壊れてしまった……捨てた……その言葉が、重い鉛のように暁の胸へ沈み込んでいく。唯一の物証が、消えたのだ。彼は口を開き、なおも問い詰めようとした。だがその瞬間、心愛のスマホが不意に鳴り響いた。彼女が視線を落とすと、ニュースのプッシュ通知が画面に浮かび上がり、あまりにも扇情的な見出しが目に飛び込んできた。【名門の秘話!加賀見グループ、二十年越しに行方不明の令嬢を発見。その正体は法曹界の新星、明石葵だった!】加賀見家の令嬢が……葵?心愛がニュースを開くと、そこには満面の笑みを浮かべる葵の写真が掲載されていた。彼女がいかに苦難を乗り越え、ついに家族との再会を果たしたのか――そんな「感動的」な物語が、これでもかとばかりに長々と綴られている。親探しなど、決して容易なものではないはずなのに。それなのに、なぜ葵はこれほどまでに運に恵まれているのだろう。かつては貴臣に守られ、今は加賀見家の庇護のもとにいる。ふと、祖母の言葉が脳裏をよぎり、胸の奥がきりきりと締めつけられた。私の本当の両親は、いったいどこにいるのだろう。だが次の瞬間、心愛は小さく首を振った。自嘲するように、思考を断ち切る。そんなことを考えてどうするの。非現実的だわ。今は何よりも、俊輔の冤罪を晴らすことが先決よ。彼女はニュースを閉じ、自分とは無関係な名門一家の因縁から目を逸らすと、スマホを手に取り、清夏へ電話をかけた。「もしもし、清夏」「どうしたの、心愛?朝っぱらから電話なんて。私に会いたくなった?」電話の向こうで、清夏がからかうように笑う。「ええ、会いたかったわ」どう切り出すべきか分からず、心愛はその軽口に乗った。「何かあったんでしょ。私とあんたの仲じゃない、水臭いこと言わないでよ」屈託のない声が、まっすぐに届く。「……実は、お願いがあるの」心愛の声は真剣そのものだった。「腕のいい刑事弁護士、知らないかしら。私……弟の事件を、もう一度やり直したいの」電話の向こうで、短い沈黙が落ちる。「心愛、本気なのね?」「本気よ」「よし!」清夏の声が一変し、鋭く引き締まった。「ほかの誰かなんて探さないで。私に任せなさい!」心愛は思わず言葉を失う。「清夏に?だめよ。あなたと貴臣の関係を考えたら……法廷で争うことになったら、桐生家
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