(結局のところ……) 琴葉は思う。(伊吹に必要だったのは、自立のきっかけだったのかも。世良家で過酷な体験をしたけれど、心根は『琴葉お姉ちゃん』に依存したままだった。大人になりきれずに24歳まで来てしまったんだ) 依存から抜け出した伊吹は、とても頼もしい。(再会した時からこの状態だったら、私も惚れていたかも。……なんてね) 琴葉はコーヒーを飲み干し、再びモニターへと向き直った。「さあ、時間よ。中継のモニタリングを開始して」「はい。メインストリームの映像を第1モニターに回します」 伊吹の操作により、中央の巨大なモニターに、都内の高級ホテルの大ホールが映し出された。 ◇ 画面の中は、眩いばかりの光と熱気に包まれていた。 天井に輝くのは、クリスタルのシャンデリア。 数百人のメディア関係者、投資家、そして各国のIT企業の重鎮たちが広いホールを埋め尽くしている。 カメラのフラッシュが絶え間なく瞬き、会場のざわめきがスピーカー越しにも伝わってくる。 ステージの中央には、巨大な防音ガラスで仕切られた特設ルームが設けられていた。 その中に鎮座しているのは、流線型の銀色に輝く巨大な筐体だ。 琴葉が峻嗣の地下ラボで設計し、構造共振の罠を密かに仕込んだ、あの『完璧なAI』である。 人々はその威圧感のある筐体に目を向けて、熱心に感想を語り合っている。「あれが今日の目玉か」「すごい。見るからに近未来という感じ」「でも世良グループは、以前新素材のお披露目に失敗してるのに。大丈夫か?」「自信があるんでしょ。さすがに二度の失敗はしないはず」 そのような声が聞こえてくる。 やがて、会場の照明が一段落とされた。 ステージにピンスポットが当たり、世良グループ総帥・世良宗佑が重厚な足取りで登壇する。「本日は、我が世良グループ
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