「お前は…… お前だけは──うちの金や権力目当ての連中とは、違うと思っていたのに……」 喉が、ひくりと鳴った。「俺が、どうして女嫌いになったか……教えてやるよ」来人は淡々と続ける。「散々、愛を囁いておいて、瘴気に当てられて醜くなった俺を見た途端、みんな悲鳴を上げて逃げ出したんだ。あぁ──そう言えば『化け物』って叫ばれたこともあったな」来人はそう言うと、暗い瞳で小さく笑った。 「瘴気は、セックスによって吐き出さなきゃ、完全には消えきらない。それを知った途端、女たちは俺を捨てていった。その度、俺は自分が本当に化け物なんじゃないかと思ったよ」──そう、祐希に出会うまでは。そう言って、来人は竜ヶ峰の長い髪を一束掴み、愛おしそうに口づけた。 「来人……人前だよ」わざとらしく頬を染め、逞しい胸にしなだれかかる竜ヶ峰。その光景に、僕の拳は震えた。真実がどうこうは、どうでも良かった。ただ……結局、僕に何も聞かずに竜ヶ峰の言葉を鵜呑みにする来人が悲しかった。だってそれじゃ……、来人を捨てて来た女性たちと同じじゃないか──。来人だって、僕を『猫柳春菜』という女として見ていて、僕個人をみてなかった。たった一年弱の結婚生活だけど来人は結局、僕のなにも見ていなかったのだと。そう、突きつけられたような気がした。
Last Updated : 2026-01-24 Read more