悪魔の心臓が、ついに砕け散った。緩慢な死ではない。まるで悪魔の体内に潜む何かが、強いられた終焉を断固として拒むかのように、心臓は内側から激しく破裂したのだ。刹那――完全なる静寂。悪魔の胸に巨剣を深々と突き立てたまま、立ち尽くすディリアン。噴出していた黒血が突如として逆流を始め、反転した渦のように悪魔の体内へと吸い込まれていく。「ディリアン――!」誰かの叫び声は、悪魔の胸の奥から鳴動し始めた異様な地鳴りに完全に掻き消された。砕けた心臓を中心に、亀裂のような光が全身へと走る。赤黒い皮膚が裂け、狂乱の闇光が脈打つ。魔法使いたちが維持していた血の封印が次々と砕け、強烈な反動で術者たちが宙へと弾き飛ばされた。「下がれッ――!」ラミアが喉を引き裂くように絶叫する。遅すぎた。爆発。炎ではない。雷撃でもない。存在そのものを根底から吹き飛ばす、空間の位相崩壊。ドゴォォォォン――!!!大地が爆ぜ、黒と白の吹雪が天を覆う。衝撃波が全方位を薙ぎ払い、兵士たちは岩や木々、へし折れた盾へと無残に叩きつけられた。骨の砕ける音が響き渡り、苦悶の叫びは一瞬にして沈黙へと呑まれる。その爆心地に、ディリアンがいた。常人ならば肉片すら残らない衝撃を受け、巨体が遥か後方へと吹き飛ばされる。口から鮮血を吐き、巨剣が手から滑り落ちた。意識が完全に暗転しかける。だが、破滅に呑まれる寸前――黒い影が動いた。生きた繭のように収縮し、ディリアンの全身を完全に覆い尽くす。直撃した衝撃波を、影が強引に受け止め、吸収し、その破壊の軌道を彼の肉体から逸らしたのだ。光が収まり、後に残されたのは完全なる壊滅。焦土と化した大地。黒く汚れた雪。倒れ伏す兵士、魔法使い、ルズカルの戦士たち。多くの者が二度と動かない。凄惨な静寂が、戦場を覆い尽くす。ゆっくりと……黒い影がその身を開いた。ディリアンが雪の上に倒れ込む。傷だらけの肉体。肩の骨が歪に突き出し、流れる血が雪を染める。呼吸は途切れ途切れで、酷く重い。だが――息をしている。生き残った者たちの目が、信じられないものを見るように見開かれた。「閣下が……」シグの声が震える。「息をしておられる……?」ラミアが膝をつき、呆然と呟いた。「あり得ない……あのゼロ
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