Semua Bab 犬猿の仲……いいえ、犬猫の仲です: Bab 51 - Bab 60

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第四十九話:幸せな日々

「春馬、ちゃんとご飯食べてる?」「食べてるよ!」「まぁ、この態度! 来人君、甘やかしてない?」「春馬はよくしてくれていますよ、お義母さん」「まぁ、来人君って本当に良い子」和やかに話す二人。母さんと狗飼家のご当主が結婚してから、毎月一度、家族揃って食事をするようになった。最初こそ、ご当主は居心地が悪そうにしていたが、今ではこんなやり取りを穏やかに見守っている。「春馬君は、不便なことはないか?」ふいに話しかけられ、「はい、大丈夫です」思わず背筋を伸ばしてしまう。「春馬……まだ慣れないのかよ」呆れ顔の来人に、(お前が馴染みすぎなんだよ!)と、心の中で毒づきながら、必死に作り笑いを浮かべる。……ご当主には、春菜が僕だということを母さんから話してもらった。どう話したのかは知らないが、ご当主は安心した顔をして涙したらしい。そして、来人がかなり強引に話を進めたことも伝えたらしく、ご当主は頭を抱えていたという。でも母さんが、「今は春馬が一緒にいるから、大丈夫よ」と言い切ったらしい。(何が大丈夫なんだろう?)そんなこんなで、僕たちは穏やかな日常を過ごしていた。「ライトも、春馬をよろしくね」「ワン!」母さんの言葉に、ライトが尻尾を振りながら元気よく吠えた。猫柳家の当主だった母さんには、予知の能力がある。はっきり見える時もあれば、断片的に見えることもあるらしい。でも母さんは、そのことを本人に決して伝えない。母さん曰く、「未来は変えられるから、余計な不安を与えたくないの」らしい。……けれど、僕は多分、面倒くさいだけだと思っている。でもこの後、母さんのこの言葉の意味を知ることになるなんて――この時の僕は、まだ想像もしていなかった。
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第五十話:不安の渦

明け方、悪夢で目が覚めた。僕を抱き締めて眠る来人の腕からそっとすり抜け、ガウンを羽織ってリビングへ向かう。ライトはいつもの場所で、大人しく眠っている。冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、グラスに注いでソファーに腰掛けた。「はぁ……」あの日から、悪夢を見る回数が増えた。それはいつも、来人が竜ヶ峰の手を取り、僕から離れていく夢。走っても、走っても追いつかない。手を伸ばしても届かない。『来人、待って! 行かないで!』叫んでも……声は届かない。いつも、そこで目が覚める。ソファーの背もたれに身体を預け、手の甲で瞼を覆った。あの日、フードを被った男を見てから、もう半年が過ぎた。それでも……胸の奥で、不安が渦を巻いている。その時、腰のあたりに温かい感触が触れた。見下ろすと、ライトが僕の隣に来て座っている。「ごめん、ライト。起こしちゃった?」そっと頭を撫でると、ライトは幸せそうに目を細めた。薄暗い室内の窓の外には、月明かりに照らされた小さな庭。穏やかで、幸せな日々。来人が愛してくれている実感はある。それでも……。僕の中で、春菜だった頃に受けた傷は、まだ癒えていないのだと――思い知らされる。竜ヶ峰は、本当に綺麗な人だった。それに比べて……僕は、ちんちくりんだ。番だから――来人に選ばれただけ。ふと、そんな思いが頭をよぎり、僕は小さく首を振った。「くぅ~ん」ライトが心配そうに鼻を鳴らすと、僕の頬をぺろりと舐めた。「あはは、ライト。くすぐったいよ」その時、リビングの明かりが灯った。「春馬、どうした?」隣にいない僕を心配したのだろう。お揃いのガウンを羽織った来人が立っていた。「あ……ごめんね。ちょっと夢見が悪くて」苦笑いを浮かべると、来人はライトの反対側に腰掛け、僕を抱き寄せた。「大丈夫だ。俺が傍にいる」「来人……」見つめ合い、唇が重なる。それを見届けたライトは、静かに自分のクッションへ戻っていった。唇が首筋を辿り、ガウンの合わせから手が差し込まれる。「来人、ちょっと待って……」「待たない。安心しろ、悪夢なんか見せないようにしてやる」そう囁かれ、「待って……明るい部屋は、恥ずかしいよ……」頬を染めて呟くと、来人は天を仰いだ。リモコンを手に取り、部屋の明かりを落とす。そしてガウンの紐を解き、前を
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第五十一話:竜ヶ峰祐希

「春馬、これでも飲んで落ち着け」 来人はそう言って、はちみつホットミルクを差し出した。 僕はそれを受け取り、ゆっくりと口に含む。 少し甘いホットミルクに、ほっと息を吐いた。 「ありがとう」隣に座る来人に凭れると、肩を抱き寄せられる。 「何があった?」そう聞かれて、身体がびくりと震えた。正直、竜ヶ峰の話をするのは怖い。まだ来人の中に竜ヶ峰がいたら……そう思うと、身が縮む。それでも、安心させるように肩を抱いてくれる来人を──信じたい気持ちもあった。マグカップを包む手に、力がこもる。僕は意を決して来人を見上げた。 「来人……あの垣根の向こうに、竜ヶ峰がいた」その瞬間、来人の身体がビクリと強ばる。そして立ち上がると、そのまま外へ飛び出した。 「来人!」制止する間もなく、来人は外へ走り出し、辺りを見回していた。僕は急に消えた来人の温もりを求めるように手を宙へ伸ばす。制止しようと差し出した手を、ゆっくりと下ろした。俯いていると、玄関のドアが開閉し、施錠する音が響く。ぺたぺたと素足の足音が近づき、僕の隣で止まった。ギシッとソファーが沈む音と同時に、頭ごと抱き締められる。 (え……?)驚く僕に、来人が言った。 「なんつー顔してんだよ。俺が祐希のところに行くとでも思ってるのか?」少し呆れた声だった。 「さっき見に行ったのはな、春馬の呼吸が止まったのが祐希のせいなら捕まえなきゃと思っただけだ。他に理由なんてねぇよ」その言葉に、僕はゆっくりと顔を上げる。来人は僕の首に腕を回し、額をコツンと当てた。 「そんなに傷付けてたんだな。ごめん」そして静かに言った。 「でもな、春馬。俺が愛してるのは、お前だけだよ」真っ直ぐ見つめられて、そう言われる。もう一度抱き締
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第五十二話:優しい手

「ライト」「わん!」明るい笑い声が聞こえる。「来人、ライトのご飯早く」「分かってるよ。ほら、ライト、待て」ライトと名付けられた犬が、尻尾を振りながら大人しく待っている。「来人! 早く、良ししてあげなよ」「春馬、世の厳しさをライトにも教えないとな」「ライト、良し!」「あぁ! 春馬!」二人の楽しそうな声が響いた。ライトは勢いよくご飯に飛びつき、尻尾を大きく振っている。そんな様子を見て、春馬が嬉しそうに笑った。その笑顔を見つめながら、来人も穏やかに微笑んでいる。……幸せそうな笑顔。あそこは、ちょっと前まで僕の場所だった。胸の奥が、じくりと痛む。許さない。僕から居場所を奪った猫柳春馬も。僕を裏切った来人も。「きみ、大丈夫?」幼かったあの日。僕に差し出された、優しい手。泣いていた僕に、何の躊躇もなく差し伸べられた温かな手。それだけを支えに、僕はここまで生きてきた。……来人は、きっと覚えていないんだろう。ダークグレーのフードを目深に被る。あの日──呪詛を浄化された時、僕の右腕には火傷の跡のような痣が残った。その痣が、じくりと痛む。この傷が疼く度、僕の憎しみは蘇る。精々……今は幸せを噛み締めているがいい。その笑顔が、いつまで続くか。僕は気配を消すと、再び人混みの中へと姿を隠した。
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第五十三話:ひと時の幸せ

朝食の用意をしていると、来人が難しい顔で新聞を読んでいた。「来人、どうしたの? そんな難しい顔して」テーブルに朝食を並べながら声を掛けると、来人は新聞を畳みながら小さく呟く。「怪異事件が増えてるな……」「それって……」「あぁ……間違いなく祐希が絡んでいるだろうな」来人は深く溜め息をついた。「あまり、罪を重ねて欲しくは無いんだけどな」そう呟いた横顔は、どこか悲しそうだった。ソファーに座る来人を見つめていると、来人が手招きをする。何? 何? と近付くと、来人は僕の腰を抱き寄せ、そのままお腹に頭を埋めた。無言で来人の髪を撫でる。すると来人が、ぽつりと呟いた。「祐希を暴挙に舵を切らせたのは、俺の責任だ」「もっと上手く別れられていたら……って思うと、堪らなくなるんだ」震える来人の声。僕の腰を抱き締める腕に、ぐっと力がこもる。「年月が長くて、関係が深いほど……綺麗になんて別れられないよ」そう言うと、来人は僕のお腹に頭をグリグリと押し付けた。こんな時、僕は上手い言葉が見付からない。何て言えばいいのかと悩んでいると、僕に甘えている来人を見て、ライトが目を輝かせていた。『何か、新しい遊びですか?』そんな顔をしている。僕は視線で合図を送った。――ライト、GO!するとライトは「わん!」と一声鳴き、来人に飛び付いた。「え? はぁ? ライト! お前、重い!」ライトは大喜びで来人にタックルし、そのまま押し倒す。そして顔面をベロベロ舐め始めた。「バカ! ライト、止めろ! 春馬、止めろ! ライトが舌入れて来る!」ライトに押し倒される来人を見て、僕は思わず大爆笑した。「春馬……お前の仕業だな!」ライトの涎でベタベタになった来人の顔に、思わずドン引きする。「来人、その顔……やばいよ」「誰のせいだよ!」「ライトのせいだろう? なぁ、ライト」「わん!」なぜか得意気に吠えるライトに、僕と来人は顔を見合わせて吹き出した。「ライト、サンキューな」頭を撫でてやると、来人が立ち上がりながらぼやく。「あ~あ、服もベタベタだ」そう言いながら、来人は浴室へ向かって歩き出した。「来人、シャワー浴びたら朝食にしよう」僕の声に、来人が振り向き、ふっと笑顔を浮かべた。
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第五十四話:三人寄れば文殊の知

それは、朝食を終え、コーヒーを飲んでいた時だった。来人のスマホが鳴る。「どうした? ……え? ……瘴気絡みか……。分かった、すぐ行く」通話を終えると、来人は上着を掴んで立ち上がった。「来人、僕たちも行くよ」僕も上着を手に取る。すると来人は、片手で制した。「一人で行く」ムッとして、僕は声を上げた。「行く! 僕とライトも、一緒に行く!」「ワン!」ライトも賛成するように吠える。来人は俯き、小さく呟いた。「祐希が……居るかもしれない」「え?」「……だから、俺一人で行く」その言葉に、僕は首を横に振った。「それは違うよ。竜ヶ峰がいるなら、尚更、僕も一緒に行かなくちゃいけないと思う」「春馬……」「あ! 誤解しないでよ。来人が信用出来ないからじゃない。竜ヶ峰が憎んでるのは、僕だ。だから僕も行かなきゃいけないんだ」僕の言葉に、来人は再び俯いた。「だから、行かせたくない」ぽつりと落ちた声。「春馬を……危険に晒したくない」真っ直ぐに見つめられて、思わず胸がきゅっと鳴る。「来人……」思わず抱き着きながら言った。「それは僕だって一緒だよ。だから、一緒に戦おう」そう言って、僕は来人にキスをする。「三人寄れば文殊の知恵って言うでしょう?」「三人?」首を傾げる来人の横で、「わん!」ライトが尻尾を振った。「もっと、僕とライトを信用してほしいな」「信用してないわけじゃない」「うん、分かってるよ」真っ直ぐ見つめ返すと、来人が僕の身体を抱き締めた。「絶対、俺が守る。春馬も、ライトも……欠けるんじゃねぇぞ」低く呟く声。きっと来人も分かっている。相手が、簡単な敵じゃないことを。元恋人が――今は敵。なんだか、悲しいな。僕は来人を抱き締めながら、そんなことを考えていた。
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第五十五話:陰から現れたのは……

僕たちが駆け付けた場所は、廃ホテルだった。人が入らなくなった建物には、独特の淀んだ空気が漂っている。来人と車から降りると、早速ライトが吠え始めた。「これはこれは……狗飼家の恥晒しがお出ましですか?」建物の中から、見たことのない男が現れ、来人に言い放った。短く切り揃えた髪。神経質そうな眼鏡。しかも瘴気を祓いに来ているのに、スーツとか……笑。──と、心の中で毒づいていると、「おや? そちらは最近、猫柳家の元当主・咲月様の連れ子の……あぁ、春馬さんでしたか?」嫌味たらしく言われ、僕は来人の後ろに隠れた。来人は僕の前に手を広げ、「相変わらず嫌味ったらしい奴だな。神蛇直己」と吐き捨てた。来人の言葉に、はっとする。蛇一族の長──神蛇家。その嫡男か……。「まったく……きみのお陰で、とんだとばっちりですよ」直己は眼鏡をクイッと上げながら呟く。「祐巳一族の残党と恋仲だったなんて……汚らわしい」見下すような視線に、「なっ!」思わずキレそうになったその時だった。「わんわんわんわん!」ライトが激しく吠え始めた。しかも、瘴気にしか見せない牙を剥き出しにして唸っている。それを見て、来人は吹き出した。「おい、直己。お前のくそ曲がった根性、瘴気並みみたいだな」「うちの名犬が、瘴気にしか見せない顔してるぞ」そう言ってから、「ライト、待て」一声でライトを制する。──その姿が、めちゃくちゃカッコいい。「おい。お前が始末できない瘴気を、始末しに来てやったんだよ」「嫌味言う暇があるなら、さっさと帰れ。邪魔だ」来人はそう言うと、手から光の剣を作り出した。毎回思うけど、この時の来人は本当にカッコいい。もう何度、僕の胸をキャン死にさせるんだよ──と、心の中で叫ぶ。そんな僕に気付くこともなく、来人は剣を一振りして言った。「ライト、春馬。行くぞ」「わん!」ライトは大きく吠えると、物凄い速さで走り出した。僕は神蛇直己に一礼すると、来人とライトの後を追った。中は真っ黒な瘴気に覆われていて、息をするのもきつい。「来人、浄化するよ!」首に掛けていた麻紐の麻袋を外し、翡翠の勾玉に息を吹きかける。そして──パンッ!柏手の音が響いた瞬間、瘴気が一気に浄化された。ホッと息を吐き、来人を見る。だが来人は、目を見開いたまま立ち尽くしていた
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第五十六話:竜ヶ峰と来人

「やぁ、来人。久し振り」竜ヶ峰は、まるで知人にでも会ったかのような軽い挨拶をすると、「随分と……幸せそうだね」そう言って、小さく笑った。「そこに居る、女のフリして狗飼家に嫁に来ていた本妻様も──お久しぶり」嫌味たっぷりに言われ、僕は何も言えなかった。「おかしいと思ったんだよ。あんたは大人しく死ぬタマじゃない。僕から来人を奪って、どんな気分?」そう言われて、僕は俯いた。すると来人が、僕の前に立ちはだかった。「罵倒するなら、俺にしろ! 春馬は悪くない!」そう叫ぶと、「ははははっ!」竜ヶ峰は狂ったように笑い出した。「罵倒するなら、俺にしろ? 春馬は悪くない?──ふざけんな! どこまで僕をコケにしたら気が済むんだよ!」竜ヶ峰の声が、廃ホテルの中に響き渡る。「僕を捨てて、さっさと猫柳家のソイツに鞍替えしてさ。幸せそうに、犬まで飼いやがって!」竜ヶ峰が来人に叫ぶ。「僕がペットが欲しいって言った時……お前、なんて言った?」来人は俯き、唇を噛み締めている。「なに? 今の恋人の前では言えない? そうだよな!僕が可愛がった動物に嫉妬するから、ペットは禁止だって言ったよな!」竜ヶ峰の叫びに、来人は何も答えなかった。「お前はいつもそうだ。都合が悪くなると、そうやって黙り込む。お前に分かるか? 狗飼家で、ずっと情夫扱いされた僕の気持ちが……。だから、ペットが欲しかった……」竜ヶ峰の言葉は、心を突き刺す刃のようだった。「それなのに、猫柳春馬は男なのに嫁扱い。しかも、お前の名前を付けたペットまでいるなんて·····。理不尽じゃないか!」竜ヶ峰が叫んだ瞬間──空気が刃となって、僕たちを襲ってきた。「祐希、止めろ!」来人が僕たちの前に光の壁を作り、刃を防いでくれた。「祐希だって?気安く呼ぶな、裏切り者!」そう叫ばれた瞬間──来人が、一瞬だけ傷付いた顔をした。「僕は……本当に来人を愛してた。僕にとって、来人が全てだった。そんな僕を、お前は……あっさり捨てた。そいつと一緒になる為に!」竜ヶ峰の叫びに呼応するように、黒い瘴気が集まり始める。「許さない……」「許さない」「許さない」「許さない!」「僕を裏切った来人も、僕から来人を奪った猫柳春馬も·····消えちゃえ」竜ヶ峰が呟いた瞬間、黒い瘴気が、僕たちを覆い尽くした
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第五十七話:瘴気と来人

一気に瘴気に包まれた僕たち。 茫然自失の来人の身体を揺すると、来人はハッと我に返った。 「春馬、祐希は?」 そう叫ぶ来人の頬を、僕は両手で掴んだ。 「しっかりしなよ! 今は竜ヶ峰より、この瘴気をなんとかしないとダメでしょう!」 今は勾玉が、僕と来人とライトを守ってくれている。 でも、早く祓わないと、それも長くは持たない。 「すまない……春馬」 来人は、僕の手にそっと自分の手を重ねた。 「竜ヶ峰のことがショックなのも、心配なのも分かるけど……今はこの場所を浄化するよ」 「あぁ……」 そう言って、来人が僕の腰を抱き寄せた。 「え? 何してんの?」 「何って……キスだろ?」 「はぁ? なんで?」 慌てる僕に、来人がニヤリと笑う。 「だって、俺たちの浄化って言ったら、金の粉だろ?」 「あ……あれは、来人を助けようとして」 「実際、俺の神剣とお前の祝詞で祓える量じゃねぇだろう?」 そう言って、顔を近付けてくる。 「待て、来人。竜ヶ峰が、まだいるかもしれないだろう? いいのかよ、見られて」 必死に抵抗する僕に、来人はお構いなしにグイグイ迫ってくる。 「祐希なら、もういないよ……」 一瞬、悲しそうな声で呟くと、来人は続けた。 「いたら、ライトが落ち着いてないだろう?」 そう言って、ライトの方を見る。 ライトは、僕たちの攻防戦を『見ていられません』という顔で、そっぽを向いて寝ていた。 戦いを重ねて、ライトも僕と来人の傍には結界が張られているのが分かるらしい。 瘴気の元や、僕たちに悪意のある人間がいない限り、落ち着いている。 「ほら、春馬。さっさと祓っちまおうぜ」 そう言うと、来人は僕を抱き締めた。 「別に……僕はしたくないからな! 瘴気を祓うために、仕方なく……」 「はいはい、うるさいお口は塞ぎます」 そう言われて、顎を掴まれ、唇を塞がれてしまう。 すると、僕と来人の身体が光り出し、その光が天を突き抜けた。 そして、キラキラと輝く金の粉が空から降り注ぎ始めた。 「ん?」 もう浄化の粉が降っているんだから、いいよな……と思っているのに、キスが終わらない。 「ん? ……んんっ!」 来人の背中を叩くと、ようやく唇が離れた。
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第五十八話:大切だった人

珍しく来人がケンカ腰で話しているので、僕は抱きしめられたまま大人しくしていた。すると、神経質そうな「神蛇」と呼ばれた男は、鼻で来人をあしらうと「お前には用はない、バカ息子」とか言いやがった。僕がカチンときて言い返そうとすると、来人が僕をむぎゅっと抱き締めて『黙ってろ』と合図してきた。……だから、仕方なく大人しくした。すると来人が、「悪いが、こいつは俺の番だ。それは狗飼家と猫柳家の連名で、十三家紋に通達が行っているはずだが?」と言い出した。(えぇ!? 聞いてないけど!)僕は来人の胸の中で百面相していた。「なるほど……既に手を回してあると……」そいつはそう呟くと、今度は僕に視線を向けて「ねぇ、きみ。そんなバカ息子と一緒にいるより、こっちに来た方が幸せになれると思うけど?」とか言い出した。僕は心の中であかんべをしながら(お前みたいな嫌味な奴、だ~れが相手するかよ。ば~か)と悪態をついていた。「とにかく、異を唱えるなら……正式な手続きを踏んでからにしてくれ」来人はそう言うと、そのままの状態で「ライト、来い」と叫んだ。「わん!」大人しくしていたライトが起き上がると、犬嫌いなのか、そいつは慌てて「と、とにかく僕は諦めないからな!」と叫んで逃げて行った。「犬嫌いな段階で、お前なんか問題外なんだよ!」来人に抱き締められたまま、後ろ姿にあかんべしながら呟くと、ライトも僕に加勢して「わん! わん!」と神蛇の背中に向かって吠えていた。来人はその光景に吹き出すと「あいつ、子供の頃に犬に尻を噛まれたらしくてさ。それ以来、嫌いらしい」と言って笑っている。「大体、一番の相棒が苦手とか……その時点で無理ゲーだよ」そう呟いた僕に、「なぁ、春馬」と来人が声を掛けてきた。「ん?」「じゃあ、俺は?」そう言われて、思わず来人と見つめ合う。「なぁ……俺は春馬の何?」顔を覗き込む来人に、僕は視線を逸らしてライトを抱き締めながら「……つな人」と答えた。「え? なに?」「……な人だよ」「え? さっきより小さい声になってないか?」そう言われて「大切な人だよ!」と叫んだ。恥ずかしくてライトをぎゅっと抱き締めると、僕の肩を来人が指輪でツンツンとつつく。「なんだよ! 恥ずかしいんだから放っておいてくれよ!」と叫ぶと、
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