All Chapters of 転生したら推しに激似の席隣男子がいました!?: Chapter 161 - Chapter 162

162 Chapters

第160話(最終話)

春が訪れた。桜は校庭いっぱいに咲き誇り、風が吹くたび、花びらは校舎から運動場へと舞い落ちる。まるで、やさしい雪が降っているようだった。そして――この学校から怪談は姿を消した。黄昏教室も。四列目の本棚も。午後六時を過ぎると流れ始める校内放送も。あの不気味な噂の数々は、まるで最初から存在しなかったかのように、静かに消えていった。時は変わらず流れ続ける。誰もが、それぞれの人生へと戻っていった。卒業式当日。空は雲ひとつない快晴だった。講堂には卒業生と保護者がぎっしりと集まり、壇上では教師が祝辞を述べている。真面目に耳を傾ける者もいれば、こっそり隣と話し込む者もいる。机の下で手紙を回している生徒までいた。それは、これまで幾度となく過ごしてきた、ありふれた学校の日常と何ひとつ変わらない光景だった。航平は席に座り、窓の外を舞う桜をぼんやりと眺めていた。「航平。」ふいに隣から声がする。振り向くと、神谷澪が頬杖をつきながらこちらを見ていた。「卒業式でもぼーっとしてるの?」航平は苦笑する。「お前に言われたくない。」澪はくすっと笑った。昔と変わらない笑顔。けれど、その瞳だけは以前よりも少しだけ穏やかで、ときおり、長い長い歳月を生きてきた人のような静けさを宿している。――そう思った次の瞬間。彼は手にしていた紙玉を、ぴん、と航平の額へ弾き飛ばした。「何見てるんだよ。」「ちゃんと聞け。」「……。」航平は額を押さえてため息をつく。……やっぱり。こいつは何も変わっていなかった。卒業式が終わると、生徒たちは次々と講堂を後にした。校内のあちこちでは記念写真を撮る人たちで賑わっている。泣いている者。笑っている者。「また会おう」と約束を交わす者。勇気を振り絞って想いを伝える者。青春とは、きっとこういうものなのだろう。賑やかで。そして、あまりにも短い。校舎裏へ回ると、奥田が一本の桜の木の下に立っていた。手には卒業証書。何を考えているのか、静かに花びらを眺めている。「奥田。」声をかけると、彼はこちらを振り向き、小さくうなずいた。「終わったな。」航平は微笑む。「ああ。」終わった。たくさんの出来事が。そして同時に、たくさんの物語が、今ようやく始まろうとしている気もした。梢を風が
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番外 「夕焼けの向こう」

春になった。卒業から一か月。桜はすでに散り始め、街路には淡い花びらが薄く積もっている。高校の制服を着ることはもうない。毎朝乗る電車も。歩く道も。何もかも変わった。それでも、夕焼けを見るたびに、航平はあの日々を思い出してしまう。黄昏教室。旧校舎。図書館。そして、共に過ごした仲間たち。大学の講義を終え、改札を出ようとしたとき、スマートフォンが震えた。画面には短いメッセージが表示される。――『今日、時間あるか。』送り主は奥田だった。航平は少し驚いた。奥田から個人的に連絡が来ることは珍しい。『あるけど。どうした?』数秒後。返事が届く。『学校に行かないか。』たったそれだけだった。夕方。二人は卒業した高校の正門前で落ち合った。校舎にはもう人気はない。新入生は新しい校舎を使うことになり、旧校舎は来月には取り壊されると聞いていた。「急に呼び出して悪かった。」奥田が言う。「いや。」航平は門の向こうを見つめる。「俺も、一度来ようと思ってた。」二人はゆっくりと校内へ足を踏み入れた。放課後の校庭。部活動の掛け声。体育館から聞こえるバスケットボールの音。どれも高校時代と変わらない。変わったのは、自分たちだけだった。「懐かしいな。」「……ああ。」言葉は少ない。それでも沈黙は苦しくなかった。奥田とは昔からそうだった。無理に話さなくても、一緒に歩いていられる。それだけで十分だった。旧校舎の前に着く。立入禁止の黄色いテープが張られ、窓ガラスには夕陽が赤く映っていた。航平はふと笑う。「結局さ。」「本当に終わったんだな。」「ああ。」奥田も静かにうなずく。「怪談も。」「管理者も。」「全部。」風が吹く。窓辺のカーテンが小さく揺れた。その光景に、二人は同時に足を止める。まるで、誰かがまだそこにいるような気がした。しかし教室の中には誰もいない。静かな時間だけが流れていた。「最近。」奥田がぽつりと口を開いた。「夢を見る。」航平は横顔を見る。「図書館の夢か。」「……知ってたのか。」「卒業式の日に言ってただろ。」奥田は苦笑した。「そうだったな。」しばらく黙って歩く。「夢の中で。」「本棚を歩いている。」「何かを探してる。」「でも、何を探してるのか分からない。」「最後にな
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