こんなに冷え込んでいるのに、冷や汗を流しながら強がるなんて。綾は心の中で何とも言えない苛立ちがこみ上げてきた。勢いよく健吾を地面から引きずり起こす。雑な動きだったが、相手がふらついて倒れそうになると、思わずその腕を支えていた。綾は彼を抱えるようにして階段を下り、後部座席に押し込んでからドアを閉めた。車を発進させたとき、後ろからふいに笑い声が聞こえた。「何を笑ってるの?」綾が尋ねた。健吾はすぐには答えず、シートにもたれかかって、険しい顔をした綾の横顔をじっと見つめていた。綾は怒りで顔をこわばらせ、頬をうっすらと赤く染めていた。それが妙に可愛らしく見えた。健吾はゆっくりと口を開く。「心の中には、まだ俺がいるんだね」アルコールで胃が焼け付くように痛むけれど、今は不思議と耐えられない苦しみではなかった。「勘違いしないで。たとえ路端で酔い潰れている見知らぬ人だとしても、私は病院へ連れて行ったわ」綾はスピードを上げ、近くの病院へと急いだ。健吾は元々酒に強いはずだ。けれど酒に強い人ほど、トラブルが起きると危ないものだ。綾は健吾を救急外来に運び込み、診察をした医師に胃洗浄と入院手続きが必要だと告げられた。すべてが終わる頃には、夜が明けていた。ようやく一息ついた綾は、病室の椅子に座り、彰人に状況を報告するメールを送った。送信したところで顔を上げると、病床の健吾と目が合った。ベッドの上の男はひどく弱っているはずなのに、その瞳はやけに明るく、隠しきれない笑みを湛えていた。綾が言葉を発する前に、健吾が観念したようにかすれた声で呟く。「ごめん、次は気をつける。ありがとう」自分がわがままなことくらい分かっている。けれど綾が自分のために心配してくれるのなら、たとえそれがほんの少しだとしても、今夜入院する価値は十分にあった。綾は静かに健吾を見つめ、冷淡に言い放った。「健吾、私がバーに迎えに行って病院に連れてきたのは、あなたを想っているからじゃないわ。店主から私の携帯に連絡があって、迷惑をかけたくなかっただけ。病院まで連れてきたのも、人として当たり前のことをしたまでよ。あの寒さなら、そのまま外で凍え死んでいたかもしれないでしょ?」彼女は少しの間を置いて、さらに冷たい声で続けた。「二度とこんなことで私を試さないで。無意
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