会社の最重要機密が漏洩したせいで、次々と問題が起きていたため、悠斗は重傷の体を引きずって会社に戻らざるを得なかった。取引先からは契約を打ち切られ、莫大な賠償金を請求された。製造元からは支払いを催促され、契約更新も断られてしまった。悠斗は点滴を打ちながら仕事を片付けており、もう全てがめちゃくちゃだった。データ漏洩の件を調べていた秘書が、ついに彩花に行き着いた。「社長、奥様です。社長のパソコンから会社の機密情報をコピーしたのは奥様だったんです。そして、奥様の背後には……誰かいるようです」実は彩花の仕業だということに、悠斗はとっくに気づいていた。しかし、秘書は彩花の背後に誰かいると言う。いったいそれは誰なんだ?すると、秘書は言いにくそうに口を開いた。「黒崎家の人間です」黒崎家の人間?3年前の熾烈な企業間戦争で、自分の策略によってこの街のビジネス界から追い出された、あの黒崎家か?黒崎家が新港市に追いやられてすぐ、黒崎グループの会長がショックで亡くなったということを、風の噂で聞いていた。そういえば、黒崎家のあの遊び人、健二とかいう男がいた。もしかして、あいつの仕業なのか?だとしても、彩花がどうして健二と一緒に?悠斗は訳が分からないのと同時に、心の奥でじりじりとした痛みを感じた。「彩花の居場所を調べろ。どこに住んで、誰と一緒にいるのか、突き止めるんだ」何度か電話をかけた秘書は、強張った表情で部屋に戻ってきた。「社長、奥様は黒崎家が所有する邸宅に住んでいます。数日前には西山霊園と、裁判所へ行かれたようです」悠斗は眉間に深くしわを寄せる。彩花は本当に健二と一緒にいるのか?しばらく考えた後、悠斗は「車を用意しろ。彩花に会いに行く」と言った。黒崎家の隠れ家のような邸宅へ向かう車の中で、悠斗は緊張で額に汗を浮かべていた。彩花と直接会って、全てをはっきりさせなければならない。そのために、泉を捕まえさせて神社に連れて行かせた。今頃、泉は階段を引きずられながら何往復もしているはずだ。泉に、彩花が受けたのと同じ苦しみと屈辱を味わわせる。そうすることでしか、自分の罪悪感と後悔を和らげることができなかった。車が邸宅の門の外に停まった。悠斗と秘書は警備員に対して30分ほど粘ったが、警備員は頑として通してはくれない。「許
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