カフェを出ると、街はすっかり夕暮れに染まっていた。 十一月の空気は冷たく、頬に触れるたび、かすかに肌を引き締める。 ――まだ十八時前なのに。 そう思いながら歩いていると、自然と隣のれんさんの存在が意識に浮かび上がる。 昼間とは違う、影を含んだ横顔。 沈みかけた光に縁取られて、大人びて見えた。 こんな時間まで、男性と二人きりで過ごすのは初めてだった。 その事実に気づいた途端、胸がきゅっと縮む。 けれど、不思議と怖さはなく、代わりに心が浮き立つ。 ふと、視線を感じた気がして顔を向けると、れんさんと目が合った。 すぐに逸らしたはずなのに、その一瞬に、やさしさと、熱のようなものを感じてしまう。 「この先、夜景がきれいに見える場所がある。ベンチもあるし……行こうか」 それは提案というより、決められた流れを告げる声だった。 拒否されることを想定していない、静かな断定。 ――そういえば。 最初に電話をかけるときも、 「電話しない?」ではなく、「電話するか。」だった。 無愛想とも取れるその言い方が、なぜか心に引っかかる。 不思議な人だと思いながら、その距離感に、私はもう抗えなくなっていた。 小さく頷くと、二人は並んで歩き出す。 会話はほとんどない。 それなのに、沈黙は重くなく、むしろ心地よかった。 男性と一緒にいることが、こんなにも自然に感じられるなんて。 そんな感覚は、初めてだった。 歩くうちに、いつの間にか距離が縮まっていることに気づく。 歩調が揃うたび、れんさんの手が、私の手にかすかに触れた。 ――…
Last Updated : 2026-01-16 Read more