「情報提供の対価として金銭を受け取ること自体が、問題だと言っているのではありません」 詩織の隣で、弁護士がマイクを取った。 「問題にしているのは、虚偽や意図的な誇張によって名誉や信用が傷つけられ、業務にも損害が生じた点です。民事訴訟は提起しています。刑事告訴についても、名誉毀損や信用毀損、業務妨害に当たるかを含め、証拠を整理して検討しています。具体的な請求と今後の対応は、私から説明します」 姉は一歩退いた。書類を持つ指に力が入っている。落ち着いて見えても、妹の私生活を大勢の前で話すことに慣れているはずがなかった。 拓也が、パイプ椅子をガタッと鳴らして半ば腰を浮かせた。 「ね、捏造なんかじゃない! 彼女が金を払ってCEOを雇ったのは事実だ! さっき本人たちも認めたじゃないか! 俺たちは嘘なんてついてない!」 拓也は周囲の記者に同意を求めるように首を振るが、突き出されていたマイクはすでに彼から離れ、詩織の持つ書類の方へと群がっていた。 「ええ、契約の存在については認めたわ。争点はそこではないの」 詩織は淡々と、一切の感情を交えずに事実だけを突きつける。 「あなたたちは、茅野朱里が仕事にかまけて自分をないがしろにした結果として別れに至り、その逆恨みで復讐を仕掛けてきたと主張しているわね。……自分たちは何も悪くない、純粋な被害者であると」 詩織が、さらに別の分厚いファイルを開く。 そこには、カラー印刷された写真や、メッセージアプリのスクリーンショットが、秒単位のタイムスタンプ付きで大量にファイリングされていた。 「半年前、朱里と拓也さんがまだ交際していた頃から、あなたたち二人が朱里に隠れて交際していた証拠は、すでに押さえてあるわ」 「なっ……!」 拓也が息を呑み、美咲の顔から完全に血の気が引いた。手から週刊誌が滑り落ち、床にバサリと落ちる。 「四月二十二日、都内のシティホテルへのチェックイン記録。五月三日、旅行を装って二人で出かけた際の沖縄への航空券の履歴と、現地でのツーショット写真。さらには……美咲氏が匿名のSNSアカウントで投稿していた書き込みの数々」 詩織が指先で弾いた書類には、黒く塗りつぶされたアイコンの横に、醜悪なテキストが並んでいた。 『親友の彼氏と寝るの、最高のスリル』 『仕事ばっかりしてるあの女が馬鹿なだ
Huling Na-update : 2026-06-06 Magbasa pa