ソフィアは片手でハンドルを握りながら、もう片方の手で湊に電話をかけた。「チェッコが綾さんを探しにI国に来ました。彼は諦めてないから、せいぜい気をつけてください」ソフィアの瞳からは先ほどまでの柔らかさが消え、氷のように冷えきっていた。電話の向こうで、湊はスマホを強く握り締め、冷たく言い放った。「生活物資さえ届ければ、あいつには一生、綾は見つかりません」ソフィアは唇を歪めたが、瞳に笑みはなかった。「安心してください。私は約束を破るような人間じゃないですから。あなたは自分の女をしっかり見張っておいてくださいね」「ありがとうございます」湊は電話を切ると、スマホを放り投げた。誠は眉をひそめて尋ねた。「何か問題でも?」湊はソフィアとの会話を伝え、真剣な面持ちで言った。「兄さんの言う通りだ。今は公海へ行くのは避けないとな。青木に隙を見せるわけにはいかない」健吾を恐れているわけではない。ただ、綾を誰の手にも渡したくなかっただけだ。もし東都であれほど厳しく制限されていなければ、ソフィアのような女と手を組む必要などなかったのだ。ソフィアは綾を嫌い、湊もまた、ソフィアという人間を心の底から嫌悪していた。この協力は、あくまで互いの利害が一致した結果に過ぎない。誠は湊の考えを見透かしたように言った。「騒ぎが収まれば、別のルートで物資を船へ運ぶ方法を探そう」湊は頷くと、ゆっくりと目を閉じた。頭の中は、綾の姿でいっぱいだった。綾は船の中でただじっとして、戻れない場所で、自分の帰りを待っている。湊はふと思い立ったように口を開いた。「兄さん、瑞希ちゃんも一緒に船へ送ってしまおう」瑞希がいれば、綾はしっかりと生活を送らざるを得ないし、寂しさに耐えかねることもないはずだ。誠は脈打つこめかみを押さえ、声を低くして言った。「綾さんに殺されたいのか?大人しくしていろ」もし子供たちにまで手を出せば、綾が救い出されたとき、真っ先に自分たちが警察へ突き出されるのは火を見るより明らかだった。湊は完全に狂っている。綾のことばかり考え、兄である自分のことなど微塵も考えていない。湊は返事をしなかったが、その考えを捨てたわけではなかった。近いうちに自分も船へ向かい、綾さえ承知すれば、瑞希と面会させてやればいい。そのときには3人で公
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