「何がおかしいんですか?」ソフィアが問い詰める。颯太は少し考えてから、真面目に答えた。「臆病者の自分がおかしいからです!」ソフィアは口角を上げ、視線を真っ直ぐ前に据えたまま、バイクのアクセルを全開にした。強い風が正面から吹き抜ける。金色の巻き髪がバサリと颯太の顔を叩き、髪の隙間からかすかに香りが漂った。「家はどこですか?送ってあげます」ソフィアが聞いた。颯太の声が風に溶けた。「ソフィアさんが連れて行ってくれる場所なら、どこでもいいですよ」ソフィアは軽く笑った。「颯太さんがそう言ったんですからね」彼女は迷わずハンドルを切り、エンジンを唸らせながら郊外へ向かった。十数分もすれば、街の灯りは遠くに消え、あたりは深い闇に包まれた。民家は一つもなく、ただヘッドライトの明かりだけが、前方の暗闇を切り開いていく。ソフィアは背後の颯太が今も荒い息をしているのを感じていた。臆病な人だ、と内心で思う。けれどそんな颯太が、黙って背後に座り、自分という導き手と共に果てしない闇の向こうへ走り去ろうとしている。その瞬間、ソフィアはふと自由の気配を感じた。健吾と一緒にいた時には、一度も味わったことのないような自由。これまでは、いつも媚びへつらい、相手に合わせて自分を見失っていた。でも今は、何をしても許されるような気がする。背後の男は震えるほど怖がっているのに、迷うことなく自分に従い、一緒に暗闇へ飛び込んでくれるのだから。颯太はソフィアの心の中までは分からない。恐怖など微塵もなく、期待で胸がいっぱいだった。心臓が高鳴るのは、ソフィアにこうしてしっかりとしがみつき、その背中を胸で感じながら、未知の場所へ共に向かっているから。そのぬくもりを感じるたび、全身の細胞が歓びに震えているようだった。30分後、バイクは海辺に止まった。打ち寄せる波の音が暗闇に響く。今夜の月は隠れているが、それでも微かな銀光が海面をゆらゆらと照らしていた。ソフィアはヘルメットを脱いで適当に置き、髪をなびかせて海へと走り出した。岸に着くと、勢いよく足を蹴り上げ、ヒールを砂浜に放り出した。裸足で冷たい海へ入り、波にドレスの裾を濡らす。颯太はそのすぐそばで立ち止まる。昏い月の下、高身長で美しいソフィアが裾をなびかせ、白い足を海水に沈めながらさらに深み
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