ドア越しに牧野さんの声がする。「飛鳥様、都子様と亜季お嬢様がいらっしゃいました」星歌は暴れるのをやめた。薄暗い部屋の中、彼女の放つ空気が明らかに冷え込む。そして、フッと嘲るような声がこぼれた。「私に八つ当たりしに来たみたいね。離して」そう言って、起き上がろうとする。今の星歌は、まるで臨戦態势の女戦士だった。都子と亜季が乗り込んできたと知っても、逃げ隠れする気など毛頭ない。もはや、すべてを投げ打って全面戦争をしているのだ。今更何を恐れる必要がある?飛鳥は頭痛を堪えるように、星歌の手首を掴んで制止した。「お前は大人しく寝ていろ」そのままベッドサイドのランプを点け、星歌の身体を無理やり布団の中に押し込める。「いいか、大人しくしてろ。俺が追い返す」飛鳥には、星歌を1階へ行かせる気など微塵もなかった。もし行かせれば、どんな凄惨な修羅場になるか想像もつかない。この数日で、飛鳥も嫌というほど思い知らされていた。今の星歌は、冴島家と完全に縁を切るつもりなのだと。以前の彼女は、姑や義姉を敬い、祖母に孝行を尽くし、義妹にも優しく接していた。冴島家の全員と良好な関係を保とうと、彼女はいつも必死に努力していた。だが、今の彼女はもうあの従順で大人しい女ではない。狂ったようにキバを剥き、ためらいなくすべてを破壊する女になってしまったのだ。飛鳥がベッドから出ると、星歌が寝転がったままクスクスと笑い声を漏らした。「ねえ。あなた、また戻ってくるの?」「俺がここ以外どこに行くって言うんだ」そんな嫌味ったらしい質問をされ、飛鳥は苛立ちを露わにした。星歌が鼻で笑う。「この半年間、この墨霞邸に帰ってこなかった夜なんて数え切れないでしょう。自分がどこに行ってたか、一番よく分かってるじゃない」「……ッ」飛鳥はこめかみを押さえた。どうやら、この半年間蓄積された彼女の恨みは、そう簡単に消えてくれそうもない。ガウンを羽織り、振り返って星歌を見た。「もう、翼兄さんの子供のために家を空けることはしない」『翼兄さんの子供』という言葉を、飛鳥はことさら強く強調した。まるで「これまで家を空けていたのはすべて翼の子供のためであって、夏蓮に会いに行っていたわけではない」と、必死に弁明するように。だが、星歌の口角はさら
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