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All Chapters of いつかの一枚のために: Chapter 91 - Chapter 100

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第91話

「これって…。」言葉を失う佐和子や涼禾に、「SG警備のこの手の情報って割と見やすいんですよね。」「………。」「?何か?じゃあ、いつ頃盗聴器が付けられたか、たどってみますね。う〜ん………、あっ、ここだ!うわ〜、もう1年近くになりますよ。不用心ですねぇ。でも、このタイプって相手が近くに来ないと聞けないので、ずっと聞かれてた訳じゃないと思います。」雅輝の言動に驚いて言葉も出なかった一同だったが、辛うじて気を取り直した涼禾が尋ねてみた。「盗聴器が付けられているってこと、警備会社は気付かないものなんですか?」「取り付けた時は気付いたはずですが、社内の誰かが隠したんでしょうね。若しくは取り付ける時に協力したか。SG警備の中にスパイがいますね。」あっさりと結論を言う雅輝に、周囲は益々驚いた。その中で、陽亮だけは別の意味で興奮していた。『まさきさん、すごい!ぜったいに先生になってもらう!』ようやく落ち着きを取り戻した佐和子は、取り敢えず雅輝にお茶休憩を勧めた。そしてその間に徹と颯太に事の次第を報告すると、驚いた二人はすぐに家に戻って来た。「やあ、颯太さんお久しぶりです。」呑気に挨拶する雅輝に颯太が、「雅輝君、家の事ありがとう。それで、お疲れの所悪いのだが、会社の方も見てもらえるか。」「勿論ですよ。兄からも申し遣っていますし。異常が有りそうな所の目処も付いています。お昼をゆっくり食べて午後からでもいいですか。」「ああ、助かる。」涼禾と中村さんの手料理で昼食を楽しんだ後、徹と颯太は雅輝と一緒に会社に戻って行った。「雅輝さんてすごいですね。今までのいろんな疑問がいろいろ解決した気がします。」「そうね。SG警備、ずっと信用していたのだけど。」「そうですね。警備の方と事務職の方は別なのでしょうけど、残念です。」「ねぇ、ママ、ぼく、まさきさんに先生になってほしい!」「そうだったわね。でもお忙しそうだから無理は言えないわよ。」「わかってる。でも、新しいおうちになったら家も近くなるんでしょ。」「そうね。」「たのしみ〜!」「お兄ちゃん、いいなぁ。」「かれんだって、りょうおじさんがいるじゃないか。」「そうだった。わたしもたのしみ〜。」「二人とも良かったわね。」「「うん!」」雅輝によって調査された結果、颯太と健人の電話とパソコンは簡単に盗
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第92話

雅輝によって、モリタ製薬が約1年前からハッカー集団を幾つか雇って、安藤家と会社の情報を得ていたことがわかった。そして、それにはSG警備の情報管理の関係者が協力していること、雇われたハッカーたちの実力は中級程度であることがわかった。安藤家は雅輝にとても感謝して、何かお礼をしたいと申し出ると、「大したことないですから、気にしないでください。」 と言いつつ、「でも、実は一つお願いがあるんです。」と言い出し、「涼禾さんに僕のスーツをデザインして欲しいです!」と言った。涼禾は少し驚いたが快く引き受けた。雅輝が帰った後、事情を聞いた隼翔から颯太に連絡が入った。「SG警備の件だが、スパイを探る前に聡さんに報告した方がいいと思う。君はどう思う?」「僕も同感です。せっかく信頼関係を築こうとしているのに、勝手にやるとまたお互い警戒し合うことになるでしょうから。」「では、連絡を入れておくよ。」「はい。お願いします。」と言った翌日、また隼翔から連絡が入り、「先日の件だが、聡さんが電話ではなく直接会って詳しく聞きたいって言うんだ。それで、出来たら颯太君にも同席して欲しいって。」「僕、ですか?雅輝君じゃなくて?」「そうなんだ。僕も確認したのだが、颯太君だそうだ。」「……。わかりました。日時が決まったら教えてください。伺えるように調整します。」安藤家ではモリタ製薬への警戒をしながら、涼禾と隼翔との結婚の準備や会社の業務拡大、と忙しい日々が続いていた。そんな中、亮が東都から帰ってきた。夜、子供たちを寝かしつけた後、安藤夫妻と涼禾に叔父一家に会ってきた事の報告をした。「みんな元気でしたよ。姉さんの事を話したら心配していましたが、元気でもうすぐ結婚するって伝えたらとても喜んでくれました。式にも出席してくれるそうです。それで…、」言い淀む亮に佐和子が問いかけた。「何か?」「はい、従兄弟たちが自分たちも式に行きたいって……。」 「あら、いいじゃない。四人くらい増えても平気よ。ね、あなた。」「ああ、大丈夫だよ。すぐに招待状を手配するよ。」「すみません、ありがとうございます。それから、もう一つ、報告があります。」亮は真剣な表情で、涼禾を見た。「叔父さんたちは、姉さんの記憶が充分戻っていない事を随分心配していました。それと、僕が薬学の修士に進んだ事を
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第93話

両手でこめかみを抑えながら、目を固く瞑り考え込み始めた涼禾の体の震えが激しくなった。同時に呼吸も苦しそうになってきたのを見て、佐和子がぎゅっと抱きしめながら言った。「涼禾、もういい。無理に思い出さなくてもいいのよ。大丈夫、みんなで考えればきっと分かるはず。あなたが無理しなくていいの!」それでも涼禾は考え続けて、やっと小さな声で呟いた。「前の……保養所。」「前の保養所って?もしかして父さんたちの研究所の?」と、亮が聞き返した時には涼禾はもう気を失ってぐったりしていた。三人は慌てて涼禾を病院に運んだ。幸い、症状は軽く少し休めば目が覚めるだろうとのことだった。亮は目に涙を浮かべながら、「姉さん、ごめんね、無理させて。お父さんもお母さんもすみません。つい焦ってしまって。」「仕方ないわ。やっと得られた手がかりですもの。涼禾も同じ気持ちだったのだと思うわ。」「そうだよ。亮君。自分を責めてはいけないよ。涼禾が目覚めたら悲しむ。」「はい、ありがとうございます。」1時間ほど三人で様子を見守っていたが、目覚めそうになかった。安藤夫妻は、急遽住み込みの家政婦である中村を起こして子供たちを任せてきたので、一旦家に帰ることにした。涼禾が目覚めたのは明け方近くだった。東の空がほんのり明るく感じられた頃、ゆっくりと目を開けた涼禾に気づくなり亮が、「姉さん、良かった。ごめんね、無理に思い出させようとして。」「私こそ、ごめんね。あと少しで思い出せそうって思うとやめられなくて。またみんなに心配かけちゃった。」亮は目元を赤く腫れあがらせながら首を横に振った。「無事で、良かった。」「ありがとう。それでね、頑張った甲斐があったわよ。」涼禾は満足そうににっこり微笑むと思い出したことを話し始めた。当時、涼禾は度々モリタ製薬からの依頼だという男達から、両親の遺した薬の情報を渡せと迫られていた。しかし、何度来られても知らないものは知らない、と答えるしかなかった。一方で、母の言葉も気になっていた。彼らがいうように、両親は何かの情報を遺したのか。そんな思いで過ごしていた時だった。少し時間ができたので、両親の遺した本や書類を見ていると、本の間から一枚の封筒が落ちてきた。見てみると、以前母と見た聡美からの手紙だった。懐かしくて中を見てみると中身は空だった。更に見直していると
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第94話

「そうか。服飾部門か。で、亮君はどうしている?」「亮はこの春から高校生になりました。」「そうか。で、どうして急に私に連絡を?」「すみません。実は…。」香子は最近のモリタ製薬からの催促や、母の最後の言葉を話し、何か知っていることがあれば教えて欲しいと伝えた。丸野は、「残念ながら今の所、役にたてる話はないね。もし、亮くんが本格的に薬学の道に進んだら、ご両親の思い出話位はできると思うよ。その時は二人で訪ねておいで。私たちは昔研究所の保養所だった家を買い取って暮らしている。一緒に遊びにきたこともあるのだが、覚えてないかな。海辺の赤い屋根の家だよ。」「海辺の赤い屋根?あっ、覚えています。素敵な所でした!」「そうか、ありがとう。一つだけ、約束して欲しいことがある。」「何でしょう。」「亮君の進路が薬学でなかった時は、私達から連絡するまでここに来てはいけないよ。連絡もどうしても必要な時以外は控えて欲しい。僕は今は仕事を引退していて、いろいろと…ね。」「わかりました。いつかお会い出来たら嬉しいですが。」「そうだね。元気でね、香子ちゃん。」その時の香子は、何となく不穏なものを感じて亮には言わなかった。そしてあの事件の少し前、会社での嫌がらせとモリタ製薬からの催促がかなり頻繁になり、身の危険を感じた香子は叔父に会って伝言を頼んだのだった。「姉さん大変だったんだね。僕、何も知らなかった。」「いいのよ。お父さんやお母さんと私もだけど、亮の進路を強要したくなかった。あの時話していたら、きっと亮は義務感から進路を決めてしまうと思ったの。それはさせたくなかった。」「ありがとう。結局僕は薬学の道に進んだけど、これは僕の意思だ。だからやり甲斐も感じているし悔いもないよ。」「だったら良かったわ。二人も喜んでくれていると思うわ。」亮は安藤夫妻に涼禾が目覚めた事を連絡した。そして涼禾は午前中に退院して、亮と一緒に家に帰った。その日の夜、東都では瀬川聡と隼翔、颯太の三人が再び夕食を共にすることになっていた。。前回と違い、ホテルのミーティングルームで話をした後レストランに移動して食事を楽しもうと言う予定だった。上機嫌で現れた聡だったが、隼翔からSG警備の話を聞くなり、ぞっとするくらい厳しい表情になった。もともと鋭い目付きでクールな表情の隼翔と、大会社を率いる威厳に
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第95話

「はい、ご理解感謝致します。」「それから、前回の保留の件はもう少し待って欲しい。まだ情報が揃っていない。揃ってから纏めて話をしたい。」「はい。わかりました。」「さて、これで今回の話は終わりかな。では、食事に行こう。」ようやく重苦しい空気から解放され、ほっとした颯太だったが、『やっぱり僕、必要なかったのでは。』と、首を傾げながらレストランの個室に入ると、驚いて固まってしまった。「遅いわよ、兄さん。急に一緒に食事しようって呼び出したくせに。」部屋の中には、不機嫌そうな顔で果奈が待っていたのだ。慌てて隼翔を見ると、彼も少し驚きながら颯太の視線に気付くと、小さく首を横に振った。聡だけがにこにこしながら、「悪いね。ちょっと相談事があってね。知らない仲じゃないし一緒にと思って誘ったんだ。」聡以外の三人は最初はぎこちない態度だったが、次第に打ち解け、特に果奈と颯太は話が弾み楽しい食事会となった。食事を終えたタイミングで、聡は、「颯太君、今日はわざわざありがとう。この後、隼翔君ともう少し打ち合わせをしたいのだか、果奈を送ってやってくれるかい。」「お兄さん、私なら一人で帰れるわ。何を……。」「はい、お任せください。ちゃんとご自宅までお送りします。」颯太の返事を聞いて、聡は満足そうに頷きながら隼翔と共に部屋を出て行った。隼翔が不思議そうな顔で、「打ち合わせって何かありましたっけ?」 と聞くと、呆れた顔をした聡が、「特にない。察してくれ。」と言ってさっさと帰ってしまった。一瞬呆気に取られた隼翔だったが、すぐに何かに思い当たると納得して帰って行った。心の中では、『颯太君。鈍くてごめん。』と謝りながら。9月になり、様々な情報が集まり、すべき事もいろいろと分かってきた。しかし、両家は隼翔と涼禾の結婚式を無事に行うことを最優先とした。その為、モリタ製薬の動きを牽制する事に最大限の力を注いだ。まず、あの話し合いの後、雅輝と瀬川グループのスタッフで調査をした結果、スパイ候補を5人にまで絞ることが出来た。そしてその5人の動きを完璧に見張ることにした。更に、モリタ製薬に雇われていると見られる男達のグループを突き止め、それらの動きもしっかり見張ることが出来た。但し、モリタ製薬の誰が中心になってやっているのかは掴めていない。ここまで出来たのは、瀬川
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第96話

感動の再会のはずだったが、安藤家側一同は『隼翔さんらしいなぁ。』と生温い視線を向け、叔父一家も『お父さんらしいなぁ。』と、こちらもやや困ったような視線を向けていたが、涼禾だけは、双方の暖かい気持ちを感じて、心から感動していた。顔合わせの挨拶の後、涼禾と亮と叔父一家でお茶休憩をすることにした。「香子、本当に無事で良かった。」「そうよ。また元気そうなあなたに会えるなんて夢のようだわ。」「ありがとう、叔父さん、叔母さん。紹介が遅れたけど私の息子の陽亮と娘の夏蓮よ。」「ようすけです。5さいです。」「かれんです。5さいです。」「「こんにちは。」」「かわいいなあ、僕、こんな小さな双子に会うのは初めてだ。」と弟の柔治狼が言うと、「特に、陽亮君は香子姉さんの小さい頃に似てるな。将来が楽しみだ。二人ともよろしくね。」と、兄の剣太郎も笑顔で挨拶をした。そのまま兄弟と双子は仲良く遊び始めたので、叔父夫婦と涼禾と亮は四人で話を始めた。「叔父さん、この間は伝言のこと教えてくれてありがとう。」「いや、それで何か分かったのか?」「ええ、姉さんの記憶が少し戻ってお母さんの遺した言葉の意味がわかりそうです。」「まだ何か情報が足りないのか。」「いえ、確かめに動くことができないんです。」「と、言うと?」「まだ危険が残っているので詳しくはお話できないですが、両親が遺した仕事の情報を欲しがっている会社があるんです。」「なるほど。で、その会社のやり口が乱暴で、香子が酷い目に遭ったんだな。」「そうです。今ではかなり追い詰められて見境なく動いています。しかし、資金力が弱く中途半端な事しかできないようです。」「そのようだな。十年前に隠した情報を今だに見つけられていないんだから。」「全く愚かな奴らです。でも、油断はできません。おじさんたちも気を付けてください。それから、何か異変を感じたらすぐに知らせてください。」「分かった。じゃ、式が終わって落ち着いたら改めて動くってことか。」「そのつもりです。」「よし、俺達にできることがあれば協力するからな。何でも言ってくれ。」「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。」2日後、隼翔と涼禾の結婚式は多くの人たちに 温かく祝福され無事に終えることが出来た。式の日の夜、双子たちは江崎家に帰って行った。しか
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第97話

暫く抱きしめ合った後、涼禾の強い希望で一人ずつシャワーを浴びることにした。先に終えた隼翔は後から終えてバスローブ姿で出てきた涼禾を戸口まで迎えに行き、二人でベッドに腰掛けた。相変わらず、俯いたままの涼禾だったが、ゆっくりと顔を上げ隼翔の方へと向けると、「これからずっと、よろしくお願いします。」と、恥ずかしそうに言った。その表情があまりに可愛らしく、我を忘れて押し倒しそうになった隼翔だったが、ぐっと堪えて、「こちらこそ、よろしくお願いします。」と答えた。二人でゆっくりベッドに横たわると、どちらからともなく身体を寄せ合い、隼翔が自分のローブを脱ぎ去り、涼禾のローブの紐に手をかけた途端、涼禾の身体が急に強張った。そして消え入りそうな声で、「あ…明かりを…全部…消して…ください…。」と、弱々しくうったえた。隼翔はなぜ、と言いかけて、怯えたような目で自分を見ている涼禾の様子をを見て、ようやく思い出した。再会してから二人が身体を重ねるのは今日が初めてだった。何度か機会はあったが、結局涼禾が思い切れなかった。隼翔も強引なことはしたくなかったので、この日を待つことにした。 おそらく理由は、身体中に今も残っているだろう傷跡のせいだろうと気付いていたから。隼翔は、「わかった。」とひと言言うと、枕元の小さな明かりも消した。そして、「僕を信じて。全部、君の全部を心から愛している。」と囁いて、改めて涼禾のバスローブを取り去って、両手で愛おしげに彼女の肌に触れた。更に唇で首すじから胸元、腹部………と、全身にキスを落とした。それは、背中に残る幾つもの醜い傷跡にも何の躊躇いもなく落とされた。そうしてようやく涼禾の身体から力が抜けた。二人は夢中になってお互いの身体を抱きしめ、愛し合った。絶頂を迎えてはまた愛し合い、を何度も繰り返した。会えなくなる前、戸惑いながらも交際を始めた頃のときめき。お互いに強く惹かれ合い、将来を夢見ながら初めて一つになった時の喜び。ある日突然会えなくなった時の絶望。諦めかけた頃、思いがけずに果たせた再会での感動。いろいろな思いが込み上げてきた。そして今、二人で共にいられると言う奇跡のような現実を確かめ合うように熱を分け合った。ふたりがお互いに力尽きて眠りについた頃には、東の空がほんのり明るくなろうとしていた。翌日、涼禾が目
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第98話

「もう!やっぱり息子はつまらないわ。二人は雅輝と楽しく過ごしているわよ。夕方の便で出掛けられるように準備はできてます!」つまらなそうに言う美沙に、照れ隠しとはいえ余りに素っ気なかったと反省した隼翔は、「お母さん、いろいろありがとう。これからもよろしく頼むよ。」と、柔らかい声で感謝を伝えた。思いがけず聞こえてきた、息子の滅多に聞けない優しい言葉に、ちょっと涙が浮かんでしまった美沙は、「どういたしまして。任せてちょうだい!」と、わざと明るく返事を返した。涼禾たちは、家族四人で3日間の東北旅行に行く予定だ。今の状況では、家族だけで海外へ長期間出かけるのは不安がある。なので、今回は移動に時間をかけずに家族の時間をゆっくりと過ごすことにしたのだ。夕食の時間に間に合うようにホテルにチェックインした涼禾たちは、まずは部屋で一息ついた。道中の新幹線の中で燥ぎ疲れて少し眠っていた双子は、今は豪華な部屋の中を探検するのに忙しそうだ。12畳の畳の部屋には床の間が設けられ、桔梗の花が生けられており、壁には草花が描かれた軸が飾られている。その畳の間から2段の段差を降りると、4人がけのテーブルと椅子が置かれた洋間のスペースがある。そこの奥では広い窓があり、美しく整えられた日本庭園が見える。畳の間と反対側の壁にはドアがあり、中に入ると和風の大きなベッドが二つ並んで整えられていた。寝室の中にはバスルームとトイレへ繋がるドアもあった。これだけあれば、数日はここだけで暮らせそうな豪華な部屋にみんな大満足だった。その夜は、部屋で夕食を食べ、初めて家族四人で枕を並べて眠った、最高に幸せな夜になった。翌日、さぁ今日は何をしようかと四人であれこれと話しながら朝食を取っていると、隼翔の携帯が鳴った。画面を見ると、秘書の斉藤からだった。一瞬にして不機嫌な表情になった隼翔だが、仕方なく電話に出ると、「ご家族団欒の時に申し訳ありません。SG警備から連絡が入りました。相手はいよいよ焦っているようで、今日の観光中にお子さんを攫って奥様に情報提供を迫る計画だそうです。実行犯は四人、若い男女2名ずつの予定だそうです。いかがいたしますか?」「10分後に掛け直してくれ。」隼翔は電話を切るなり内容を三人に伝えた。「どうする?ボディカードたちに片付けて貰うこともできると思うが…。」「未遂
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第99話

「「まさきさ~ん。」」子供たちの話を聞いて涼禾と隼翔は呆れてしまった。「あいつは何て事を…。」「待って、今おじさん達って言った?」「「うん!」」「まさきさんとね〜。」「りょうおじさんとね〜、じゅうちゃん!」「じゅうちゃん?」「じゅうじ、ろう、おじさん!」更に呆れてため息をついたタイミングで、斉藤から電話がかかった。隼翔が電話に出ると、「社長、いかが致しましょうか。」と聞かれたので、子供達の提案を伝えてみると、「今回程度の相手なら行けるかもしれませんね。何分証拠が掴みにくくて。盗聴やハッキングで得たものは使えませんし。防犯用の録音機だと言えば有効かもしれません。」「お前まで。危ないじゃないか。」「何言ってるんですか、社長。二人にかかったら僕と槙野なんてあっと言う間に逃げられてしまいます。」「でも4人だぞ。」「必要な防犯道具を持って、ボディーガードが近くに待機してればまず問題ないですね。」「何でお前が知っているんだ。」「雅輝さんに頼まれて何回か練習台になりましたから。」「必要な防犯道具はどうするんだ。」「二人の荷物に入っていますよ。」「………。本当に大丈夫なんだろうな。」「はい、念の為ボディーガードのリーダーに相手を見て判断してもらってください。」「わかった。相談してみる。」「では、こちらもそのつもりで準備します。お出かけは午後からで、フロントに予定を言ってから出発してください。奴らが情報待ちしていますから。」涼禾と隼翔は驚くことばかりで、心が付いていけなくなっていた。「最近て、みんなこうなのか?」「さあ、どうなんでしょう。」疲れた様子の二人に対し、陽亮と夏蓮は既に嬉々として鞄の中からいろいろ取り出し楽しそうに準備を始めていた。準備ができると、午前中はホテルの中の庭を散歩したりカフェでお茶を楽しんだりしてのんびり過ごした。ついでにコンシェルジュで周辺の観光案内を聞いて、午後は近くの観光牧場で過ごしたいので必要な予約をお願いしたいと頼んだ。昼食を終え、斉藤から『準備完了です。』のメッセージを受け取ると、予約していた車に乗って出掛けて行った。山の中腹にあるこの施設は、斜面を利用した牛の放牧場や乗馬体験施設、動物ふれあいコーナーなど様々な施設が設けられている。多くの人達が思い思いの所で自然と動物に親しんでい
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第100話

涼禾たち四人は、生クリームをたっぷり使ったプチケーキやジュースでおやつを楽しんでいた。すると、先程連絡のあった大学生風の四人組がふざけ合いながら背後を通り過ぎる時に、躓いたフリをして涼禾と隼翔にジュースをかけてきた。二人はまさかこんな手でくるとは思わず、避けきれずに隼翔は肩口にオレンジジュースを、涼禾は胸元にメロンジュースをたっぷり浴びてしまった。「すみませ〜ん。ふざけててつい、…。」「本当にごめんなさい。早くトイレで流してきた方がいいですよ。シミになっちゃいますから。」「そうですよ。心配しないで、荷物やお子さんたちは僕たちが見ていますから。」「早く早く、どうぞ。」と、言われて隼翔は、『何てわかりやすい手なんだ。ばかばかしい!』と、ムッとしながら涼禾を見ると、薄手の淡いピンクのブラウスの胸元が黄緑の液体でぐっしょり濡れて下着が透けて見えていた。困ったような顔でハンカチで水気を拭き取ろうとしている彼女を見た隼翔は、その瞬間カッとしてしまい、「何て事を!」と彼らを睨みつけ、咄嗟に椅子に掛けていた自分のジャケットを涼禾の肩に掛け、双子を両手に抱き抱えてトイレに向かおうとした。慌てた双子は隼翔の肩を叩いて、「パパ!ぼくたちだいじょうぶだから、早くママをつれて行ってあげて。」「わたしたちおねえさんたちとまってるよ。」と声をかけた。あっ、と我に返った隼翔は、「そ、そうか。じゃ、ここで待っててくれるか。すみませんが、すぐに戻りますので二人をお願いします。」「はい、私たちのせいですからちゃんと見ていますよ。」「心配しないで行ってきてください。」と言われ、二人を心配そうに見た後、涼禾の肩を抱き寄せながらトイレの方へ向かって行った。手を振りながら二人を見送っていた四人組は、二人が充分に離れるのを待って、男二人が陽亮と夏蓮を一人ずつ背後から腕を回して抱き抱えた。「わっ!おじさんたち何するの!」「やめて!はなして!」と、一応抵抗して見せた。「大丈夫だよ。君たちが可愛いから、少しだけ抱っこさせてよ。」「パパとママは暫く戻って来れないから、あっちのウサギさんを見に行こう。」と言って、人の少ない道に向かって行った。二人は大人しく抱っこされているフリをして男の首に腕を回して襟の後に盗聴器を付けた。「あんまりとおくに行くとママたちがしんぱいするよ〜
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