ライトや彰兄さん。馳川家の人たちと過ごす穏やかな毎日の中で、僕は春菜だった頃よりのびのびと暮らしていた。 そんなある日、事件は起こった。 いつものように彰兄さんの運転で、父さんのお墓がある共同墓地に向かっていた。すると、ライトがいつも右折する交差点手前で、反対側に向かって吠え始めた。 「ウォン! ウォン!」 窓ガラスをガリガリと引っ掻き、外に出ようとしている。 「ライト、どうした?」 落ち着かせようと撫でても、止めようとしない。 「彰兄さん、ライトが何か訴えてる。……もしかして、瘴気があるのかも」 そう訴えると「春馬、あっちは狗飼家が守護する陣地だ。お互いに、縄張りを越えない約束になっているんだ」 と言われてしまう。「それなら、僕とライトだけで行く!──だから、ここで降ろして」ドアを開けようとする僕に、彰兄さんは深い溜め息を吐くと 「分かったよ。その代わり、猫柳家に連絡して狗飼家の陣地に入って瘴気を払う連絡をしてもらってくれる?」と言われた。僕は心の中で (なんだよ、そのシステム!)と思いながら、ライトが吠える方向に向かいながらじいちゃんに電話をした。じいちゃんの話では、今、狗飼家の陣地に瘴気が大量発生しているらしい。緊急事態なので、見つけて祓っても越権行為にはならないらしい。彰兄さんにじいちゃんの話を伝えると「全く……、狗飼来人は何をしているんだか!」とぼやいた。「え?」僕が驚くと「この辺は、狗飼来人が祓ってるんだよ。実際、狗飼来人が来てからの方が、瘴気が増えているんだよ」そう答えたのだ。『ザワリ』と胸がざわついた。僕の脳裏に、竜ヶ峰の姿が浮かぶ。彼の纏う空気は、黒く澱んでいた。あの頃、自分を守ることに必死で、竜ヶ峰の異変に気づく余裕なん
Last Updated : 2026-02-12 Read more