『パリーン』突然、僕が使っていたお茶碗が半分に割れた。「あら、古いからヒビでも入っていたかしら?」馳川の叔母さんが、慌ててお茶碗を片付けた。何だか、胸に嫌な予感が去来する。そういえば……今日、狗飼来人さんの姿を見ていない。ドクリと、胸の中に不安が渦巻く。その瞬間、突然、左側の腕に痛みが走った。「痛っ!」そう言って袖を捲った瞬間、蛇の鱗のような痣が浮かび上がっていた。「春馬、大丈夫か?」彰兄さんが僕の腕を掴むと「呪いだ……」ポツリとそう呟いた。「呪い?」「あぁ、しかも禁術だ。蛇一族に伝わる、禁忌の術だ。しかし……なんで春馬に?」そう呟いた瞬間、彰兄さんはハッとした顔をして何処かに電話を掛けていた。「あ……来人君か? ……え?……分かった。直ぐに向かう」兄さんはスマホの通話を切ると「大変だ。来人君が、瘴気に侵されているらしい」そう言って、上着を掴んだ。「彰君、きみが行ってもどうにもならんじゃろう。ワシが行く」爺ちゃんがそう言って立ち上がると、爺ちゃんのスマホが鳴り響いた。「どうした? ……なんじゃと?そんなバカな!」慌てた様子に、ただならぬ空気を感じて、僕は彰兄さんの服にしがみついた。そんな僕の手に彰兄さんが手を重ねた瞬間、『パンッ!』と音が鳴って鱗のような痣が消えた。その時、何故か、誰かが守ってくれたような気がした。見上げると、彰兄さんの瞳とかち合う。きっと、彰兄さんが守ってくれたんだ──そう思った、その時。「猫柳家の本堂に、瘴気の塊が飛んで来たらしい。急いで戻らないといかん!」そう叫んだ爺ちゃんの声が聞こえて来た。その様子から、緊急事態だと察した。すると母さんが「春馬、来人君を助けに行きなさい」と言い出した。「え?」「多分……来人君は、春馬を庇って呪いを一身に受けている可能性が高いわ」母さんの言葉に、僕は首を傾げた。「なんでそんなこと?」「良いから、行きなさい!」
Last Updated : 2026-02-22 Read more