「……なんだって?」大迫からの定期報告を聞いた瞬間、冬弥の思考が一瞬途切れた。言葉は耳に入っている。だが意味として繋がらない。『ですから、姐さん宛てに組長さんの愛人候補から手紙が来てるんです』画面越しに大迫が茶封筒をひらひらと振る。わざとらしく送り主の名前――【谷川美香】の部分を映してみせた。『これが今日届いたやつです』「……つまり?」『何通も届いています』冬弥の眉間に深い皺が刻まれる。『中身はどれも似たようなもんです。組長さんとの愛のメモリー、ってやつですね』「そんなものはない」即答だった。間髪入れない否定。その響きは大迫へ向けたものというより、その先にいるあやめに向けているようであった。『まあ、組長さんが記念写真だの証拠写真だの残すタイプじゃないのは分かってますよ。俺はね』嫌な断言だった。「……あやめは?」大迫の軽口などどうでもいい。重要なのは、あやめがそれをどう受け取ったかだった。『“うわあお”って言ってました』「は?」『感心した感じで、“うわあお”って』理解が追いつかない冬弥へ、大迫は一枚の写真を画面に映した。冬弥の視線が吸い寄せられ、その後ろで樹が思わず「うわあお」と呟く。写真には、谷川美香があまりにも露骨で挑発的な姿で写っていた。誤解を生むためだけに作られた、悪意の塊のような一枚だった。冬弥の顔が静かに歪む。「……恥ずかしくないのか」吐き捨てるような声に、大迫が楽しそうに笑う。『姐さんも同じこと言ってましたよ』そんな報告を軽くされる状況ではない。だが大迫にとっては、すでに見慣れた話題になっているらしい。(つまり、この手のものが何通も、あやめの元へ届いている)『以上がこちらの報告です。姐さんに報告しろって言われたんで、ちゃんと伝えましたけど……組長さん、大丈夫ですか?』冬弥は答えなかった。答えられなかった。顔色は青白く、呼吸もわずかに乱れている。表情こそ大きく崩れていないが、内側では明らかに何かが崩れていた。「駄目ですね」代わりに樹が前へ出る。『ですよねー』大迫が軽く笑った。『いやあ、女ってえげつないと思うことは多いですけど、この谷川美香って女は別格ですね』画面には次々と別の写真が映される。樹はそれを見て深くため息を吐いた。『明らかに事後って感じですけど、やったんす
Last Updated : 2026-02-17 Read more