「まさか、こんなことになるなんて……」 レントゲンを見て、愕然とする。様々な感情が渦巻いて、自分でもわけが分からない。 軽蔑していた成也を心配する気持ちがあったことへの驚きを、どう処理していいのか、自分でも分からない。何故自分が成也の病気に絶望しなくてはならないのか、理解に苦しむ。「あの、先生。どうされましたか?」「え?」「何故、泣いてらっしゃるのですか?」 レントゲン技師の遠慮がちな問いで、自分が泣いていたことに初めて気づいた。明里は急いで涙を拭い、笑ってみせる。「きっと目にゴミが入ってたのね。検査に夢中で気づかなかったわ」「はぁ、そうですか」 技師は訝しげな顔をしながらも、仕事に戻っていく。「切り替えないとね」 自分の頬を軽く叩くと、明里はレントゲンを封筒に入れて、成也が待つ病室へ足を運んだ。 成

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