「春馬、ちゃんとご飯食べてる?」「食べてるよ!」「まぁ、この態度! 来人君、甘やかしてない?」「春馬はよくしてくれていますよ、お義母さん」「まぁ、来人君って本当に良い子」和やかに話す二人。母さんと狗飼家のご当主が結婚してから、毎月一度、家族揃って食事をするようになった。最初こそ、ご当主は居心地が悪そうにしていたが、今ではこんなやり取りを穏やかに見守っている。「春馬君は、不便なことはないか?」ふいに話しかけられ、「はい、大丈夫です」思わず背筋を伸ばしてしまう。「春馬……まだ慣れないのかよ」呆れ顔の来人に、(お前が馴染みすぎなんだよ!)と、心の中で毒づきながら、必死に作り笑いを浮かべる。……ご当主には、春菜が僕だということを母さんから話してもらった。どう話したのかは知らないが、ご当主は安心した顔をして涙したらしい。そして、来人がかなり強引に話を進めたことも伝えたらしく、ご当主は頭を抱えていたという。でも母さんが、「今は春馬が一緒にいるから、大丈夫よ」と言い切ったらしい。(何が大丈夫なんだろう?)そんなこんなで、僕たちは穏やかな日常を過ごしていた。「ライトも、春馬をよろしくね」「ワン!」母さんの言葉に、ライトが尻尾を振りながら元気よく吠えた。猫柳家の当主だった母さんには、予知の能力がある。はっきり見える時もあれば、断片的に見えることもあるらしい。でも母さんは、そのことを本人に決して伝えない。母さん曰く、「未来は変えられるから、余計な不安を与えたくないの」らしい。……けれど、僕は多分、面倒くさいだけだと思っている。でもこの後、母さんのこの言葉の意味を知ることになるなんて――この時の僕は、まだ想像もしていなかった。
Last Updated : 2026-03-05 Read more