All Chapters of 白月光は妹?私が死んでから元夫は泣いて後悔しました: Chapter 61 - Chapter 70

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61話

優希は助けを求めるように暁春を見るが、彼は靴を履き替える有美を静かに見ているだけで、突然玄関に入ってきたことに驚いている様子は無かった。 (それもそうよ、あのスリッパはさっき暁春が出したんだわ。) 今晩はお腹の子のことを含めた優希と暁春のこれからについて話すはずなのにと、優希は眉をひそめる。 その気持ちを感じ取ったのか、暁春は優希を見ると申し訳なさそうに眉を下げて言った。 「ゆうちゃんすみません。有美ちゃんのアパートが上階からの漏水で住めなくなってしまったので、しばらく我が家に滞在してもらおうかと思います。」 寝耳に水な話に優希は慌てる。 「なんでそんなことを急に言うの!?」 「俺も本邸を出る時に知ったんです。大丈夫、ゲストルームは沢山ありますし、ゆうちゃんがきちんと掃除してくれてるの知ってるので問題ないでしょう。」 「そういう問題じゃっ…。」 思わず声を荒らげそうになった優希だが、暁春の隣で顔を俯かせた有美が目に入り言葉を飲み込んだ。 「…とりあえず、今日はもう遅いから有美ちゃんにはゲストルームに泊まってもらうけど、明日以降のことはきちんと話し合いましょう。」 優希がそう言うと、有美は頭を下げて「ありがとうございます!」と言った。 「ありがとう、ゆうちゃん。さ、有美ちゃん、リビングはこっちだ。」 優希に微笑んだ暁春は有美をリビングに案内する。 玄関には眉を寄せて唇を噛み締めた優希だけが残された。 (もう私の前でも普通に三滝秘書じゃなくて有美ちゃんって呼ぶのね…。) 付き合っていたと認めてから有美の呼び名が変化していたことには気づいていたが、有美もそれを自然に受け入れているのを見ると、優希の胸が苦しくなった。 2人を見ていたくないと言ってもいつまでも玄関にいる
last updateLast Updated : 2026-03-18
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62話 苛立つ

「営業5課の成績が落ちているから、2週間以内に原因と対策を提出させて。あと、1週間分の行動記録をシステムから抽出させておいて。」 「東部の開発プロジェクトの入札会に参加が予想される会社をリストアップして、それぞれの傾向をまとめたから、不動産部門の担当者に渡して確認するよう伝えて。」 「第二病院で患者から金品を受け取った医師がいると報告が入っている。会社の調査部門に調査依頼しておいてくれ。」 聞こえてきた内容はいたって真面目なもので、優希は無意識に殺していた息を吐いた。 業務指示を聞いている有美も「はい」と真剣な声で返答しており、優希は考えすぎかと頬を搔く。 リビングに降りると、暁春と有美はソファに隣合って座り、暁春はノートパソコンを、有美は手帳を見ていた。 隣合っていることに引っ掛かりを感じるも、真面目に仕事の話をしていることに優希は安堵し、かける声も落ち着いたものになった。 「有美ちゃん、お風呂の準備が出来たから、先に入っちゃって。」 振り向いた有美は礼を言うと浴室へ歩いていった。 その背中を見送ると優希は無言でソファに近づき、真剣な表情でパソコンを睨む暁春の横に立つ。 顔を上げた暁春と視線がぶつかった。 「暁春、時間が惜しいから今話すわね。」 暁春が口を開く前に優希が話し始める。 「有美ちゃんのこと。さっきも言ったけど、宿泊を許可できるのは今晩だけ。明日以降は認められないわ。彼女の彼氏さんのとこ
last updateLast Updated : 2026-03-19
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63話 離婚がチラつく

優希はできるだけ普通の声を努めながら聞いた。 受け取ったパジャマに袖を通しながら、有美は少し考えると首を振る。 「言いましたよ。でも駄目って断られちゃいました…。」 「ホテルに仮住まいすることだってできるんじゃない?交際相手だった既婚者の家に泊まるなんて…、常識的に、あの…、好まれないんじゃないかしら…。」 「あ、お姉さん知ってるんですね。んー、社長がいいと言ったからお言葉に甘えちゃいます。」普通の人なら歓迎されていないことを察するだろうと期待したが、有美は期待を裏切りウインクをした。 何もない時ならあざとくも可愛いと思うだろう仕草に、優希は気持ち悪さを感じて青ざめる。 「お風呂ありがとうございました。温かいうちにお姉さんも入ってください!」 顔色が悪くなった優希を気にすることなく、有美は優希の手を取り中に入れると、無邪気に笑いかけた。 「では、ゲストルームお借りしますね。」 そう言うと、パジャマで隠れなかった首の赤い跡を恥じらう様子もなく晒しながら、有美は機嫌よく出ていく。 優希は呆然と閉じる扉を見つめながら考えた。 上司と部下はたとえ異性でもそこまで面倒を見るものなのか? 単に2人が元恋人同士だから? それは…今も情があるということでは? いくら考えても真実は優希が知り得ないものなので分からず、しかしその疑問を無視することもできず、優希の胸にざわざわとした気持ち悪さが広がった。 ゆっくり湯船に浸かる元気もなく、簡単にシャワーを済ませた優希はリビングへ行くことなく寝室へ上がり、ベッドに横になる。ひんやりとしたシーツにシャワーで温まりきらなかった手足が冷えていく。 (…彼は仕事をしていたから遅くなるかしら。) 疲れた体は休みたがっているが、
last updateLast Updated : 2026-03-19
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64話 泣く

"こんばんは、旦那さんが僕を嫌がってるようだから連絡来ないと思ってたよ。" 優希にとっての将生は、彼女を安心させてくれる絶対的な存在だった。 だからなのか、彼のメッセージを見た途端、優希の目から涙が溢れ出た。 優希自身も困惑しているが、昔迷子になった彼女を隆一が探し出してくれた時の気持ちに似ていると感じる。 (ああ、私不安だったのね…。) ティッシュで涙を拭きながら鼻を啜る。 本邸での出来事、有美の訪問と暁春の態度は、優希自信が思っているよりも彼女を精神的に追い詰めていたようだ。 ひとしきり泣くとスッキリとした気持ちになり、優希は携帯で返事を打っていく。 "入院中は迷惑をかけて本当にごめんなさい。殴られたところは大丈夫?" "大丈夫。たまに陣痛中の妊婦さんが振り回す腕に当たることもあるから、殴られることには慣れてるよ。" 優希の顔にくすりと笑みが浮かぶ。 優希の傷のことや体調の変化など、2、3回メッセージのやり取りをしてから、優希は本題のメッセージを送った。 "私ね、子育てしながら働こうと思ってるの。調べたら、看護師には子育て中の母親が多いらしくて、現役の看護師の方に話を聞きたいんだけど…、入院中に配膳してくれた佐藤 和珠さんに話を聞くことはできるかしら。彼女小さいお子さんがいるみたいだから…。" "うーん、優希ちゃんは国家資格取るところからだから、2~3年看護学校に行く必要があるよ。正直、社会人から看護師を目指す人って、私生活でやむを得ない事情があって…って人が多いんだ。井竜社長夫人の優希ちゃんならそんな心配ないだろうし、あまりおすすめはしないかな。どうしても医療関係っていうなら、医療事務とかはどう?"
last updateLast Updated : 2026-03-20
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65話 カッター

その目に拒絶の色は見えず、優希は少し期待を込めて暁春の名前を呼んだ。 「暁春…。」 コンコン その時扉をノックする音が響き、優希と暁春は同時に顔を向けた。 今晩この家にいるのは彼ら2人の他には1人しかおらず、その人を思い浮かべて優希は眉をひそめる。 (こんな時間に?) 時刻はもうすぐ深夜1時となる。 家族同士でも訪問されれば顔をしかめる時間に、部下が上司夫婦の寝室を訪れることの非常識さ。 優希は思わず暁春の顔を見た。 「…社長、起きてますか?今よろしいでしょうか…。」 閉じた扉の向こうから聞こえるくぐもった声に、暁春は嫌な顔することなく立ち上がって扉を開けた。 「社長っ!」 有美が暁春の胸に飛び込むのが見え、優希は一瞬呼吸することを忘れた。 暁春の両手は震える有美の肩に触れ、その横顔は心配しているように見える。 「社長…、ベッドに入ろうとしたら、こんなものが中に…。」 有美が暁春の胸から顔を話し、片手を開いて見せた。 涙の浮かぶ目で暁春を見上げる有美は、男性の庇護欲を刺激しそうな弱弱しさを纏っている。 ベッドを準備したのは自分だったため、優希は何が起こったのかと立ち上がったが、悲しげに見てくる有美と、凍えるほどの冷たい目で見てくる暁春に固まった。 良くないことが起こっていると胸がざわつく感覚に優希は戸惑う。 「…ゆうちゃん、こんなものをベッドに入れるなんて…。」 冷めた声
last updateLast Updated : 2026-03-21
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66話 楽しみだった休日

(…有美ちゃんのアパートに当面の服を取りに行くって言ってたわね…。) 数少ない暁春の休みの日。 普段一緒にいられる時間が少ないからと、その日は片時も離れずに過ごすのが定番だった。 お昼までベッドの上で寛ぎ、昼食の後は庭を散歩したり、隣合って本を読んだり。 たとえ急ぎの仕事が発生しても、仕事をする暁春の近くで本を読んで過ごしていた。 優希は2人で何かをするのが好きだったが、実は仕事をする暁春を見ているのも好きだった。 伏せたまつ毛の下でパソコンの文字を追う目が禁欲的で、しかし時折薄い唇を舐める舌先は猛烈に色気を発していて、時間に余裕がある休日だからこそ見れるそんな光景に赤くなる顔を本で隠しながら優希は何度も盗み見ていた。 そんな穏やかな時間が大好きで、優希は不定期に訪れる休みの日を楽しみにしていた。 (その休みを今回は他の女性に割くのね…。) 暁春が意識を向けてこないように布団の中で気配を殺していた優希は、鼻を啜りそうになるのをこらえる。 きっと暁春は有美に再び心を奪われ、彼女との再婚を意識しているのかもしれない。 そう思うと優希の胸が締め付けられたように苦しくなり、涙が溢れてきた。 離婚がチラついたと言ってもそれは優希の中だけで、実際に相手からもそれを望まれているという事実に直面すると、優希を深い悲しみが襲った。 「…ゆうちゃん、冷蔵庫にサンドイッチを入れてあります。…お腹の子たちのためにも食べてくださいね。」 突然暁春が声をかけてきたことに驚き息を呑む。 昨日のことなど無かったかのようにいつも通りな彼の真意が分からず、優希は眉をひそめた。 優希の返答を待つように少しだけ沈黙が流れるが、優希が返事をする気がないと察したのか、そのまま部屋を出て行く音がした。 優希は少し待って布団から顔を出して耳を立てる。 微かに車のドアを閉める音がして、静かにベッドから降りて寝室の扉を開けた。 家の中は人の気配がなく静かで、ようやく優希は肺に溜まった息を吐き出した。 手を洗い、血の着いたパジャマとシーツをゴミ袋にまとめて使っていないゲストルームに置く。 何となく見られるのが嫌で、ゴミ収集の日まで隠しておこうと思ったのだ。 外出する気もないのでスウェットワンピースに着替えてキッチンに行く。 冷
last updateLast Updated : 2026-03-22
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67話 予兆

文面から老夫人がとても心配してくれていることが分かり、優希は胸が温かくなったが、どう返答するか迷った。 (有美ちゃんが泊まりに来てそれどころじゃなかったなんて言えないわね…。) 言えばきっと老夫人は叱りつけに来るだろ。 しかしそれは逆に優希と暁春の間にしこりが残ることになりそうだ。 優希はそう考えると本当のことは言わないことにした。 "話せましたよ。子供を気遣ってくれてます!" 簡潔だが嘘は伝えていない。 たしかに暁春はコンドームのことは責めても子供を否定することは言わなかった。 むしろ何度か妊娠を気遣う言葉を言っていたので、産むことは認めているのだと優希は思っていた。 "良かった、悪阻はまだ大丈夫?なんかあったらすぐに言ってちょうだい!" その後は他愛ないやり取りを数回して携帯を置いた。 今日は天気も悪く家の中が薄暗かった。 何気なく周りを見渡すと、静かさも加わって住み慣れた家なのに優希はなぜか不気味さを感じる。 背筋を震わせて急いでテレビをつけた。 - 本邸のリビングで、老夫人は険しい顔で携帯を見ていた。 妊娠を知った暁春が帰宅後にどのような反応をしたのか気になって優希にメッセージを送った老夫人は、返ってきた返信を読んで安心した。 しかし詳細を省いた簡潔な返信は、嘘では無いが重要なことも老夫人に伝えていないという印象を与えるものだった。 (…あの馬鹿な男はまたゆうちゃんを困らせているのかしら。) 昨晩の食事会のように。 老夫人は昨晩の食事会での暁春を思い出して額に手を当て項垂れる。 有美の訪問は桜が招待したと言うからまだ暁春のことは大目に見るが、しかしその後に有美を隣に座らせた
last updateLast Updated : 2026-03-23
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68話 ワイドショー

見下した目で言い放った桃子は、老夫人の背中で困惑の表情をしている桜を睨みつけると玄関から出て行った。 「桃子。」 老夫人は鋭い声で呼びかけた。 母娘の情を感じさせない冷たい声に桃子は気怠げに振り返る。 「もう代替わりが近い女主人の座に価値はないわよ。」 その言葉に桃子の口元は大きく弧を描いた。 山なりに細められた目元と真っ赤な唇が、ホラー映画に出てくる化け物のような不気味さを醸し出している。 「私はあんたを引きずり下ろしたいだけなの。まぁ、結局その代替わり先の若夫婦も、奥様が変わりそうだけどね。」 「ああ、そうだ、テレビって面白いのよ。古臭いあんたにも是非見て欲しいわ。」桃子は突然話題を変えると楽しげに言い、車に乗り去っていった。 それの後を追うように引越し業者のトラックも発車する。 車が遠ざかると、途端に玄関ホールはいつもの静けさを取り戻した。 「…あの、おばあちゃん。ごめんなさい…。」 いつも明るく朗らかな祖母の深い怒りを2日連続で感じたことで、桜は怖くなりしおらしく謝る。 「あなたが謝るのはお義姉さんのゆうちゃんでしょう。もし同じことをお友達にしたら、次の日からあなたの周りには誰もいなくなるでしょうね。」
last updateLast Updated : 2026-03-25
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69話 決定的な写真

司会の男性の興奮気味な声が、時間が止まったように静かなリビングに響く。 井竜の記事は必ず事前に広報部に報告が入り、会社側が問題がないと判断したものだけが世間に出される。 熱愛スクープは特に慎重で、内容によっては株価に影響を与えるため基本的に承認していなかった。 会社の経営に関わっていなくとも基本的な仕組みは教わっていた老夫人は、承認権があるのは会長、社長、副社長の3役職だけだと思い出す。 去り際の桃子の発言から彼女が承認をしたのだと気づき、老夫人は怒りで心臓が激しくなるのを感じた。 心臓に負担をかけないように深呼吸をするも、耳に響く鼓動音は一向に治まらない。 それどころか優希を裏切った暁春たちへの怒りも合わさり、とうとう呼吸も乱れ始めると心臓を握りつぶされているような圧迫感に襲われる。 「奥様、お昼ご飯が用意出来ましたよ。」 その時リビングに入ってきた美代子が見たのは、胸を押えて体を折り曲げた老夫人の姿だった。 美代子は慌てて近寄り、常備している心臓の薬を飲ませると救急車を呼ぶよう他の使用人に叫んだ。 本邸内は一気に騒然とし出した。 的確に指示を出す美代子の腕を、老夫人の皺が刻まれた手が掴む。 苦しさで力の加減ができていないその手を外すことをせず、美代子は何か言いたそうに口を開ける老夫人の真っ青な顔に耳を寄せた。 「…っゆうちゃ、に…あのテ…ビを見、せないよ、うに…」
last updateLast Updated : 2026-03-25
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70話 可愛い家

将生と和珠が迎えに来て、和珠の自宅にお邪魔することになった。 道中、将生と和珠は車の後部座席で力なく俯いた優希に無理に話しかけることをせず、時折さり気なく確認するだけでそっとしておいた。 その気遣いに心の中で感謝しつつもそれを表に出す気持ちの余裕がなく、優希の頭の中にはキス写真がただぐるぐる回っていた。 過去の暁春の言動や有美との距離感の異常さを思い返しては、何故気づかなかったのかと自問した。 いつからなのか、やはり若い子の方がいいのか、自分のことは本当に好きだったのか…。 答えの出ない問に気持ち悪さを感じた頃、着きましたという和珠の声にようやく顔を上げた。 和珠の家は小さいながらも庭付きの一軒家で、裏には海が見える可愛らしくてドールハウスのような家だった。 庭には小さい家庭菜園や滑り台があり、優希が憧れた温かい家庭のようだった。 吹き抜けのリビングに通されると、至る所に子供のいる形跡が見られ、特に壁に貼られた「ママだいすき」と書かれた絵には何故か優希の目の奥が熱くなる。 「息子は近くの実家に預けてきました。」 キッチンから飲み物を持ってきた和珠が言った。 部屋の中を不躾に見ていたことに謝罪しながらソファに座った優希は置かれたお茶を啜る。 レモンの爽やかな香りが鼻を通り、スッキリとした味が鬱鬱とした気持ちを和らげてくれた。 温かさが喉を降りていくと思わず優希は息を吐く。
last updateLast Updated : 2026-03-26
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