心愛はパソコンを受け取ると、画面に映し出されたデザイン画をゆっくりとスクロールした。そこには碧らしい、躍動感に満ちたしなやかなラインが躍っていた。少女の幻想をそのまま形にしたような甘美なスタイル。だが、全体的な構成はどこか散漫で、実用性への配慮に欠けるきらいがあった。「……少し、手を入れてもいいかしら?」心愛が尋ねると、碧は勢いよく両手を合わせ、祈るようなポーズを取った。「もちろんです、好きなようにしちゃってください!なんなら全部書き換えたって構いませんから!」心愛はそれ以上言葉を重ねることなく、自席に着くと静かにペンを走らせ始めた。決して大掛かりな修正ではない。碧の持ち味である流麗な曲線を尊重しながら、そこへ潔い幾何学的なカッティングを施していく。躍動感はそのままに、モダニズム的な「芯」が一本通った凛としたデザインへと昇華させていった。単なる装飾に過ぎなかったフリンジは、彼女の手によって、機能美を宿した隠しバックルへと鮮やかに生まれ変わる。ペンタブレットの上でペン先がさらさらと軽やかな音を立て、新たな筆致と元の構想が溶け合い、高次へと融合していく。その様を傍らで見守っていた碧は、呆気にとられたように口を半開きにし、その瞳を羨望と尊敬の色に染めた。「嘘……」彼女は思わず口元を押さえ、息を呑む。「深水さん、あなたはやっぱり天才です!どうしてこんな発想が湧いてくるんですか?もう、非の打ち所がない完璧な仕上がりですよ!」心愛は淡々とした調子でパソコンを返した。「あなたの基礎となるアイデアが優れていたからよ。私はただ、少し引き算をしたに過ぎないわ」「そんなの、引き算なんて言葉じゃ足りません。もはや錬金術ですよ!」碧はパソコンを愛おしそうに抱え、今にも小躍りしそうなほど興奮している。「よし、これで勝負ですわ!早速提出してきます!」意気揚々と駆け去っていく彼女の後ろ姿を見送る心愛の口元に、数日来の緊張が解けたような、微かな笑みがこぼれた。……その日の午後、会議室。デザイナーたちが一様に背筋を伸ばして居並び、室内には重苦しい沈黙が支配していた。プロジェクターの前に立つ理恵は、ポインターを手に、一切の感情を排した面持ちでスライドをめくっていく。やがて、スクリーンには二枚のデザイン画が並べて映し出
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