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All Chapters of 浮気夫は復讐する: Chapter 41 - Chapter 50

59 Chapters

41話 帰宅

悟は優希の問いに、ちらりとミラー越しに彼女を見た後、また目線を前に向けた。 「たしかに、奥様のことは公表していないので、あわよくばという方はいらっしゃいます。」 「…実際に体の接触はあるのかしら?」 「相手側が酔って境界を越えようとすることはあります。避けられずに接触してしまうことも、何度かありました。」 (…昨日の説明は一応本当ということなのかしら…。) だとしても自分の夫に触れた女性がいると思うと、優希の気分は晴れない。 「…もし今後、暁春にそのようなことがあったら、私に教えてくれるかしら?」 「承知致しました。」 本当は暁春から教えてもらえればいいのだが、時には本人から聞くより他人から聞いた方が信憑性がある場合もあると知ったから、悟にお願いすることにしたのだ。 有美にも聞けなくはないが、暁春の件では彼女を頼りたくなかった。 「では奥様、次回お出かけの際には運転手をお呼びください。社長は奥様が運転することがないようにと仰せでした。」 自宅に着くと、悟が運転席から降りて後部座席のドアを開けながら言った。 優希は車から降りると振り向いて「わかったわ。」と返す。 優希に会釈をして再び運転席に戻る悟を見送り、玄関の鍵を開けた。 スリッパに履き替え、リビングのソファに座ると、大きく息を吐く。 1日留守にしただけなのに、しばらく不在にしていたような感覚になるのは、昨日が色々と濃い1日だったからだろうか。 ひとまず暁春に帰宅したことをメッセージで送り、立ち上がった。 寝室へ行き、クローゼットの中の箪笥を開けると、ピンクの缶を取り出した。 蓋を開けると今朝の暁春のメモと、エコー写真を入れる。 先日のエコー写真はギフトボックスに入ったままだった
last updateLast Updated : 2026-02-23
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43話 次期社長

「えっ、石口さん、その格好で次期社長とあうの?!」 優希は目立たないよう、いつも通りのシャツにセーター、膝丈のスカートで出勤した。 長い前髪は規定通りにピンで留め、薄化粧に分厚い黒縁眼鏡は、彼女は地味で目立っていないつもりだったが気合を入れた女性たちの中では逆に悪目立ちしていた。 「もう少し気を使ったら?」 「いや、ダサすぎて逆に目を引くから、これが作戦なのかもよ。」 「えぇー!いくら次期社長の目を引いても、ダサい格好を見られるのは嫌!!てか、そこから発展出来ないでしょう!」 デスクでマスカラやリップを塗りながら嘲笑を含んだように話す同僚の声に、優希は苦笑いを浮かべながら無言でパソコンの電源を入れた。 業務が始まればさすがにお喋りも落ち着き、優希が無心でパソコンを叩いていた時、フロアの出入口の方が騒がしくなった。 「社長!こちらがご令孫でしょうかっ?!いやぁ、社長に似て聡明そうなご尊顔をしていらっしゃる!」 支社の役員たちが精一杯手を擦り、おべっかを使う声が響いた。 その声に全員立ち上がり頭を下げる。 優希もそれに倣った。 玉の輿だと騒いでいた人達は一言も発せず、フロアは痛いくらいの静かさとなった。 「…いい。全員顔を上げて業務に戻ってくれ。」 老人の静かだが、有無を言わせない重さのある声が静まり返ったフロアに響くと、弾かれたように全員顔を上げ、机に向かった。 優希は椅子に座ると、ちらりと老人の傍にたっていた暁春を見た。 当然だが。最後に見た7歳の少年とはだいぶ変わっていた。 背も伸び、ふっくらしていた頬はシャープに、大きく丸かった目は切
last updateLast Updated : 2026-02-25
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44話 ドレスアップ

頭をあげた優希は、今度は目をそらすことなく暁春を見つめた。 「私のできることならなんでもやります。どうか、私に償いの機会をいただけませんか?」 これは彼女の心からの言葉だった。 もし美緒に脳を提供しろと言われても、成功するかは別として従うつもりだった。 「うん、謝罪は受け入れるよ。」 優希の言葉に暁春は淡く微笑むと、長い指で彼女の頬をなぞる。 「2日後、次期後継者お披露目の立食パーティが開かれる。なんでもと言うなら、ゆうちゃんにはそれに参加して欲しい。」 「え?」 「もっとゆっくりあなたと話したいけど、他の国の支社にも顔を出さないといけないから時間が無いんだ。だから、パーティの後にゆうちゃんの時間を俺に欲しい。」 「パーティ自体は全社員参加可能だから、そんなに気負わなくてもいいよ。」 予想外の話に優希は目を瞬いた。 「それだけ…?」 「臓器でも貰おうか?」 「それを望むなら。」 即答した優希に暁春は一瞬驚いた表情をするも、すぐに鼻で笑うと首を振った。 「母さんも俺もそんな物望んでいない。」 「…わかった、パーティに喜んで参加させてもらうわ。」 優希が頷くと暁春は名刺を差し出した。 「これ、俺の連絡先。メール送って。3日後の夕方4時、迎えにいくからドレスアップに行こう。」 通路の向こうから賑やかな声が聞こえて来た。 優希は暁春と一緒にいるところを見られたくなく、急いでその名刺を受け取った。 「ありがとう…。」 暁春は、ぎこちなく笑う優希の髪を整えるとその小さな頬を両手で包み込んだ。 「ずっと会いたかった。あなたに会
last updateLast Updated : 2026-02-26
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45話 パーティ

最後にシルバーのピンヒールの靴を履くと、自然と顎が引かれ背筋も伸びた。 店内に戻ると、革張りのソファに座り紅茶を飲んでいる暁春が顔を上げた。 彼はすでにスーツに着替えており、髪もジェルで整えていた。 暁春は優希を見た瞬間目を見開き、無言で立ち上がる。 「どうかしら?」 反応がないことに心配になった優希が小声で聞くと、暁春は唇を舐め「とても綺麗だ …」と言った。 掠れた声が彼の熱を伝えてきたのか、優希の頬も熱くなる。 優希が照れて下を向くと、突然暁春が彼女を抱き寄せた。 「結婚してほしい。」 抱き寄せられたことに驚いていた優希はその言葉に動きを止めた。 「…何言ってるの?」 眉を寄せた優希の顔に我に帰った暁春は、しかしすぐに何かを考えると、抱きしめる力を強め言った。 「綺麗なゆうちゃんを見たら、誰にも取られたくないって思ったんです。今すぐじゃなくていいので、俺にチャンスをくれませんか?」 押し付けられた彼の体の変化に驚いた優希は強く腕を押すと、足をもつれさせながら後ろに下がった。 「…からかわないで。」 「本気ですよ。あなたに意識してもらいたいのはそういうことです。本当はパーティの後に話そうと思っていたんですが…。」 「なんで…。」 「ああ、もうこんな時間。続きはパーティの後で話しましょう。」 優希の言葉を遮り腕時計を見て言った暁春は、優しく腕を差し出した。 困惑したままの優希は少し躊躇した後、そっと自分の手をのせた。 車内でも何度か優希はその話をしようとしたが、意味深に微笑まれ会話にならず唇を噛み締めた。 「それでは、俺は先に会場に入りますね。ゆうちゃんが好きそ
last updateLast Updated : 2026-02-27
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46話 プロポーズ

顔から胸まで真っ赤になった優希に満足したのか、クスリと笑うと手を離した。 「俺の態度は、あなたを思うが故だと思ってください。怖がられたくない、好きになって欲しい。そんな感情です。」 「だから、結婚して欲しいって言葉もからかいじゃないんです。無意識に口に出てました。」 熱烈な愛の言葉に悪い気はしないが、優希には素直に受け入れられない理由もあった。 熱くなった顔を押さえながら彼女は聞いた。 「私たちが最後にあったのは、私が12歳で、あなたはたしか7歳だったわ。10年以上会ってなくて、お互い成長して会ったのはこの間が初めてよ。それなのに突然好きだなんて…。」 「…子供の頃から俺はゆうちゃんが好きでしたよ。当時、クラスの好きな男子の話を聞くのがすごく嫌でした。」 「やっと大人になって再会出来たんですから、変な駆け引きはしたくないです。」 まっすぐ見つめられ、優希は目を逸らす。 酔いはいつの間にか醒めてしまい、先ほどのようにズケズケと言えなくなってしまった。 「…あなたのことはかっこいいと思うけど、男性として好きかと言われると…。それに、おばさまも井竜家の人たちも、私のことを認めないわ。それだけの事をしでかしたから当然だけど…。」 暁春は優希の両手を握ると、真剣な表情で言い聞かせるように言う。 「たしかに、当時俺と母さんはとても傷ついた。恨みもした。でもゆうちゃんが好きな気持ちは消えなかったんだ。あなたが欲しくて気が狂いそうになる。」 「…井竜家の皆のことなら心配ないです。おじいさんには既に相談していますし、誰にも文句は言わせません。」 暁春は目を伏せると声のトーンを落とした。 「おばあさんから聞いてます。あれからゆうちゃんは人と距離を置いてると。母さんのことが知られて、親しい人から失望の目で見られるのが怖いと。」 「俺ならゆうちゃんの過ちを知って
last updateLast Updated : 2026-02-28
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47話 付き合ってたの?

あのホテルではあんなに真剣に愛を語っていたのにと、最近の暁春を思い出すと優希の表情が陰る。 カップを大きく仰ぎ飲み、空にするとため息をつきながら椅子を立つ。 1時間ほど座って痛む腰を伸ばしながら部屋の中を片付けていく。 毎日掃除をしているので散らかっていないが、専業主婦の仕事としてきっちりこなしていった。 その晩、暁春が帰ってきたのは夜の7時だった。 ちょうど準備が出来た時で、綺麗に盛り付けられた天ぷらを見た暁春は顔を輝かせながら着替えに行った。 食事は穏やかな雰囲気で進み、最後のデザートとしてアイスを食べている時に優希は聞いた。 「…ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど、」 優希の真剣な声に暁春の手が止まり、顔を向ける。 「有美ちゃんと暁春って、昔付き合っていたのかしら…?」 それを聞いた瞬間暁春の顔から笑みが消えた。 「……誰かに何か聞いたんですか?」 今度は優希の顔が強ばった。 「それは…、付き合っていたのを認めるってこと?」 「…たしかに若い頃付き合ってました。」 予想はしていたが、実際に認められると頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。 「でも今は何もないです。急にどうしたんですか?」 「…前から気にはなっていたの。家が隣だし、お父さんとも付き合いがあるでしょう?私と同じように仲良くしてたのかなって、そうだったら思春期とか…気にならなかったのかなって…。」 老夫人に迷惑がかかりそうで、昨日の画像のことと老夫人の慌てぶりで疑問を持ったとは言えなかった。 「ゆうちゃんの予想通り、俺が中学に入る頃からよく遊ぶようになり、有美ちゃんが高校に入る頃に付き合いだしました。」 三滝秘書ではなく「有美ち
last updateLast Updated : 2026-03-01
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48話 へそを曲げた

お湯が溜まるまでそのままその場に留まり、寝室に着替えを取りに行こうと浴室を出た。 ダイニングを通りかかった時何の物音もしなかったので、そっと覗いてみる。 既に暁春は席を立っており、ダイニングテーブルの上は綺麗に片付けられていた。 キッチンの方もお皿は洗って食器棚に戻されている。 階段を上がると書斎でパソコンを叩く音がした。 いつもならコーヒーを持っていくが、彼女の気持ちを考慮する素振りすら見せなかった暁春にすっきりしない感情が残っていたので、そのまま寝室へ入っていく。 子供じみているとわかっていても今は聞き分けの良い妻ではいられなかった。 寝室のクローゼットから下着とパジャマを取り、暁春と顔を合わせないよう静かに浴室へ戻った。 服を脱ぐと、胸のあたりがまた赤くなっていることに気づき、いつ掻いたのかも記憶にない優希は心配になった。 (痒みを感じた覚えは無いけど…アレルギーかしら。) 熱いシャワーを浴びるとヒリヒリと痛み、顔をしかめる。 昨日よりも痛みが強く感じた。 美を追求しているわけではないが、痕が残るのは女性として嫌だったので、お風呂から上がると念入りに額と胸元に薬を塗る。 (今日は彼と一緒に寝たくない…。) そう思った優希は無意識にため息をつく。 とりあえず書斎の前に来た優
last updateLast Updated : 2026-03-02
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49話 豹変

複数あるゲストルームを片っ端から開けていき、最後の突き当たりの部屋の前で立ち止まった。 ゆっくり扉を開けると、ベッドの上に丸くなって寝ている優希が目に入る。 その姿に小さく息を吐いた暁春は音を立てずにベッドに近寄っていく。 カーテンを開けた窓から春の月が顔を覗かせ、朧気な光で優希の寝顔を照らし出していた。 暁春は優希が布団をかけずに寝ているのに気づくと眉をひそめ、ベッドの端に寄せられていた布団をかける。丸まっていた体が緩んでいくのが布団の上からでもわかり、引き結ばれていた暁春の口が柔らかくなった。 しばらくその寝顔を見ていた暁春だったが、徐に布団の端を持ち上げると、自身の体を中に潜り込ませた。 優希は温まった布団に冷えた物体が入ってきたことに顔を顰めたが、背中を包むように体を寄せてきた暁春の体温に再び穏やかな寝顔になった。 優希を抱きしめた暁春は、彼女のうなじに額を当て目を瞑る。 優希のシャンプーの匂いと、彼女自身の甘く優しい匂いを感じながら、いつしか彼も深い寝息を立てていた。 - 自然光に意識を浮上させた優希が真っ先に感じた違和感は、体の拘束感だった。 寝起きのぼんやりとした頭で横を見ると、寝入った時にはいなかったはずの暁春がいた。 彼女の腰に腕を回してしがみ付いている彼は、珍しくまだ寝ているようである。 驚きで眠気も飛んだ優希は、暁春の美しい寝顔を観察する。 長いまつ毛が時々震えているのは、夢を見ているのだろうか。 寝顔を見るのに飽きると、
last updateLast Updated : 2026-03-04
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50話 知って欲しかった

「俺を裏切ったらどうなるか想像も出来ないのか。」 射殺すような視線で睨みつけてくる暁春の顔を直視出来ず、優希は青くなった顔をうつむかせる。 再会してからずっと優希が大事だと愛を語ってきた彼の口から、その彼女を馬鹿にしたような言葉を吐き出されたことに動揺していた。 「あいつと連絡を取り合うのは許さない。もしそんなことをしたら、あの男は二度と日の下を歩けないだろう。」 「そしてお前は…一生後悔することになる。」 そう吐き捨てると、暁春は背を向けてキッチンを出ていった。 着替えに行ったのだろう、足音は階段を登っていた。 暁春の足音が遠ざかると、優希の足の力が抜け、くずれるように床に座り込んだ。 彼女の顔は血の気が引いて真っ白く、手は見てわかるほど震えていた。 昨日の病室でも彼は荒ぶっていたが、今ほどではなかった。 少なくても、彼女に向けて暴力的ではなかったのだから。 先ほどの拳を叩きつけた音と低い声に暁春の怒りの強さを感じ、それほどの怒りの熱量を彼女に向けたのだと思うと、優希の胸に深い悲しみが溢れ出す。 それは昔、父の隆一に失望と嫌悪の目を向けられた時の絶望感にも似ており、優希は胸を押さえた。 その時階段を降りてくる足音が聞こえた。 優希は息を殺して床に零れた豆乳スープを見る。 暁春がキッチンを去る時に、コンロに置いていた鍋の持ち手にぶつかり落ちたのだ。 暁春は足早に通り過ぎると玄関から出ていった。 その音を聞いてようやく優希は大きく息を吸い、顔を上げた。 鼻を啜りながら震える足で立ち上がると、掃除用具を手に取り
last updateLast Updated : 2026-03-05
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