颯太は黙って、ここに来たことだけをひたすら後悔していた。使用人がテーブルに飲み物やおつまみを並べると、遅れて健吾が現れた。「どうやら、全員揃ったようですね」綾は少しも気を抜かず、警戒しながら健吾をじっと見ていた。湊はグラスを揺らしながら言った。「青木社長、わざわざ我々を呼んだのは、ただお酒を飲むためじゃないでしょう?」「もちろん、テニスのお誘いですよ」健吾が手を叩くと、使用人がテニスボールとラケットを持ってきた。湊は鼻で笑った。「青木社長、俺を誘うなんて、人選ミスじゃないですか?」「中野社長は、特別審判員ですよ」健吾は屈んで湊の脚を軽く叩き、ラケットを1本、綾に押し付けた。「中野社長の代わりに、奥さんにお願いしましょう」「すみませんが、今日は動きやすい服装ではないので、私もちょっと」綾は健吾の魂胆が分からなかったけど、関わらないのが一番だと思った。「ご心配なく。ちゃんと用意させてあるよ」そう言いながら、健吾は颯太の肩に手を置いた。「よく考えてから断ってくれよ」綾は歯を食いしばった。また仕事のことで脅されているのだ。湊が淡々と言った。「せっかくのお誘いだ。行っておいで。青木社長に実力を見せてやるといい」それはつまり、健吾と同じチームになるな、ということだ。「さあ、今日は特別に3対3でいきましょう」「じゃあ、私は青木社長とチームを組みます」凪はラケットを受け取ると、綾に笑いかけた。「綾、安心して。手加減してあげるから」明里が綾の隣に立った。「私はもちろん、綾と同じチームよ」わけも分からず誘われて、派手なパーティーか何かだと思っていたのに。まさかスポーツ大会だったなんて。颯太はラケットを力強く一振りした。「自分も腕には自信がありますから。女性二人の足を引っ張ることはないと思います」チーム分けも決まり、それぞれ着替えに向かった。「中野社長、審判をお願いしますね」健吾は湊に一番近いサイドに立った。それを見て、綾は健吾の正面に陣取った。最初のうちは普通のラリーが続き、互角の戦いだった。しかし、ボールが健吾のところに飛んだときだ。彼がラケットを振ると、ボールは奇妙な角度で飛んでいった。ボールはまっすぐ湊のいる場所に向かって飛んでいく。綾が素早いスマッシュで、かろ
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