身代わり妻が去った日、夫は悔みの涙を知った のすべてのチャプター: チャプター 461 - チャプター 462

462 チャプター

第461話

暁はそのまま座ったまま、動かなかった。頭の中には、気を失う直前に、心愛の体がぐったりと崩れ落ちたあの瞬間が蘇る。その光景が頭の中で何度も行き来し、彼の心をかき乱して全く落ち着かせなかった。それでも、彼は座り続けていた。まるで一枚の扉を守っているかのように、あるいは、自分の中に残された最後のかけらを守り抜こうとしているかのようだった。夜はすでに深く更けている。廊下の照明は消えておらず、病室の中の微かな明かりもずっと灯り続けていた。彼はそうしてただ一人ドアの前に座り、無言で守り続けていた。廊下は静まり返っていた。この階の病室は元々人が少なく、時折看護師がワゴンを押して通り過ぎる際も、車輪が床を転がる音はごく僅かだった。病室のドアは閉まり、そこにはめ込まれた細長いガラス越しに温かな光が漏れ出ている。眩しくはないその光が、ドアの外にいる者に、内側と外側では全く温度が違うのだということを痛感させていた。暁はしばらく座っていたが、やがて立ち上がった。立ち上がる時の動作は鈍く、長く座っていたせいで足が痺れているようだった。だが、彼を本当に重く沈ませていたのは足ではなく、ずっと胸の奥にのしかかっている息苦しさだった。元々、自分は待てると思っていた。彼女の体が少し良くなるのを待ち、ゆっくりと慣れていくのを待ち、記憶の中から貴臣を剥がし落とすのを待ち、過去が一体どんなものであったかを彼女自身がはっきりと見極めるのを待てるはずだと。だが、今夜のこの出来事が、まるで多くのものを突然引き裂いてしまったかのようだった。桐生家がどういう場所か、雅子がどういう人間か、今日初めて知ったわけではない。しかし、知っていることと、心愛が段差の縁まで追い詰められ、あわや転げ落ちそうになるのをこの目で見るのとは、全く別の問題だった。ましてや、最後の最後、ベッドに横たわった彼女は小さな声でこう言ったのだ。あなたを信じる、と。その言葉は、彼に向けられたものではなかった。暁は手を上げて眉間を押さえ、きびすを返して医師のオフィスへと歩き出した。廊下の冷たい白い照明が、彼の冷ややかな顔色を照らし出している。今日は元々ろくに休めておらず、桐生家と病院の間を行き来して振り回されたため、目元にはすでに疲労の色が浮かんでいた。だが、疲れよりも、
続きを読む

第462話

暁は身じろぎひとつせず、もう一度だけ同じ言葉を繰り返した。「いつになればだ」医師には分かっていた。彼が求めているのは、曖昧な慰めの言葉ではない。確かな保証だった。だが、それこそが最も約束できないものだった。医師は小さく息をつき、正直に答えるしかなかった。「加賀見さん、そのご質問には、正確な時期をお答えすることはできません」暁の眼差しが、さらに深く沈む。「正確には答えられないというのは、どれくらい時間がかかるか分からないという意味か。それとも、根本的に回復しない可能性もあるということか」「いいえ、そうではありません。現在の状態を見る限り、患者さんの記憶喪失は永久的なものではありません。頭部の負傷に加え、当時の精神的な衝撃があまりにも強かったため、一部の記憶に断層が生じている状態です。患者さんはまだお若く、体力もありますし、脳の自己修復能力も高い。回復そのものは時間の問題だと考えています」医師はそう説明すると、少し間を置いて続けた。「ただ、その『いつ』という点だけは、本当に断言できません。数日で戻る方もいれば、数週間、あるいはそれ以上かかる方もいます。これは患者さんの精神状態や身体の回復具合、さらには外部から受ける刺激によっても大きく左右されるからです」話を聞き終えても、暁はすぐには口を開かなかった。机の縁に置いた手は、指先が白くなるほど強く握り締められている。その険しい表情を見た医師は、少しでも安心させようと声を和らげた。「あまり悲観なさらないでください。患者さんは現在、人の顔も認識できていますし、会話にも問題はありません。つまり、脳の機能そのものに大きな障害はないということです。今、何より大切なのは、患者さんを穏やかな環境で過ごさせ、今夜のような強い刺激を二度と与えないことです。記憶というものは、焦って取り戻そうとするほど遠のいてしまうことがあります。反対に、心が落ち着き、身体もしっかり休められれば、ある日突然、一気に思い出すケースも珍しくありません」暁は低く呟いた。「一気に、思い出す……か」「もちろん、必ずすべてが一度に戻るとは限りません。少しずつ思い出していく方もいますし、何かをきっかけに、途切れていた記憶が一気につながる方もいます。このあたりは、本当に予測がつかないのです」
続きを読む
前へ
1
...
424344454647
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status