「今宮さん」社長室の扉が開き、大迫が大きな白い箱を抱えて入ってきた。「あやめさんから、贈り物へのお礼です」そう言って、テーブルの上へ丁寧に箱を置く。迅は視線を落とし、小さく眉を上げた。箱には一つのブランドロゴが刻まれている。――AURELIUS。その瞬間、迅の口元に薄い笑みが浮かんだ。「JAPANの表記がないな」AURELIUS は日本国内にいくつか支店があるが、本店だけが「AURELIUS JAPAN」という特別仕様のブランドロゴが使用できる。それは誰でも知っていること。(本店でそう簡単に買えるわけがないか)迅は箱を軽く叩きながら、大迫へ視線を向けた。「急な帰国だったのに、よく間に合わせたね」AURELIUS の箱は毎月デザインが変わる。これは今月のデザインで、今日は一日。今の時間を考えれば、つい先ほど購入したものだと分かる。「どこの店舗まで走った?」試すような口調だった。だが大迫は首を傾げる。「店になんて行っていませんよ?」「じゃあ、これは?」「これは、あやめさん宛てに屋敷へ届いていたものです。屋敷に呼ばれて、今宮さんへ渡してこいと言って段ボールごと渡されました」その返答に、迅の笑みが消えた。(屋敷に……届いていた?)AURELIUSにオンラインショップは存在しない。そこで気づいた。AURELIUSの金色の箔押し。他はオーロラに光る銀色の箔押しで、金色の箔押しを使うのはアメリカの本店のみ。迅はゆっくりと箱を開けた。中から現れたのは、一着のジャケット。見覚えのないデザインだった。だが、一目で分かる。特徴のある縫製。生地の使い方。ライン。間違いなくAURELIUSだった。「サイズは合うと思いますけど」大迫が悪びれもなく続ける。「アメリカ暮らしは五キロくらい太るって聞いたので、もし入らなかったら連絡してくださいって言われました」「……失礼だな」苦笑しながら迅は袖を通す。腕が自然に滑り込み、肩へ吸いつくように収まった。鏡を見る必要もない。分かる。(ぴったりだ)既製品ではあり得ない。体へ沿う感覚が違う。迅は静かに息を吐いた。(オーダーか……)だが、それ以上に理解できないことがある。今回の帰国は極秘だった。アンバサダー就任も、最後まで情報は絞っていた。冬弥にすら
Terakhir Diperbarui : 2026-04-20 Baca selengkapnya