All Chapters of 白月光は妹?私が死んでから元夫は泣いて後悔しました: Chapter 211 - Chapter 220

223 Chapters

211話 取り巻く何かが大きく動き始めている

「だから私は、それは都から以前貰った物だと言ったわ。今みたいに購入履歴が残っているわけじゃないから証拠と言えるものはなかったけど、都さんが私に胎児に良いと言って色々渡しているのは家の中の人は知っていたから、疑いを持たせることはできたわ」それに怒ったのは老人。すぐに鳥居家当主を呼びつけ、都を井竜家から追い出したらしい。だが子供が一人だけでは心もとない、と先代当主が譲らなかったため、その時都が身ごもっていた桃子については、出産後に井竜家が引き取ることになったそうだ。「でもこれで、ようやく普通の家庭を築けると安心したわ」そう言う老夫人の表情は、どこか浮かなかった。その理由は優希にも理解できた。鳥居健志の存在。妾を解消したなら、もう子供を作ることもないはずだ。「…私との結婚条件には、私が知らされていないものもあったらしいの」「…都さんが言っていた、鳥居家側の跡取り…」老夫人は頷いた。「もともと私が言っていたのよ。都さんが子供を産んでも、その子を私が育てるなら、それでいいって。……だから、私には言えなかったのね。健志さんだけは私に渡されず、おじいさんの子として鳥居家で育てられることを」都を井竜家から追い出したことで、その条件まで反故にしようとした老人だったが、両家の当主は老夫人の今後を持ち出して譲らなかった。結局老人は、鳥居家に残す子は一人だけだと念を押し、老夫人には告げないまま何度か鳥居家へ赴いたらしい。つまり老人は、長年もう一人の息子の存在を妻に隠していたことになる。老夫人がそれを知った時、自分の知らないところで都と閨を過ごし、誕生を見届け、祝い、父として接していた老人のことが許せなかったのだそうだ。「いつ会っていたのか、私が何をしている時に、彼らは何をしていたのか。想像するだけで怒りがこみ上げてね」「言い出せなかった理由もわかるけど、やっぱりショックだったわね」とぽつりと呟く声に、優希はかける言葉が見つからず、ただ老夫人の手を握った。
last updateLast Updated : 2026-10-02
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212話 感傷的

「鳥居コーポレーション側からは何と?」 「未来の医療水準を向上させ、人命を救うために必要なことだと。他の視点から検証すれば、新たな発見につながる可能性もある、と」 隆一は思わず笑ってしまう。 人命などと大それたことを言っているが、結局のところお金が目当てだったことは明らかだ。 (彼らにそんな温かい心などあるはずがない) なぜなら、麗華を実質的に殺した人間を、親類だからと匿っているのだから。 隆一の胸に冷たい風が吹き込む。 「…とりあえず、先方にはそのデータは外部への公表を前提としたものではないから答えられないと言っておいて。その後のことは僕が何とかするよ」 ようやく浮かんだ隆一の微笑みに安堵の息を吐いた研究員は「わかりました」と返事をすると、部屋を出て行った。 (いいでしょう。彼らが人命を大切にするのなら、こちらもそれに応えましょう) 未来の平和のために。 隆一は携帯を手にとると、電話をかけ始めた。 「ああ、有美かい?前に言っていた、株の譲渡の件だけど…」 - 都は有美からの電話を切った瞬間、笑いが止まらなくなった。 (これで三滝製薬も手に入れられる…!) 健志を公表したことで、世間の同情も自分に向き始めた。 井竜グループの株価も下がり続けている。 そして今度は、隆一が有美に株を生前贈与すると言うのだ。 その株まで鳥居側に取り込めば、三滝製薬への影響力はさらに強くなる。 多少無理をしてでも買い取らなければいけない。 (一番は有美ちゃんが譲渡してくれればいいんだけど…) あの強欲な娘は絶対に首を縦に振らないだろう。
last updateLast Updated : 2026-10-03
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213話 久しぶりの有美

「や!ばばがいい!」「いい!」「二人とも、お願いだからママのお話を聞いて」託児所へのお迎えの時、凛と陽は老夫人のお迎えじゃないと嫌だ、と地面に座り込んでしまった。二人だと抱えて行くことも難しい。「荒れてるね」長丁場になりそうだ、と優希がため息をつくと、通りかかった将生が緩く言う。白衣を着ていないところを見ると、もう仕事を終えたのだろうか。「おじさん!」将生の姿を見た瞬間、石のように動かなかった子供たちは、素早く将生の足にしがみつく。「おばあさんがいなくなってから、ずっとこんな感じなの…。」慣れた人間がいなくなるのは、優希が思っていた以上に子供たちを不安にさせてしまったようだ。「…もうお仕事終わりかしら?良かったらこのまま家に来ない?一緒に夕飯を食べましょう」ひしっとしがみつく凛たちの様子を見ていると、このまま引き離すのが可哀想に思え、優希はもう一度大きなため息をつくと将生を窺いみる。実は昨日、日持ちしない料理を作りすぎてしまい、まだかなり残っていたという理由もある。「こんなに熱烈に求められたら断れないよ」将生は気にした様子もなく、優しく笑った。そして軽々と子供たちを抱き上げると、ゆっくり歩き出す。「二人とも、今日だけよ」はしゃぐ二人に釘をさしつつ、優希は少し後ろをついて行く。その方が、子供たちの顔が見えるからだ。「おえかきした」「何を描いたの?」「ばば!」「またおばあさん?」優希が笑うと、凛は得意げに頷いた。老夫人が帰ってからというもの、朝起きれば「ばば」、食事の時にも「ばば」、託児所へ迎えに行けば今日のような状態だった。ビデオ通話をすれば喜ぶのだが、画面が消えた途端にまた寂しがる。まだ幼い二人には、遠くにいるということがうまく理解できないのかもしれ
last updateLast Updated : 2026-10-04
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214話 昔と今

首にしがみつく陽の体は小さく震えている。優希は震える手でこっそりと携帯を探す。「その子、私の子でしょう?暁春の子供は私が産んだ子だけ。歳も近いわ!そうよ、あんたが盗んだのね!!」何やらぶつぶつと呟いていた有美の目が、突然ぎらりと光った。優希は一歩後退り「どうしてここにいるの?」と、問いかける。そしてその隙に、探し出した携帯を手探りで操作して緊急通報機能を作動させる。「人から聞いたのよ。空港で見た時は気にならなかったけど、まさか陽に会いに来てたとは…」(じゃあ暁春が教えたんじゃないの…?)「子供は渡さない。怖がっているから今すぐ帰って」「本音を言えば、もういらないわ。井竜家の後継者はあの醜いおじさんだし、暁春に至っては、なんか見窄らしくなったしね…。井竜家の若奥様はもうどうでもいいから、陽にこだわる必要もないわ」優希は陽の耳を塞ぐ。意味は分からずとも、自分に向けられた酷い言葉を耳に入れてほしくなかったのだ。「ならいいじゃない。もう用はないでしょう?帰って」「でも、あんたの所にいるのは嫌なのよ。私のものをあんたに奪われるのは許せない。だから返して」めちゃくちゃな発言に、優希はめまいがしそうになった。(まともに話してどうにかなる状態じゃないわ……)その時、遠くの方でサイレンの音が聞こえた。どうやら、きちんと通報できたらしい。しかし有美は慌てるどころか、平然とした顔をしている。「私は何も悪いことはしていないわ。警察が来たからってどうってことないわよ」予想外の反応に優希は唇を噛み締める。すると将生と目が合い、彼がわずかにエントランスの方へ視線を動かした。その意図を察した優希は陽を抱く腕に力を込め、凛の手を取る。将生が有美の注意を引いた瞬間、陽を抱いたまま凛の手を引き、ほとんど走るようにしてエントランスへ向かった。追いかけようとした有美を、
last updateLast Updated : 2026-10-05
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215話 再び脅かされる日常

その後、将生は一度シャワーを浴びるために自宅へ帰った。 戻って来ると、そのまま子供たちを寝かしつけるために子供部屋へ入った。 しかし少しして、陽が「ママも…」と戻ってきたため、優希はお皿を片付ける手を止めて子供部屋へ向かう。 凛は優希の部屋から持ってきた枕を抱いて、扉のところに立っていた。 「やっぱりママが一番だね」 そう言って将生が微笑む。 最近の子供たちのぐずりに手を焼いていた優希は、その言葉に目の奥が熱くなるのを感じた。 「いっしょ、ねよう」 凛が布団に潜り込み、自分の隣を小さな手で叩く。 「うん…」と声を詰まらせながらも笑いかけて、優希もそこに体を滑り込ませた。 大人に囲まれたことでようやく安心したのか、やがて寝息が二つ聞こえて来る。 それに混じってもう一つの寝息も聞こえ、優希が顔をそちらに向けると、暗がりの中で将生が目を閉じているのが見えた。 当然、彼も疲れていただろう。 優希はそっと体を起こすと、寝ている三人に布団をかけ直して子供部屋を後にした。 (有美ちゃんがこの街にいる…) 残したお皿を食器棚に戻しながら、優希は難しい表情を浮かべる。 暁春に偽装死を知られた時よりも緊張しているのは、少なくとも彼は陽を大切にしていたが、有美にはそれがないからかもしれない。 (子供たちのことを考えると、早めに対処しておきたいわね…) 優希が妊娠している時から、有美は優希とそのお腹の子供を排除しようとしていた。 警察に頼るのが一番安全だが、今日のようなことがまた起きる前に、何かできることはないだろうか。 (お父さんが言ってもあの子は言うことを聞かないでしょうね。何かないかしら…) だが考
last updateLast Updated : 2026-10-07
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216話 見えない答えと見つけた先

夜、子供たちを寝かしつけた優希は、ソファに勢いよく座り込んだ。勉強をしようと教科書やノートを持ってきたが、疲労でそのままソファに散らばった。優希は今日一番大きなため息をついて、背もたれに頭を乗せる。頭に浮かぶのは、迎えの時に保育士から言われた言葉。「朝は元気だったんですけど、お昼寝中に少し寝苦しそうで、お迎えの時間が近づくにつれて、そわそわと玄関を見るようになりました」その様子が、何かに怯えているようだ、という話を聞いて、優希は思わず子供たちを抱きしめた。優希ですら緊張したのだ。二歳にもならない子供たちが気にしていないわけがない。(朝は平気そうに見えただけだったのかしら……)幸い、明日はベビーシッターが来てくれることになっているため、一日中自宅で安全に過ごせる。しかし二人にはすでに託児所でできた友達もおり、さらに集団でしか得られない刺激もあるのに、その機会を奪ってしまうことが気になった。有美が完全にいなくなる、もしくは嫌がらせする気持ちすら湧かなくなるほど打ちのめすことができればいいのだが、そんな方法が簡単に思いつくはずもなかった。明日はベビーシッターが来てくれるとはいえ、ずっとこの緊張感のまま生活するのは苦痛だ。(どうして邪魔されなければいけないの…?)思えば、有美に生活をかき乱されるのはこれが初めてではない。暁春に対して黙って耐えることをやめたきっかけの一つも、有美への怒りだった。階段から突き落とされたことも、その後、自分の子供まで侮辱されたことも、今でも忘れてはいない。そんな彼女が、また優希の平穏な生活に踏み込んできたのだから、争いごとを好まない優希も苛立ちを感じる。しかし、どう行動するべきか考えても答えは出ず、結局その夜も何も決められないまま終わった。-都への同情も相まって、鳥居コーポレーションに向けられる世間の注目は、日に日に大きくなっている。(そろそろかしら…)
last updateLast Updated : 2026-10-08
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217話 もしもの未来

老夫人は老人の頬にそっと手を添え、自分が恋した目を見つめる。 何十年も歳を重ねて皺が増えた顔。 しかしその中で、冷たくも熱い瞳は変わらない。 肉欲なんてとうに枯れているが、それでも愛おしさで胸は熱くなる。 「これは私が言ってこそ意味があるのです。今まであなたは、あなたなりのやり方で私を守ろうとしてきました。今度は私があなたを守りましょう。ただの不倫男で終わるかどうかは、妻がどうやって庇うかで決まります。だからそんな心配そうな顔をしないで」 「ね?春友さん」と懐かしい名前を口にする。 老夫人の話を静かに聞いていた老人は、諦めたように目を閉じた。 ふふ、と笑った老夫人は老人に寄り添い、少し冷めたお茶を啜る。 - 都の会見以降、鳥居コーポレーションには追い風が吹いていた。
井竜グループの株価が低迷する一方で、鳥居家には同情的な声が集まり、桃子が進めていた株の買い集めも順調だった。 「もう少しね」 増えていく持株比率を眺めながら、都が笑う。
隣にいた健志も、満足そうに口元を緩めた。 「ああ。暁春の小僧が戻ってきたところで、もう遅い」 健志は昔から、英二と桃子は井竜の姓を名乗っているのに、自分は格下の家の姓を名乗るのが気に入らなかった。 同じ父と母から生まれた兄弟なのに、なぜ英二は井竜家の跡継ぎで、自分は格下の鳥居家の後継ぎでしかないのか。 羨ましくも、憎らしく思っていた。 (だがそれも今じゃひっくり返った…!もうすぐ俺が、井竜家すら見下ろす側になる) 愛人は何人囲おうか。
last updateLast Updated : 2026-10-10
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218話 足りない部分を補完

将生の訪問に、子供たちは当然大喜びして周りを飛び回った。短い時間ではあるが、仮眠を取れた将生も少し元気を取り戻し、子供たちの一生懸命な話に、笑顔で相槌を打っている。それでも早く休ませてあげたいと思った優希は、手早く夕食を盛りつける。その時、携帯が電子音を鳴らした。美緒からのメッセージで、そこにはいつかのようにリンクが貼られていた。"おばあさんが、これから会見をするわ"グループチャットに来ていたメッセージを将生も確認し「都さんのことかな?」と言う。「そうだと思うわ。最近ますます都さんに同情を寄せる声が増えてきた気がするもの」優希はテーブルに盛り付けたお皿を置き、美緒に返信する。「テレビに繋げようか?きちんと見よう」「そうね…」優希は頷きながらも、にこにこしながら椅子に座る子供たちに心配の目を向けた。きっと楽しい話じゃないが、不安にならないだろうか。「まだ難しい話は理解できないから大丈夫だと思うよ。もし飽きてきたり、怖がるようなら消そう」「わかった」優希が頷くのを見ると、将生はリモコンを操作して携帯の画面をテレビに映す。そこにはマイクが置かれた机の真ん中に、老夫人が一人で座っている姿が映し出された。背筋を伸ばして静かに座る姿は凛としていて、気品がある。「ばば!」テレビに気づいた子供たちが、嬉しそうに指をさす。しかしいつもの朗らかなおばあちゃんとは異なる雰囲気に、怪訝そうな表情になった。「ばば?」「おばあさんは今から大事なお話をしてくれるみたい。静かに見れる?」怖がらせないように、優希が優しく言うと、神妙な顔つきで頷いた。食卓に沈黙が流れる間もなく、司会者の挨拶とともに会見が始まった。「以前、鳥居都さんが井竜会長との関係を公表いたしましたが、それは事実でございます」その言葉に、会場の報道陣からど
last updateLast Updated : 2026-10-11
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220話 甘酸っぱい過去

「優希ちゃんは、何回言っても前髪を留めないでノートに書いてたよね。だから目が悪くなったんじゃない?」優希が眼鏡をかけ始めたのは、自分に向けられる周囲の目が怖くて視界をわざとぼやけさせるためだった。目を覆い隠すほどの前髪も、同じ理由で。将生に心を許し始めてもそれは変わらず、あまり顔を曝け出すことはしなかった。しかし将生に勉強を見てもらう時には、また少し違う理由も含んでいた。「だって、本を読むあなたの顔が好きだったの。今だから白状するけど、たまに前髪の隙間から覗いていたのよ」「変態みたいよね」と優希は自分自身に笑ってしまう。それほど当時の将生は、優希にとって理想の男性そのものだった。しかし甘酸っぱい懐かしさに口元が緩む優希とは反対に、将生の笑顔が少し固く感じた。「あ…ごめんなさい。デリカシーがなかったわね…」将生との交際は、優希からの一方的な別れの言葉で終わった。それを勝手に良き思い出として話すのは良くなかったか、と優希は思わず視線を落とす。嫌いになって別れたわけではなく、再会後は将生の穏やかな空気のおかげで変に気負うことなくこれまで過ごしてきたが、交際していた期間のことを、こうもはっきり話したのは初めてだった。「謝ることはないよ。少し驚いただけ」将生はいつもと変わらない声でそう言うも、優希は居た堪れず、リビングには若干気まずい空気が流れた。(どうしよう…これから気まずくなるかしら…)将生は優希が心から大切に思う友人だ。変に誤解を与えてギクシャクするのは寂しい。「…そろそろ寝ましょうか」どうにも落ち着かなくなり、優希はノートを片付けながらぎこちなく笑う。「優希ちゃんは…」しかし将生は動かず、優希が椅子から立ち上がった時、ぽつりと声を出した。「優希ちゃんは…今、僕といると気まずい?」「え?」「お互い付き合っていた頃の話って、なんとなく避けてたじ
last updateLast Updated : 2026-10-15
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