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All Chapters of 浮気夫は復讐する: Chapter 51 - Chapter 59

59 Chapters

51話 本邸へ

「機嫌がいいね。」 シャワールームから出てきた暁春がバスローブの紐を結びながら言った。 彼の胸元にも彼女と同じ赤が散らばっている。 「暁春が私のとこに来てくれたからね。」 咥えた煙草に火をつける手の色気に、有美の腹の奥が重くなる。 シーツを引き摺りながら彼に近寄り膝に乗ると、甘えるようにしなだれかかった。 はだけたバスローブから覗く割れた腹筋を指でなぞり上げ、突き出た喉仏を擽るとお尻の下で小さく反応したのがわかった。 「お姉さんが何かしたんでしょう?」 下半身は反応するも、暁春自身は煙草の灰をを灰皿に落としただけで反応が鈍い。 有美は気にせず話し続けた。 「明日の食事会楽しみ。お姉さんどんな顔するかな?」仕方なく今は彼を優希に貸し出している状況だが、有美は早く返して欲しかったので、「その日」が来るのが待ち遠しかった。 暁春は煙草を消すと有美にキスをした。 「きっと下を向くだけで何も言えない。」 優しいキスに本命の優越感に浸りながら暁春の首に腕をまわす。 「またスる?」 「もうしない。明日も仕事だ。」 暁春はそう言って有美を抱き上げるとベッドにそっと下ろした。枕を整えようとしている有美の顔が不意に、暁春の手によって彼の方に向かされる。 じっと見つめてくる目は有美の顔の上を動き、目で止まった。 時々されるこの行動は昔から暁春がしてくるもので、有美の顔を食い入るように見つめると、恍惚とした表情を浮かべる。有美は彼女の顔の虜となった彼を見るこの瞬間が好きだった。 権力、財力、容姿の全てを持った男を手玉にとったこの顔と体。有美はもはや、全てを手に入れ
last updateLast Updated : 2026-03-06
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52話 愛ある指導?

桃子は暁春の父の妹で、50歳を過ぎでもなおその顔は40代のように若々しい。 老夫人よりも老人に似た顔つきをしており、元々強い目元が化粧で強調され、真っ赤な口紅とタイトなワンピースも相まって、美しいが少しきつい印象を受ける。 桜は今年21歳の大学生で、どちらかというと母親の美緒に似ていた。 井竜家の人間は整った顔の人が多く、桜も暁春同様目を引く容姿をしていた。 小さな顔に丸い形の目が可愛らしく、自然に尖った鼻が顔の中央を立体的にしており、流行りのボブヘアが可愛い顔つきによく似合っている。 先に優希に気づいた桜が桃子に目配せし、桃子も振り向いて優希を見るとあからさまに顔を顰めた。 「桜ちゃん、桃子さん、こんばんは。お邪魔します。」 優希はなるべく自然に微笑み、手土産の入った袋を桃子に差し出す。 「これ、お2人がお好きだと聞いたので。どうぞ召し上がってください。」 桃子は芝居がかった仕草で手を胸に当てると大袈裟な笑みを浮かべる。 「あらぁ、ありがたいわぁ。私たちの好みを調べて、わざわざ、買ってきてくれたなんて…。ありがとう、優希ちゃん。」 そう言うと、桃子は差し出された袋を摘むように受け取り、近くにいた美代子に渡した。 優希の口元が引き攣る。
last updateLast Updated : 2026-03-07
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53話 父娘の再会

「ゆうちゃん、この間はすみません…。」 暁春が眉を下げ、申し訳なさそうな顔をして謝罪をするが、優希の耳には届いていない。 呆然と暁春の後ろで桜と話す人を見ていた。 「有美お姉さん、来てくれてありがとう!」 「桜のご招待だもの、必ず来るわよ。」 そこには満面の笑みの桜に腕を抱かれる有美がいた。 黒いタートルネックのニットセーターに、グレーのフレアスカートを合わせたコーディネートは、暁春のスーツと色味が似ている。 「あ!お姉さん、お久しぶりです。私の体調を気遣ってくれたようで…ありがとうございます。」 優希に気づいた有美が近寄ってくる。 「あ…、えぇ、良いのよ…。」と優希は動揺を隠せずに掠れた声で言った。 「桜が久しぶりだからって招待してくれたんです。」 ねっ!と笑顔で言い合う有美と桜の姿は、姉妹のように仲が良さそうだった。 「お父さんも来てるんですよ!」 思い出したかのように言うと、有美は玄関の方へ顔を出し「お父さんこっち!」と手招きした。 暁春が有美を連れてきたという衝撃に優希の頭は追いつかず、有美の行動をただ眺めていた。「ごめんね、久しぶりだから…。」 ダイニングに入ってきた父、隆一の姿を認識すると、優希の目が大きく開かれた。 実に20年ぶりに再会した父親は、先日のニュース映像のままの姿だが、顔色が良くないように感じる。 隆一は立ち尽くす優希を見ると、ぎこちないながらも昔と同じ笑顔で笑いかけた。 「優希、久しぶりだね。」
last updateLast Updated : 2026-03-08
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54話

暁春はそう言いながら椅子を引き、ずっと立っていた老夫人を座らせると、その隣の椅子も引いて老人に促す。 年長者の2人を気遣っているように思える行動も、一瞬老人に向けた挑戦的な目つきに裏を考えてしまった美代子は、持ってきた椅子を置いて急いでキッチンに入っていった。 - 優希はトイレの鏡の前で化粧を直していた。 隆一との再会の衝撃が落ち着いた今、彼女の頭には混乱が生じていた。 本邸では今日のような食事会は定期的に行われているが、過去の食事会は家族のみで、招待されたとしても親戚の人たちだけだった。 だから優希は自然と、食事会は気軽なホームパーティではなく、家族間の近況報告も兼ねたものだと思っていた。 そこに有美と隆一を連れてきた暁春の意図が分からず、優希はため息をつく。 考えに耽ると手元の注意が疎かになり、マスカラがまぶたに着いてしまった。 慌てて拭き取ろうとしたら今度はマスカラを落としてしまい、ベージュのワンピースにマスカラの黒が付着した。 優希は思わず天を仰ぐ。 (上手くいかないわね…。) 妊娠報告の失敗や事故、有美と暁春の過去、そして先日の喧嘩など、最近の物事のうまくいかなさに優希は再び大きなため息をついた。 桜が昔から有美を姉のように慕っていたとは老夫人から聞いており、今日の食事会は優希を好いていない桜による、有美との比較会になるのではないかと憂鬱になる。 それでもお腹に手を当て、妊娠をきちんと伝えるのだと自分を奮い立たせた。 何とか身なりを整え終わった優希はトイレを出てダイニングへ行く。 ダイニングに近づくにつれ、桜が甘えるように話している声が聞こえてくる。 おそらく有美に話しかけているのだろう。 出入口のとこで一旦足を止め、深呼吸をすると笑顔を作り中に入る。
last updateLast Updated : 2026-03-09
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55話 妊娠を叫ぶ

しかし優希の想像とは違い、桜は有美と優希を比較するような発言をすることはなく、むしろ優希をいないかのように全く絡んでこなかった。 桃子も隆一に熱心に話しかけ、いつもことある事に言っていた優希への「指導」が来ることもない。 優希を煩わせるものがなく一見平和な食事会だが、しかし優希は惨めな気持ちだった。 目の前の暁春は隆一と話しながら時折有美と穏やかに話し、その話し方や接し方は優希へのそれよりもとても自然に感じられ、さらに桜と有美の仲の良さがまるで有美こそが彼の妻のように思えた。 本来はとても美味しいはずの料理も美味しく感じず、優希は微笑みを顔に貼り付けながら機械的に料理を口に運ぶ。 「ちょっといいかしら、それぞれで話すのもいいけど、みんなの最近の出来事を聞きたいわ。」 優希を心配そうに見ていた老夫人はフォークを置くと咳払いをして言った。 皆が話を中断して老夫人を見るのを確認し、再び口を開く。 「まずは私からね。みんなも気づいていると思うけど、最近おじいさんと喧嘩をしているのよ。お墓に入るまでに仲直りできるかも分からないわ…。」 上品に頬に手を当てため息をつく老夫人。 優希は本邸に来た時から感じていた違和感の正体に納得した。 先日来た時はべったりという表現がしっくりくるほど老夫人の隣をキープし、老夫人はお菓子を食べさせるなど仲睦まじい2人を見せていたのに今日は2人が話すとこを見ておらず、食事中も老夫人は老人の隣に座らなかった。 ちらりと老人に目を向けると、表情は変わらないが片眉が僅かに動いたのを優希は見た。 「じゃあ次はゆうちゃんね。」 老夫人が妊娠を伝える機会を作ってくれたのだと理解した優希は、緊張で目を泳がせる。 「えっと…。」 心臓は破裂しそうなほど激しく動き、膝に置いた両手は緊
last updateLast Updated : 2026-03-11
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56話 嘘か野良種か

「本気で言ってますか?」 沈黙は桜の冷たい声で破られた。 有美に向けていた笑顔の欠片も見えない表情は、顔立ちは違えど暁春と似ており、2人は兄妹なのだと改めて思わされる。 「本当よ。今6週目になるわ。」 優希は桜をまっすぐ見て頷いた。 ようやく言えた達成感から少し気分が軽くなったように感じるが、目の端にぼんやりと見える暁春を直視することは出来ずにいた。 「有り得ません。お兄ちゃんはいつも避妊をしていました。何故妊娠が可能なんですか?」 桜の言葉に優希は眉を寄せた。 (桃子さんと桜ちゃんが何故知ってるの…?) 先ほどの桃子の発言でも感じたが、夫婦生活のことを何故2人が知っているのか…、優希 は暁春と有美を見る。 暁春は何か考え事をしているようで、グラスを握ったままテーブルの上をぼんやり見ており、その隣の有美は呆然とした表情で優希を見ていた。 「嘘か、野良の種か…どっちかしらね。」 桃子が懲りずに愉快そうな顔でテーブルに乗り出し言った。 不倫を言われていることに気づいた優希が顔を青くさせる。 彼女はコンドームへの細工の説明ばかりに気を取られて、他の男性の存在を疑われたり、そもそも妊娠自体を疑われる可能性を失念していたのだ。 「野良なんてっ…お腹の子は正真正銘暁春の子供です!」 「ふーん?まず妊娠が本当ならエコー写真見せて欲しいわね。」 優希の焦った声に桃子の眉毛が上がる。 「持ってきていないので、今はお見せできません…。ですが、井竜中央病院に記録があります。」 「そう。まぁ、妊娠が事実だとしても、暁春の子供かどうかの疑問は残るけどね。」 「うちの病院の産科で優希ちゃんの元カレが働いてるらしいじゃない。…その元カレの子供だったり
last updateLast Updated : 2026-03-12
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58話 堂々と

優希が振り返ると、沈痛な面持ちの老夫人が立っていた。 眉毛を下げて視線を落とし、肩も落とした姿は桃子に退去を命じていた時の毅然とした姿と真逆だった。 「桃子と桜が本当にごめんなさい。あの馬鹿な2人が台無しにしてしまった…。」 頭を下げる老夫人に優希が慌てて肩を支える。 「謝らないでください!おばあさんが謝ることじゃありません!」 「あの2人は私が育てたの、私の育て方が間違っていたのよ…。本当に申し訳ない…。申し訳ない…。」 顔を下げたまま声を震わせる老夫人から少し離れた所に老人が立っている。 その表情は怒りなのか悲しみなのか、優希には判断がつかないもので、ただ分かるのは、老夫人を心配しているようだということだった。 優希は、顔をあげない老夫人の背中を優しく撫でながら話しかける。 「おばあさんとおじいさんが味方でいてくれたので大丈夫です。…お父さんも、たぶん庇ってくれたんだと思います。それだけで十分ですよ。」 ちょうどダイニングから見えなくなった隆一の背中に目を向け、優希は落ち着いた声で言った。 「だから顔を上げてください。結果的に妊娠を伝えることは出来ましたし、桃子さんに笑われる原因を作ったのも私ですから…この後のことは、帰ったら暁春と話します。」 老夫人は顔を上げると優希の手を握る。 「もしあの子が馬鹿なことを言ってきたら…、必ずおばあさんに連絡を頂戴。」 その言葉に優希の表情が固まった。 考えないよう
last updateLast Updated : 2026-03-14
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59話 それぞれの車内

「…時間がある時にでも、三滝社長とゆっくり話をしたらどうかしら。彼も離れていた間のことをゆうちゃんから聞きたいと思うの。」 老夫人の提案にそうだろうかと不安に思うも、とりあえず頷き車に乗った。 手を振る老夫人の横で、老人も優希に軽く頭を下げるとすぐに老夫人に視線を向け、彼女の肩にストールをかけた。 (今、おじいさんにとって1番気にかかってることはおばあさんなのね。) あからさまな老人の態度に思わず優希の口元に笑みが浮かぶ。 そこまで気にかけてもらえる老夫人が羨ましく思うと同時に、今や自分と暁春ではその未来像が浮かばなくなっていることに気づき、優希の胸に悲しみが滲む。 車が本邸の門から出る時、玄関から暁春が出てくるのが見えた。 その傍らに有美がいるのも見え、優希は目を逸らして前を向く。 遠目で見た2人は最初に見た時に感じた通り、お互い揃えたように服装のバランスが取れていた。 まるでカップルがパーティのドレスを合わせるように、デートでペアルックを楽しむように。 優希は息苦しさを感じて窓を開けた。 春の夜風が顔を撫で、どこか懐かしい匂いが鼻腔に触れる。 (…人がずっと覚えているのは嗅覚だったかしら。) 夜の少し湿った匂いは子供の頃に嗅いだものだったか、それとも昼は外出出来ないからとたまに暁春としていた夜の散歩の時だったか。 思い出せないが、とても懐かしい気持ちになるのは、この匂いを嗅いでいた当時の彼女はとても幸せを感じていたのだろう。 優希は背もたれに体を預けて目を閉じると、自然と体の力が抜け、今日1日緊張していたことを思い出した。 あの2人を見た時の嫌な気持ちは、懐かしい匂
last updateLast Updated : 2026-03-15
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