実は、湊が離れることを選んだことで、誠自身も心の奥底では少し軽くなっていた。この弟を送り出すことは、まるで自分自身の肩の荷が下りるかのように感じられたのだ。湊は「ああ」と答え、礼を言った。それがたとえ大規模な計算の果てだとしても、誠に対して感謝の念を抱いていたのは本心だった。深夜、達也が病室に入ってきて、湊を呼び起こした。「行くぞ」達也はあらかじめ用意しておいた医療用ガウンとマスクを手渡し、「例の患者を療養所に送る間、俺のそばについていろ」と言った。湊は、達也が自分のためにわざと旅程を変更したのだとわかっていた。どのような言葉を並べても、この感謝の気持ちを伝えることはできない。自分にできる唯一のことは、今後は二度と達也に関わらないことだろう。湊は黙って医療用ガウンをまとい、マスクを着けると、達也の後を追ってヘリに乗り込んだ。ヘリが離陸し、夜の街は静かに遠ざかっていった。湊は眼下に広がる暗い東都を見下ろしたが、不思議と名残惜しさはなかった。この街で自分を必要としてくれる人はもういない。残る瑞希や誠すらも、今はもう自分を必要としていなかったからだ。一瞬、胸を突き刺すような痛みを感じたが、それは綾のもとへ向かうという衝動によってすぐに覆い隠された。夜が明ける頃、ヘリは療養所に到着した。達也は例の重役と言葉を交わすと、そのまま湊を連れて外へ出た。療養所の外には、すでに一台の車が待機していた。車に乗り込む前、湊は達也を振り返った。柔らかな朝日が湊の目に降り注ぎ、平素は見せないような瑞々しい表情を浮かべていた。「ありがとう。これが最後だ、二度と会うことはない」達也は黙って湊を見つめ、車が見えなくなるまでそこに立ち尽くしていた。「達者でな」という言葉は喉の奥で詰まり、結局伝えることはできなかった。修羅の道へと向かう湊に、達者でなどと言えるはずがなかった。黄金の朝陽が雲を切り裂く頃、湊は埠頭にたどり着いた。車から降りてあらかじめ用意された漁船に飛び乗ると、甲板には目もくれず、魚の臭いが立ち込める船室の中へ消えた。狭苦しい隅でハンカチを口に当てていたが、鼓動は高鳴っていた。綾さえいるのなら、どれほど過酷で嫌な過程であったとしても、関係なかった。公海を漂う船上で、綾はいつものよう
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