未来より長い、あの日の記憶 のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 23

23 チャプター

第21話

会社の最重要機密が漏洩したせいで、次々と問題が起きていたため、悠斗は重傷の体を引きずって会社に戻らざるを得なかった。取引先からは契約を打ち切られ、莫大な賠償金を請求された。製造元からは支払いを催促され、契約更新も断られてしまった。悠斗は点滴を打ちながら仕事を片付けており、もう全てがめちゃくちゃだった。データ漏洩の件を調べていた秘書が、ついに彩花に行き着いた。「社長、奥様です。社長のパソコンから会社の機密情報をコピーしたのは奥様だったんです。そして、奥様の背後には……誰かいるようです」実は彩花の仕業だということに、悠斗はとっくに気づいていた。しかし、秘書は彩花の背後に誰かいると言う。いったいそれは誰なんだ?すると、秘書は言いにくそうに口を開いた。「黒崎家の人間です」黒崎家の人間?3年前の熾烈な企業間戦争で、自分の策略によってこの街のビジネス界から追い出された、あの黒崎家か?黒崎家が新港市に追いやられてすぐ、黒崎グループの会長がショックで亡くなったということを、風の噂で聞いていた。そういえば、黒崎家のあの遊び人、健二とかいう男がいた。もしかして、あいつの仕業なのか?だとしても、彩花がどうして健二と一緒に?悠斗は訳が分からないのと同時に、心の奥でじりじりとした痛みを感じた。「彩花の居場所を調べろ。どこに住んで、誰と一緒にいるのか、突き止めるんだ」何度か電話をかけた秘書は、強張った表情で部屋に戻ってきた。「社長、奥様は黒崎家が所有する邸宅に住んでいます。数日前には西山霊園と、裁判所へ行かれたようです」悠斗は眉間に深くしわを寄せる。彩花は本当に健二と一緒にいるのか?しばらく考えた後、悠斗は「車を用意しろ。彩花に会いに行く」と言った。黒崎家の隠れ家のような邸宅へ向かう車の中で、悠斗は緊張で額に汗を浮かべていた。彩花と直接会って、全てをはっきりさせなければならない。そのために、泉を捕まえさせて神社に連れて行かせた。今頃、泉は階段を引きずられながら何往復もしているはずだ。泉に、彩花が受けたのと同じ苦しみと屈辱を味わわせる。そうすることでしか、自分の罪悪感と後悔を和らげることができなかった。車が邸宅の門の外に停まった。悠斗と秘書は警備員に対して30分ほど粘ったが、警備員は頑として通してはくれない。「許
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第22話

「私たちの子供?」彩花は思わず吹き出して、嫌悪感あらわに悠斗の手を振り払う。「悠斗、あなたに子供を作る能力があったら、今ごろ私の機嫌をとるような真似をしたのかしら?」彩花は一歩ずつ悠斗に詰め寄り、歯を食いしばったまま、はっきりと言い放った。「あなたは心から後悔してるわけじゃない。ただ怖くなっただけ。自分の欠点のせいで、今持ってるもの全部を失うのが怖いのよ。違う?」隅に追い詰められた悠斗は、足の力が抜けてその場に崩れ落ちた。なんとか立ち上がり、彩花の足元にひざまずくと、涙ながらに謝罪し懇願した。「彩花、俺は本当に間違ってた。これからの人生で必ず埋め合わせをするから。何もかも全部お前にあげる。だから、俺のそばに戻ってきてくれ、な?」彩花は悠斗を見下ろす。かつて自分も、こんなふうに惨めに彼の足元にひざまずいて、お腹の子を助けてと懇願したことを思い出した。でも、結果はどうだった?彩花は手を振り上げ、力いっぱい悠斗の顔に平手打ちを喰らわせた。その勢いで、悠斗の口の端からは血が滲む。「悠斗、よくもまあそんなことが言えるわね。私はあなたと違って、力で真実をねじ曲げたり、人の命を軽んじたりはしない。あなたと河内さんは、法に裁かれるのを待ちなさい」そう言うと、彩花は自分のズボンの裾を掴む悠斗の手を蹴り、振り返りもせず応接室を出て行った。悠斗は絶望して床に崩れ落ちた。スマホからは、まだ泉の泣き叫ぶ声が聞こえている。健二は、かつてあれほど得意げだった松浦グループの社長が、今や見る影もなく落ちぶれた姿を見て、口の端を上げた。「松浦、因果応報ってやつだよ。色恋沙汰の清算は終わったみたいだし、次は俺の長年の恨みを晴らさせてもらうよ」健二は買収に関する書類を悠斗の目の前に投げつけた。「ここにサインすれば、少なくとも路頭に迷うことはない」悠斗は震える手で散らばった書類を拾い上げる。「買収」、「資産再編」といった文字が目に突き刺さる。傍にしゃがんだ秘書が、心配そうに声をかけた。「社長、今ならまだ松浦グループを守れます。ですが、これ以上は……」「ふざけるな!」悠斗は勢いよく立ち上がると、手の中の書類をびりびりに引き裂いた。「守って何になる?松浦家のものじゃない松浦グループに、何の価値があるっていうんだ?」悠斗は振り返り
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第23話

彩花は思い通りに松浦グループの資産の半分を手に入れた。銀行口座の数字を見て、口の端を上げてにやりと笑う。お金なんてどうでもよかった。しかしこの口座の数字は、悠斗と泉への復讐が成功した証なのだ。それに、悠斗が一切の治療を拒否していて、自分に会いたがっているという内容の電話を病院から受けた。病院へ向かう前に、彩花はまず西山霊園に寄った。そして、母と子供の墓石の前で、声を上げて泣いた。復讐を決意してから、一度も心ゆくまで泣いたことはなかった。しかし、すべてが終わった今、心に溜まっていた悔しさと悲しみが、ようやく解き放たれたのだった。「お母さん、赤ちゃん……二人の仇は、私がとったからね!」病院のベッドに横たわる悠斗は、数日見ないうちに骨と皮ばかりに痩せこけて、まるで死人のようだった。医者によれば、このままでは余命いくばくもないとのこと。彩花が病室に入ってくるのを見て、悠斗の乾ききった目に、ふっとかすかな光が灯った。悠斗は震える手を伸ばして彩花を掴もうとした。しかし、そんな力は残っておらず、ベッドの脇にだらりと垂れてしまった。「彩花、会いに来てくれたのか?やっぱり俺のこと、まだ好きだったんだな、そうなんだろ?」彩花は椅子を引き寄せて腰を下ろす。そして、かつては深く愛し、今は心底憎んでいる男の顔を、じっと見つめた。しばらくしてから、彩花は口を開いた。その声には、何の感情もこもっていない。「悠斗、あなたがこんなふうに自分を痛めつけて死んだとしても、私は絶対に許さないから」悠斗の目からまた光が消えた。「じゃあ、どうすれば許してくれるんだ?」彩花はカバンからファイルを取り出し、悠斗の前に差し出す。「接近禁止令に関する書類よ。もう、なんの関係も持ちたくないからここにサインしてちょうだい」ファイルの表紙にある「接近禁止令」という文字を見て、悠斗の口元がひくひくと痙攣した。「彩花、俺はどうかしてたんだ。河内の口車に乗せられて……お前と離婚する気なんて、一度もなかった。信じてくれ、一度でいいから!」彩花は立ち上がると、悠斗を見下ろしながら、そっとため息をついた。「信じるとか信じないとか、もうどうでもいいの。だって、あなたが死のうが生きて法の裁きを受けようが、もう私には関係ないことだから」彩花はドアまで歩いて行くと
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