でも綾は大人になり、あまりにも多くのことを経験して、心に空いた穴も広がっていった。お正月のイベントでは、もうその穴を埋めることはできなかった。特にここ数年、人生の大きな変化が何度かあったからだ。賑やかな場にいればいるほど、心はかえって静まり返った。その後、湊と別れて健吾と再婚したことで、ようやく本当の賑わいと温もりを知ることができた。それも残念なことに……せっかくの良い日に、これ以上考えるのはやめにした。綾は考えを振り払い、幸子に笑いかけて言った。「そうね、山下さん。賑やかにお正月を迎えよう。湊にも喜んでもらいたいし」それに、子供たちにとっても生まれて初めてのお正月だ。ちゃんとした記念にしてあげないと、せっかくのカメラも無駄になっちゃう幸子は頷くと、買い物リストを手に準備に取り掛かった。湊と綾は本来あまり賑やかなことを好む性格ではないが、子供たちはちがう。寂しい思いはさせられない。ビアンカは大晦日の午前まで中野家の屋敷にいた。青木家の人が迎えに来たとき、帰りたくないと言って駄々をこねた。綾は優しく諭した。「おじいさんたち二人でお正月を過ごすのは寂しいでしょ?だから帰って一緒に過ごしてあげてね」ビアンカは子供のような心根だが、恩義を感じることはできる。心残りではあったが、綾から貰ったプレゼントを抱えて、何度も振り返りながら車に乗り込んだ。綾は門のそばで手を振り、ビアンカを見送った。車が遠ざかり、角を曲がって姿が見えなくなるまで、目を逸らさなかった。家に戻ると、明里から電話があった。「綾、うちのお母さんが綾と子供たちを家に招待したいって言ってるの」綾は申し訳なさそうに断った。「明日、私が二人を連れてそっちに挨拶に行くわ。今夜はお邪魔しちゃ悪いから」「分かったわ。明日、お母さんに美味しいものを作らせるね」明里は、綾が一人きりの湊を放っておけないのだと察し、無理には誘わなかった。綾は電話を切ると、後ろに湊が立っているのに気づいた。湊は穏やかな口調で言った。「気にしなくていいよ。後藤家は賑やかだから、子供たちを連れて行ってあげて」「自分の家があるのに、お正月に人の家に行けるわけないでしょ?」綾は呆れたように言い捨て、湊の横を通り過ぎた。「ボーッとしてないで、『伯父さん』でしょ!
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