All Chapters of 殺し屋は愛に復讐を誓う。: Chapter 11 - Chapter 20

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■⑪

「……ありがとう」「梓咲、俺がお前を守ってやるよ」何を言ってるんだ、この男は……。守ってやるなんて捨てセリフ吐かれても、全然嬉しくない。「その元カレね……実は、春沼製薬ってところで働いてるの」そして私は、春沼製薬のことについて切り込むことにした。「……え? 春沼製薬?」その一言で、潮江の表情が変わったのが分かった。やっぱり……潮江は春沼製薬と何か関係がある?「うん。 でね、春沼製薬の社長宛に脅迫文が送られてきたらしくて……それで元カレが困ってるみたいでさ」「……そっか。 元カレだから、助けてあげたいって思ってるんだ?」「……でももう別れたし、もう関係ないよね」私のウソの表情を見て、潮江は私の髪を撫でてくる。「梓咲……俺なら梓咲をこんなふうに悩ませたりしないのに」「……潮江さん」うわあ……ベタなことしてくる。と内心思いつつも、口には出来ない。「直弥って呼んで。……あの時みたいにさ」どこまで図々しい男なの?コイツ……。でも、我慢よ我慢。「……直弥」「梓咲、場所変える? ここだと、話しにくいこともあるだろうし」 優しいフリして男を騙すのは、悪い気はしない。 でもコイツ……自分に自信を持ちすぎて気持ち悪いわ。どれだけ自分に自信があるのかしら。「……直弥、今日はずっと一緒にいてくれない?朝まで」「もちろん。 梓咲がいてほしいって言うまで、いてやるよ」男って、笑っちゃうくらい本当に単純な生き物ね……。「梓咲、直弥って呼んで?」「……直弥」「可愛い、梓咲」場所をラブホテルに移した私たち。そして直弥は、そのままベッドの上で私を抱いていく。「あっ……直弥っ」直弥の背中にしがみつくと、直弥は「元カレのことなんて、忘れさせてやるよ俺が」なんて甘いセリフを吐いて、ひたすらに自分の欲望を私の中に深くぶつけてくる。「ん、直弥……気持ちっ、あんっ」「梓咲、もっと激しくしたい。いい?」 直弥は私の胸を啄むようにキスをしながら、腰を動かしていく。「ん……して、激しくしてっ」こういえば、直弥はもっと私に欲情する。 私が欲しくて欲しくて、たまらなくなるはずだ。「あんっ、あっ……激しっ」「激しくするって言っただろ」私はただ、任務のためだけに直弥に抱かれる。ここに愛なんてものはないけれど、欲望のためには何度でもこの身体を使う。「
last updateLast Updated : 2026-01-16
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□⑫

潮江直弥の父親が、あの春沼だった……? 「……ねえ、どういうこと?」「俺の母親は、春沼の愛人だったんだよ。でも俺が出来た瞬間(とき)から、母親は捨てられる運命だったんだよ」潮江直弥の言葉に、私は衝撃を受けた。「……あなたはどうして、春沼会長が父親だって分かったの?」 「母親の日記が出て来たんだ」「日記?」潮江の話によると、母親は二年前にガンで亡くなったそうだ。そして母親の遺品を整理していたら、その日記が出てきたとのことだ。その日記に、春沼会長の名前が書いてあったことを知った潮江は、春沼にその事実を確かめるために春沼に会いに来たと話していた。「だからあなたは、春沼製薬に……」「そうだ。でも父親が脅迫されてたことは、本当に知らなかった。……まさか、脅迫されてたなんてな」潮江直弥のその表情から、ただ父親に一目会いたいと思っていたことが判明した。 つまり脅迫文とは、何も関係なかったということだ。「直弥、あなた……父親を恨んでるの?」「……分からない。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」私のミッションは、もうこれでクリアしたってことでいいかしらね。……この男は何も関係なかった。ならコイツを抹殺したって意味もない。「でも、なぜ母さんを捨てたのか聞きたかった。……俺と母さんを、なぜ捨てたのか。それだけは聞きたい」これが潮江直弥の、素直な気持ちーーー。「……聞けばいいじゃない。直接本人に」「そんなこと……今更出来ないさ。アイツは俺の顔も知らない。今更どうこう言っても仕方ないさ」仕方ない……? 仕方のないことなの、それが?私には分からない。「一目会いたいんでしょ? なら、会って聞くべきよ。どうして捨てたのか、ちゃんと聞くべきよ」「……梓咲?」「あなたは今それが聞けるのよ? 聞けるのに聞かないなんて、絶対に後悔するに決まってるわ」私は後悔だらけだから。……ずっとずっと、あの日から。「梓咲……君はなぜ、そんなに優しいんだ」「優しくなんてない。……ただ腹が立つだけよ」「……え?」私は両親が殺された理由も知らない。なぜ殺されたのか、なぜ殺されなけばならなかったのか。その理由をずっと知らないまま生きてるの。 知りたくても知ることが出来ない。それがどれだけ辛いことなのか、絶対に分からないだろう。「……逃げてばかりじゃ、
last updateLast Updated : 2026-01-17
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■⑬

それから三ヶ月後が経過した頃ーーー。「朱里、ちょっといいか?」 私はボスに急に呼び出された。「はい」「お前に話しておきたいことがある」話しておきたいこと? なんだろう?「あの、話とは何でしょうか?」ボスの背中にそう問いかけると、ボスは私に「朱里、この男を知っているか?」ととある写真を見せられた。「いえ……。誰ですか?」この男は誰? 見たことがない。「ーーーコイツは、お前の両親を殺した殺し屋だ」「………え?」ボスから出た言葉に、私はフリーズした。「お前の両親を殺したのは、コイツだ」ボスは、私にその男の写真を手渡してきた。「この男が……?」コイツが……。この男が、私の両親を殺した殺し屋……?「そうだ。そいつの名は名前は草原真樹《くさはらまさき》」 「草原……真樹……?」誰だろう?そんな名前、聞いたことがない。「コードネームばレッド・アイ゙だ」「レッド・アイ……?」レッド・アイ……。そう言えば、ボスから聞いたことがある。凄腕の殺し屋がいると。 その男は左眼が義眼で、その義眼が赤い目をしていると。だから゙レッド・アイ゙と呼ばれているのだと、確か昔に聞いたことがある。 そっか……。コイツが、私の両親を殺した正体なのね。 「コイツが……パパとママを殺したの?」ボスを見つめると、ボスは静かに「そうだ」と頷いた。「コイツが……パパとママを……」 私がこの世界に入ったのは、両親の敵を打つためだ。だから殺し屋として、私はこの世界に入ったんだ。両親を殺した男にいつか、復讐するために。「朱里、お前の復讐の時がもうすぐやってくるだろう」「復讐の、時……」ボスは私の目の前に立つと、私の唇を奪ってキスをしてくる。「喜べ。お前が望んでいたことが、もうすぐ現実するんだ」 一度唇を離したボスは私にそう言って、再び唇を重ねてくる。「んぅっ……っ、ボスッ……」ボスにキスをされると、抗えない。 ボスの付けている香水の甘い香りが鼻について、厭らしい雰囲気を醸し出しているのがよく分かる。 私にとってボスは、憧れの存在。そして命の恩人。 ボスの言うことは絶対だ。抗うことなど、絶対に許されない。「朱里、お前はアイツに復讐するんだろ? そしたらお前の復讐は果たされる」「アイツを……殺す」私がもしあの男に復讐を果たせたとし
last updateLast Updated : 2026-01-17
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□⑭

私にはここしか居場所がない。学校なんてものは所詮仕事場だ。本当の私の居場所は、ここだから。ボスやみんなと働く私だからこそ、価値があるって思ってる。「……ボス、私はあなたのそばから離れません。必ずあなたをお守りします。 あなたをガッカリさせたりしません」私のやるべきことは決まっている。「心強いセリフだな」ボスは窓の外を眺めながら、微笑んでいる。「もし私がしくじったその時は……私を殺しても構いません」私はそのくらいの覚悟なら出来ている。 ボスに裏切るような真似は絶対にしない。「……お前の覚悟は分かった。期待してるぞ」「はい」ボス、私はあなたを尊敬しています。 あなたを心から守りたいと思っています。「草原だが、一週間後に日本に帰ってくるらしい」「一週間後……」一週間後にはここに帰ってくる。……ならそれまでに、私は彼を追い詰める準備をしておかないと。「くれぐれも無理はするな。 何かあったら、必ず俺たちを頼れ」「……はい。承知しました」そう、私には信頼出来る仲間がいる。絶対的な信頼を寄せる仲間が。「お前は一人じゃない。俺たちを頼るのも、仕事のうちだ」「はい」草原真樹、コードネーム・レッドアイ。 私の両親を殺した張本人。私は絶対に、アイツを許さないーーー。「朱里、ハルキ、次のターゲットが動き出したぞ」「了解しました」草原が帰国するまで後四日と迫った頃、私は任務を遂行していた。「待て、朱里」「ハルキ、どうかした?」動き出そうとしたその時、ハルキに呼び止められる。「俺ら以外にも、アイツを狙ってるヤツがいるみたいだぞ」「え? どういうこと?」私たち以外にもいるって?「見ろよ、あれ。屋上だ」ハルキが指差した方向に視線を向ける。「……ハルキ、アイツら誰?」「分からない。一体誰だ?」二人で顔を見合わせ、屋上に再び視線を向ける。「アイツらも、ヤツを狙ってるってこと?」「恐らくそうだろうな。 どうする?朱里」どうするって言ったって……。「朱里、ハルキ、どうした?」「すいません、ボス。……屋上にもヤツを狙ってるヤツらがいるようです」ハルキはイヤホンを通して、ボスにそう伝える。「何?それは本当か?」「はい。ヤツらは屋上から、ターゲットを射撃で狙っています。 恐らく、射殺するつもりです」私がそう伝えた後、窓ガラス
last updateLast Updated : 2026-01-18
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■⑮

そして夜二十一時過ぎーーー。「朱里、ハルキ、雅人。お前らの言ってた組織の正体が分かった」ボスは私たちにそう言ってきた。「えっ、本当ですか?」あの組織の正体が、分かったの? さすがボスだわ。「あの組織の正体は……レッド・アイだ」「……レッド・アイ?」レッド・アイって……まさか。「まさか……あのレッド・アイ、ですか?」そう問いかけるハルキの横顔を見つめる。「そうだ。 あのレッド・アイだ」「草原……真樹」レッド・アイが動いてるってことは……。「ヤツはすでに帰国している、ということだろうな」 「……草原が、帰ってきてる?」レッド・アイは明後日帰ってくる予定だと聞いていた。 でもまさか……。だとしたら、予定よりも早く帰国しているってことになる。でももしそれが本当なら、あの組織の行動は頷ける。 レッド・アイが……草原真樹が、帰ってきている。私の……復讐相手。私の両親を殺した組織の人間……。「なんにせよ、ヤツらはすでに帰ってきている。レッド・アイもそのうち、動き出すだろう」ーーーレッド・アイが、ついに動き出した。「ヤツらには凄腕のスナイパーがいる、と言うウワサがある。……恐らくあの時のスナイパーは、そいつで間違いないだろう」あの時のスナイパーは、その人……。一体どんな人なの?そんなスナイパーは、一体誰なの? 男なのか女なのかも分からない。「そのスナイパーって、誰だよ?」「まだ分からない。今雅人に正体を探ってもらっている」そいつの正体が分かれば、レッド・アイのことも何か分かるかもしれない。 草原のことも、何か分かるかも。「朱里、何か気付いたことはないか?」「気付いたこと……?」ううん。あの場には私たちもいたけど、一瞬にしてターゲットの頭を撃ち抜いていた。弾なんか早くて見えなかったし、窓ガラスが割れた音で初めて射殺されたことに気付いた。「いえ、何も……」「そうか」「……申し訳ありません」謝罪する私に、ボスは「気にするな。そのうち分かることだ」と言っていた。「レッド・アイはもしかしたら……俺たちを殺しに来るかもな」ボスのその言葉が、私は妙に引っかかる。「レッド・アイの目的は……私たち、ですか?」もし私たちを抹殺することが、彼らの目的だったとしたら?いや。むしろ狙われる可能性が高いのは、この業界最強の男【
last updateLast Updated : 2026-01-19
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□⑯

その日から私たちは、レッド・アイの動きを探り探り動いていた。昼間教師の仕事をしている私は、仕事の合間を縫って草原のことを調べていた。 でもそんなある日のことだった。 「皆さん、来月から我が校では、新しく進学に特化した進学クラスを作ることになりました」校長先生がいきなり、私たち教師にそんなことを言ってきたのだ。「えっ?」(し、進学クラス……!? な、何?どういうこと?)突然の発表に、職員室はざわざわとし始める。「進学クラスを希望する人には、これから進学クラスで、進学クラスの人のための特別なカリキュラムを組んだ授業を行ってもらいます」(し、進学クラスの人のための授業……? ちょっとなにそれ?)「なお、進学クラスに入れる人数はあらかじめこちらで決めています。 進学クラスに入れる人数は、各学年から五人ずつとし、合計十五名とします」(各学年から、五人ずつ……? それって、各学年から誰かが選抜されるってこと?)これは、とんでもないことになった。今まで予想もしていなかった出来事だ。(ちょっと待って。でもどうして、校長先生はいきなりそんなことを?)「我が校は進学実績を年々と積み上げてきています。しかしまだその学力には個人差があります。 なので進学を希望している人に特別なカリキュラムを組むことで、その学力を個人差なく上げようと考えました」校長先生は、私たちにそう言ったのだ。「いいですか?先生方、基礎を固めることから始める段階ではすでに遅いのですよ? 生徒一人一人の学力を上げようと思うのならば、その生徒の学力を一気に向上させなければなりません。そうなると今の授業内容では足りないのですよ」(それは、そうかもしれないけど……)もちろん、校長先生の言いたいことも分かる。そう思わないこともない。「我が校は進学にもっと力を入れなければなりません。今の学力試験の差も縮めなければ、我が校は進学校とは呼べません」(学力の個人差をなくすこと……。そんなの本当に可能なの?)そもそも山辺北高校は元々進学校ではない。 だからまだ、進学校と呼べるレベルに達していないと言うことになるのだろう。「進学クラスに関してですが、担任は……南川先生、あなたにお願いしたいと思っています」「………え?」(え、今なんて……? 今、私の名前呼んだ?)「み、南川先生ですか!?」
last updateLast Updated : 2026-01-19
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■⑰

「紹介しよう。来月から進学クラスを受け持ってもらう、草原千歳(ちとせ)先生です」 「……は、初めまして。南川朱里(あかり)です」(なんだ……やっぱり別人か。 そうだよね、こんな所にあの草原が来る訳ないもの。あり得ないわ)草原という苗字にやたら敏感になっているのか、別人であったことにとてもホッとした。「あなたが南川先生ですか。初めまして、草原千歳と言います。よろしくお願いします」「こ、こちらこそ……」(え、笑顔が爽やかすぎる……。それに、意外とイケメンだ)「草原先生には、非常勤講師として来月からこの学校の進学クラスを担当して頂きます」え、何?しかも進学クラスの担当が、非常勤講師? ウソでしょ……。こんな訳の分からない先生と一緒に、進学クラスを担当するの……?「来月の七日より、進学クラスを開設します。今月には進学クラスのメンバーの選抜を開始しますので、そのつもりでお願いしますね?南川先生」「は、はあ……」(え、本当に?本当に私が進学クラスを担当するの? これって、夢……? いや、頼むから夢であってくれ……) 教師という仕事に、課題を付けられた私は、ガクッと肩を落とした。 「話は以上です。 今回の進学クラスについてはお知らせを出しますので、生徒たちには必ず親御さんに渡すように伝えてくださいね、皆さん」校長先生はそう言い残すと、草原という人と職員室から出ていってしまった。「南川先生、大丈夫ですか?」「……これって、夢ですか?」ちょっと待って……私が進学クラスの担当? ありえない。「夢では……ないですね」「……ですよね」これが夢ならどれだけ嬉しいことか……。兎にも角にも、今私が進学クラスの担当になることだけは理解した。「進学クラスって……どんなことすれば、いいんですか?」「さあ……。どうなんでしょうね」進学クラスを作るなんて、校長先生は一体何を考えてるのだろうか。 そもそも、なぜ私?しかもあの訳の分からない草原とか言う非常勤講師と一緒にだなんて……。どうすればいいんだ、私は。肩を落とす私に、隣に座る榎戸先生が「南川先生なら、きっと大丈夫ですよ」と方を優しく叩いてくれる。「……辞退、出来ないのでしょうか」「それは多分……」「無理だろうね」他の先生方にもそう言い返され「やっぱりそうですよね……」と言葉を返す。「
last updateLast Updated : 2026-01-20
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□⑱

あれはレッド・アイの仕業だったのか……。「ヤツらは相当危険な連中だ。……お前の手に負えるような、相手じゃない」「………」レッド・アイが危険なことは、私も分かっている。 でもレッド・アイは、私の両親を殺した相手なのだ。私の……復讐相手。「お前が無茶をすれば……お前は確実にヤツに殺されるぞ」「……それでも私は、レッド・アイに、草原に復讐したいです」危険なことは分かっている。私だって、分かってるそんなこと……。「朱里、お前にはあるのか。……ヤツを殺す覚悟が」ボスの言葉に、私は言葉が出なくなった。 (草原を、殺す覚悟……)そんなもの……分からない。「……その覚悟がないなら、中途半端なことはしない方がいい」ボスの冷たい一言に、私は心がざわめいた。「……ボス」「一つ言っておく。 朱里、俺はお前には死んでほしくはない」(死んでほしくはない……? それはどういう意味?)「お前は俺たちにとって、本当に必要な存在だ。……だから、絶対に無茶はするな」「……はい。承知しました」(私は必要とされているの……?)「朱里、俺にはお前が必要だ」ボスは私のことを、そっと抱きしめてくる。「……いいか。絶対に死ぬなよ」その言葉に私は「……はい」と答えた。(私は、ボスのために尽くすと決めてるの。……死ぬ訳にはいかない)✱ ✱ ✱「こんばんは、玲司さん」 「……君は、あの時の?」「あら、覚えててくれたの?嬉しい」私は次のターゲットに的を絞り、ターゲット抹殺のため動いていた。「今日はね、あなたに会いに来たの」「……僕に?」「ええ、あなたに」目的はただ一つ、コイツを抹殺するためにね。「……ねえ、この部屋の最上階にキレイな夜景の見える部屋があるの。一緒に夜景、見ない?」ターゲットの男を上目遣いで見つめると、男は「夜景か……。いいね、一緒に見ようか」と微笑んだ。「決まり。行きましょう」男の腕に自分の腕を絡め、最上階へ向かうためにエレベーターに乗り込む。【今から最上階に向かいます】とメッセージを送ると【了解】と返信が来た。 「ここの夜景、すごくキレイだって有名なのよ」「そうなんだ。どんな景色なのか、楽しみだよ」男なんてチョロい。……本当にクズばかりね。あっという間にエレベーターは最上階に到着した。エレベーターの扉が開くと、そこ
last updateLast Updated : 2026-01-21
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■⑲

「そんなことより、さっさと引き上げるぞ」「ええ、行きましょう」私とハルキと雅人は、任務を終えてそのまま仕事を終えた。✱ ✱ ✱「南川先生、おはようございます」「おはようございます」進学クラスが開設されると決まってから、すでに三日ほどが経過した。進学クラス希望の生徒の募集を開始したところ、思ったよりも進学クラスへの募集が殺到してしまっているようだ。 校長先生としてはまずまずの滑り出しだ、と喜んでいた。それもそのはすだ。 学力が上がるならばと、親御さんたちからの希望が増えてしまった。そのため進学クラスへの生徒の選抜は、今度の中間テストの結果を考慮した上で決めるとされた。進学クラスに入る生徒たちの選抜は、校長先生、教頭先生、各学年主任、そして私と非常勤講師の草原という先生の七名で決定することになった。 学力向上、そして志望校合格のための進学クラスのカリキュラムは、私と草原先生が加わりスケジュールを立てることになった。草原先生と私、どんなクラスになるのか……。全く想像も付かない。本当に大丈夫なのだろうか、私は……?「南川先生、くれぐれもあの子たちのこと、よろしくお願いしますね」「……はい」 校長先生から進学クラスを任され、不安になっている。 私は本当に大丈夫なのかと、毎日葛藤している。「さあ皆さん、いよいよ明日から中間テストが始まります。 気合い入れていきましょう」いよいよ中間テストが始まる。 進学クラスに入る生徒が、このテストによって決まってくることに間違いはない。心していかねば……。私には荷が重いけど、やるしかない。覚悟を決めるしか、ない。「じゃあ今日の授業は、自習にします。それぞれ苦手な所を復習しておいてくださいね。 分からない所があればどんどん先生に聞いてください」いよいよ明日からがテストということもあり、各授業は自習ということになった。 自習と言っても苦手な所を復習するだけでなく、得意な所も伸びすのも一つの勉強方法だ。「先生、ちょっと見てもらってもいいですか?」「いいわよ。 どこ?」生徒たちは本当に真面目に勉強している。その真剣な表情は、生徒たちの本気の表れだ。そして進学クラスへ行きたい生徒も多く、このテストで行けるかが決まるという、とても大事なテストになる。校長先生曰く、進学校として目指すためには、
last updateLast Updated : 2026-01-21
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□⑳

困惑する私に、草原先生は「せっかくですし、一緒にどうですか?」と聞かれる。(どうする?私。でももし、ここで断ったら? なんか疑われたりする……?)いや、そんなことはないはず。 でも万が一ってこともあるし……。とりあえず……行くしかないかな。「……じゃあ、行きますか?」「はい。行きましょう」なんとも胡散臭いと思いながも、近くで見つけたカフェに二人で入ることにした。「南川先生、何飲まれますか?」メニュー表を渡してくれる草原先生。「……あ、いいんですか?」「ええ、お先にどうぞ」こうやって紳士な所も、なんとなく胡散臭いような気もするが……。「ありがとうございます」とりあえずメニュー表に目を通してみる。「……じゃあ、ミルクティーで」「南川先生は、ミルクティーがお好きなんですか?」「え、あ、まあ……」そんなこと知る必要があるのか、とも思うけど、あえて言わないでおこう。「可愛いですね、南川先生」「え?」(か、可愛い……? 私が?)「最初に会った時から思ってたんですよね。可愛いなって」「……えっ?」(な、何?この口説くようなセリフは……? もしかして、私のことナンパしようとしてる?)「あ、すみません。別にそんなつもりじゃなかったんですけど……」(な、何なの?この人……)「……いえ」(か、絡みづらい……)「僕はアイスコーヒーにしますね」「あ、はい」 「あの、何か食べますか?ケーキとかもありますけど?」そう問いかけられ、私は再びメニューに目を通す。「今日は僕が奢りますので、好きなもの食べてください」「え? あ、いえ、それは大丈夫です!」慌てて否定するものの、優しい草原先生は「奢らせてください」と笑顔を向けてくる。「……ありがとうございます」その好意を無駄にするのも悪いなと思ってしまった私は、その好意に甘えることにした。「何でもいいですよ」「んー、じゃあ……チーズケーキ食べていいですか?」「もちろん」二人分の飲み物とデザートを注文した私たちは、注文したものが届くまで少し話をした。「南川先生は、ひとり暮らしですか?」「はい、そうです。 草原先生もですか?」「いえ、僕は兄と二人暮らしです」(なるほど、草原先生にはお兄さんがいらっしゃるのか……。ん?まさかその兄って……)「お兄さんがいらっしゃるんです
last updateLast Updated : 2026-01-22
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