All Chapters of いつかの一枚のために: Chapter 61 - Chapter 63

63 Chapters

第61話

「おばさま、先日はありがとうございました。その上、今日はこんなに沢山のおみやげまで。本当にありがとうございます。」 「「ありがとう〜。」」 「あら、もう着いたの?最近出来た鉄道最速便てホントにすごいわね。喜んでもらえたようで良かったわ。あら、今何かメールが届いたみたい、ちょっと待ってて。」 一旦切れたあと、少ししてかかってきた時は、 「もしもし、かわいい動画をありがとう!」 と、嬉しそうな声が返ってきた。 続いて健人の携帯には倫太郎と隼翔から自分にも動画を送れと催促のメッセージが入った。 江崎家からの温かい心遣いが安藤家の皆の心も温めてくれた。 夜になり、颯太も一緒に今回の合同作業期間の様子の報告と、これからについて話をした。 「涼禾に動画を送ってきたり、音楽教室で何組かの親子に探らせたりしたのは、その入江さんとその仲間たちという可能性が高いってことだね。やっと相手が見えてきたね。」 「そうだね。仲間のもう1人は秘書室の園田さん。彼女は涼禾がいた時同じプロジェクトのメンバーだったそうだ。」 「あとは、瀬川側にいる誰か。果奈さんのアシスタントか、兄の瀬川社長の秘書室の誰か辺りだと思う。」 隼翔か江崎グループかの関係での相手はようやく見当をつける事が出来た。証拠を見つけて告発するか、これ以上関わってこないよう対策をするのか検討していくことにした。 イベントまで約二カ月、仕事に加えて涼禾にはもう一つ準備するものがあった。 それはイベントのパーティーで隼翔と着る衣装だ。両家はそこで二人の婚約を発表するつもりだった。それに相応しい衣装を涼禾自身がデザインしたいと申し出た。 ようやく昔の感覚が戻ってきた気がしてきたので、復帰第一作を自分たちで身につけたいと考えたのだ。 涼禾の気持ちを聞いて家族も賛成した。 そこで、例の物件を実際にアトリエにしてそこで製作することにした。そこで働くスタッフは一般に募集し、代表は『安藤』の関係者が務めるのだ。 いざスタッフを募集してみると、応募してきた中に2名ほど違和感を感じる人がいた。 人を雇って調べてみると、その内の1人が江崎グループの入江の知人だとわかった。 「これはもう確定だね。」 結果を聞いた健人が言った。颯太も、 「いわゆるスパイって奴?」 「今度は何をするつもりだろう。」 隼
last updateLast Updated : 2026-03-20
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第62話

「そうね、顔も彫りが深くて素敵よ。きっとよくお似合いになると思うわ。」「へぇー、会ってみたいなあ。でも確かお揃いの色のドレスも作っていますよね。もしかしてご夫婦とか?」「いいえ、まだご結婚はされていなかったと思うけど。」「と言うことは婚約者?」「さぁ、どうだったかしらね。随分興味津々ね。」「それは…、イケメンのことは気になりますよ。ところで、このスーツとドレスのデザインって安西さんがされたのですか?」「………。残念ながら私ではないのよ。知り合いのデザイナーの人が考えたものよ。」「そうですか。素敵ですね。」安西は、予想していたとはいえ少し残念な気持ちになった。沢辺がスパイかもしれないとは聞いていたが、今の所実力もあり、よく働く好ましい人材だと思っていたのだ。しかし、沢辺に気づかれるわけにはいかない。何事もなかったように、「おしゃべりはそこまでにして、しっかり仕事をしなさい。」と作業に集中させた。この報告を聞いた隼翔は、早速颯太たちとオンラインで相談した。「やっぱりそうだったんだ。今度は何をするつもりだろう。」「よくあるのは製作過程で失敗を装ってだめにするとか。」「デザインを盗んでコピーを作って恥をかかせるとか。」「仕上がった服に細工をしたりわざと汚したりするとか。」「どれもありそうだね。」「どれも腹が立つよ。」「仕方ない。もう一着、別のところで作ることにしよう。」このアトリエは、当分の間涼禾の作品を作るという計画を諦め、相手の出方を見る為の場所にすることにした。ゆっくり製作をしていたスーツとドレスは、ひと月ほどして仮縫いが完成した。ここまでは問題なく進んだので、相手方の動きを促すために一つ仕掛けて見ることにした。安西がスタッフを集めて真剣な表情で説明を始めた。「今から話すことはまだ公表されていないことなので、皆さんには決して口外しないようにお願いします。」何だろうと興味津々の者や、気を引き締めるかのような真剣な表情の者など、スタッフたちの反応は様々だった。「先日仮縫いが出来たスーツとドレスですが、3週間後に行われる江崎グループと安藤との合同イベントのパーティーで使用されます。着用されるのは江崎グループの社長の隼翔氏と安藤の令嬢の涼禾さんで、その場でお二人のご婚約が発表される予定です。」「「「ええ〜っ?!」」」「「
last updateLast Updated : 2026-03-20
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第63話

翌日、予定通りの時間に現れた隼翔は、噂通りの長身でスタイルも良く、何よりも顔が素晴らしく整っていた。そして、やはり噂通りの冷淡な表情だった。出迎えたスタッフは緊張した面持ちで対応し、安西とも軽く挨拶をしただけですぐに更衣室へと入っていった。暫くして、涼禾が店に到着した。同じく緊張した表情で出迎えたスタッフは、涼禾を見るなり想像以上の美しさに目を奪われ一層緊張が増していった。しかし、涼禾が隼翔と違い穏やかな笑顔を浮かべながら「皆様、今日はよろしくお願いします。楽しみにしていましたので、試着出来るのがとても嬉しいです。」と丁寧に挨拶をしたので、ほっとして緊張もほぐれ、和やかに案内していった。既に着替え終えた隼翔が、待合室で待っていると、「安藤様の準備ができました。」と声がかかった。隼翔は素早く立ち上がると入り口の方に向かい、涼禾が入ってくるのを待った。間もなくスタッフに手を取られ入って来た涼禾を眩しげに見つめた後、満面の笑顔で手を差し出し涼禾を迎えた。「綺麗だよ、涼禾。パーティーが待ち遠しい。」「ありがとう、隼翔さん。あなたもとても素敵よ。」美しく着飾った美男美女の仲睦まじい様子に、そばで立ち合っていた一同は感嘆のため息を漏らした。特に、来たときとは別人のような隼翔の甘やかな微笑みには女性のみならず一同が見惚れてしまった。一方で、その衣装を自分たちが創り上げるのだという誇らしさに満ちていた。 沢辺もまた、その一人だった。しかし、自身に課せられた役割を思うと、途端にずしりと重いものが心にのしかかった。沢辺は小さい頃からかわいい洋服が大好きだった。「お母さん、今度のお誕生日にはピンクのワンピースが欲しいの。」「いいわよ。今年は仕事も忙しくないし、世界に一つだけのかわいいのを作ってあげる。」彼女の母は服飾メーカーで縫製の仕事をしていた。なので娘のために心を込めて彼女の望む服を縫ってくれた。とはいえ、さほど裕福ではなかったため、高価なドレスなどは手が出ない。せいぜい誕生日やお正月などに着る、少しおしゃれな服を作る程度だった。彼女は成長するにつれ、自分も相手に喜んでもらえるような服が作れるようになりたい、と思うようになった。専門学校で勉強する傍ら、メーカーのデザイン室でアルバイトをして実践的な経験も積んでいった。卒業後、友人と共同で小
last updateLast Updated : 2026-03-21
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