節子は、失望もあらわに都子を見つめ返した。「お母さん……いつからそんなに嫌な人間になっちゃったの?」「はあ!?あんた、親に向かって嫌な人間って……!」実の娘からの容赦ない言葉に、都子の顔が怒りで青ざめる。だが節子は怯まなかった。「星歌さんへの態度、本当に酷いじゃない。家柄で彼女を見下して、疑って、侮蔑して」「あんた……私を責める前に、あの女がやってる事を見なさいよ!夏蓮はただでさえ帝王切開で大変なのに、あの女のせいで何度も傷口が開いてるのよ!」都子は怒りで震えながら声を荒らげた。「あのね、飛鳥兄さんが夏蓮さんにつきっきりで出産を待ってる間に、星歌さんはお腹の子を失ったのよ!これで何もせずに黙って暴言を目こぼししろって言う方がどうかしてる!」節子は語気を強める。「この半年間、家族全員でどれだけ星歌さんを追い詰めたか忘れたの?私ならとっくに、全員刺し殺してるところよ!」「な、なに……!?」都子はあまりの剣幕にくらくらとよろめいた。「だ、だから言ってるじゃない!あの同意書は……」「同意書が偽造だって?鼻で笑うわ!」節子は冷笑した。「一昨日、病院に現れた星歌さんの顔が、どれだけ真っ青だったか……お母さんはあの姿を見ても、まだそんなこと言えるの?」都子は言葉を失った。チーンと、冷たい音が鳴ってエレベーターの扉が開いた。節子は怒りも露わに、掴まれていた腕を振り払って乗り込んだ。「ちょっと、あんた……!」忌々しげに声を上げる都子を、節子は冷たい目で見下ろした。「流産して身も心もボロボロだった彼女にあんな仕打ちをしたんだから。星歌さんがこれだけやり返すのも、自業自得よ」都子は言い返せなかった。無機質な音とともに、エレベーターの扉が閉まる。ホールに取り残された都子は、しばらく呆然としていた。星歌が本当に流産したなどと節子から聞かされ、一瞬、予想外の言葉に虚を突かれたのだ。だが、彼女の胸に罪悪感が湧くことはなかった。それどころか、すぐに自分の都合の良い解釈で「星歌の流産」という事実を頭から排除した。「まったく……元々妊娠なんてしてないんだから、流産するわけないじゃないの!」独り言を吐き捨てると、都子は足早に病室へと戻っていった。病室では、さらにヒステリーを加速させた夏蓮が暴れていた。
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