千鶴の目つきが険しくなった。隣で何事もなかったかのようにバッグの中を探るふりをしている莉奈をちらりと見ると、そばに歩み寄って莉奈の手を握った。 案の定、その指先は氷のように冷たくなっている。 握られた瞬間、莉奈の手がわずかに強張ったのを感じ、千鶴は思わずその手をさらに強く握りしめた。 省之介は顔色一つ変えない承也を一瞥し、わずかに眉をひそめた。そして、千鶴に手を握られている莉奈を視界の端に捉え、思わず莉奈たちのほうへ二歩近づいた。 それからようやく、エレベーターの前にいる人物へと視線を向けた。 「美月、怪我をしたの?」 省之介は隼人の葬儀に参列していたため、美月も省之介がここにいることを意外には思わなかった。 美月は無意識に手を上げて額に触れたが、ガーゼの位置が見えなかったせいか、誤って傷口に触れてしまったらしい。少し血がにじんでガーゼを赤く染め、かなり痛々しく見えた。 加えて顔色も悪く、いっそう儚げに見えた。 美月はほんの少し眉をひそめただけで、何でもないことのように言った。「大丈夫よ。ちょっとした怪我だから」 ――ちょっとした怪我だけで、承也がわざわざ自ら病院へ送り届けてくるのだ。 千鶴の瞳が、さらに暗く沈んだ。 美月は付き添いの女性に合図し、車椅子を押させた。 近づいてから、美月は気遣うように口を開いた。「おばあちゃん、承也からここにいらっしゃると聞いて、様子を見に来たんです。ここ数日、家が葬儀でバタバタしていて、お見舞いにも伺えなくて……お加減が悪いんですか?検査の結果はいかがでしたか?」 距離が縮まると、千鶴の視線は自然と美月の脚へと向けられた。 かつて、美月のこの両脚は、確かに承也を救うために不自由になったものだ。 しかし、椎名家が歩けない女性を嫁に迎えることなどあり得ない。ましてや、椎名家の次期当主である承也の妻としてなど、論外だった。 だからこそ、美月の父親が遠回しに美月の結婚をほのめかしてきた時、千鶴はたった一人で椎名家の責任を背負い、恩知らずと罵られる覚悟でその縁談を拒絶したのだ。 だが結局のところ、椎名家は美月に対して負い目がある。 千鶴自身も、美月に対して申し訳なく思っている。 だから、美月と向き合う時の千鶴の心情は、ひどく複雑なものだった。 千鶴はうなずき、
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