「遅くなりました。ただいま戻りました。」「おかえりなさい、亮。」「今年はどうしてこんなに遅くなったの?」「実は、今年からこっちの大学に行くことにしたんだ。だから、手続きや住んでいた所を片付けたりで時間が掛かってしまったんだ。」「えっ?向こうの大学を辞めちゃったの?」「まぁ、形はそうかな。向こうを辞めてこっちでまた新しく入ったんだ。でも、単位とかはかなり引き継げるから、実質は転入したようなものだよ。」「で、どこの大学?」「王塚医科大学の大学院。」「だったら東都の家から通えそうね。」「うん、姉さんたちも秋から東都に住むんだろう。もう家は決まったの?」「ええ、会社からも江崎家からも近いから住みやすいと思うわ。今はまだリフォーム中よ。」「おじさんはあたらしいおうちの近くに住むの?」「そうだよ。これからはすぐに会えるようになるよ。」「やったー!」「そうたおじさんやけんじおじさんとあまり会えなくなるからさみしかったの。だからうれしい!」「二人の代わりとまではいかないけど、仲良くしようね。」「「うん!たのしみ。」」以前に住んでいたとはいえ記憶が曖昧な今、涼禾にとっては心強い嬉しい知らせだった。その夜は、安藤家の皆に温かく迎えられ楽しく過ごした。翌日の午前中、涼禾と亮は書斎を借りて二人で話をしていた。「そうか、姉さんかなり記憶が戻ってきたんだね。確かに母さんは“絵の中を見て”って言ったと思う。だから家にあった絵を全部姉さんと一緒に見たんだ。でも、何も分からなかった。だけど、書類は幾つか気になるものが見つかっていたんだ。。」「どんな?」「技術提携依頼書とか秘密保持契約書とか。」「どことそんな契約を?」「漢方を扱う製薬会社だったと思う。問い合わせても当然ながら何も教えてもらえなかった。」「それは、仕方ないわね。」「残ってた資料とかを見て、まずはその意味が分かるようになるしかないと思って勉強してきたんだ。それでようやく二人が手掛けていたのが、感染症の後遺症を改善する薬だったと分かった。それからはその薬をを再現できるように研究を進めて行くうちに、とんでもないことが分かった。」「とんでもないこと?」「うん。父さんと母さんの契約していた会社が、感染症の回復薬を開発して話題になっただろう?あれ、実はまだ未完成だったんだ。」「未完成?それ
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