「ご相談したいのは、教育というか……若い連中を、どう育てていくかということです」水原は膝の上で指を組み、わずかに視線を落とした。先ほど口にした問題とは、預かった若者たちが騒ぎを起こしたという話ではなかった。彼らを受け入れたからこそ見えてきた、もっと根本的な問題だった。「育て方の方向性、ですか?」「はい」水原は慎重に頷く。「昔のやり方を押しつけるつもりはありません。ただ、辰組で教えられてきたこと以外に、これといった技能を持たない者も多くて」組の中で命じられたことには従える。力仕事も、荒事もできる。だが、一歩外へ出れば、それだけでは生きていけない。「何人かは、きっかけさえあれば伸びると思うんです」その言葉に、あやめは静かに水原を見た。以前の彼なら、使えない者を切り捨てたかもしれない。だが今は、一人ひとりの先を考えようとしている。その変化を確かめるように、あやめはわずかに目を細めた。「変化は、受け入れるべきだと思っています」水原は一度言葉を止め、首を横へ振る。「いえ。変わらなければならないと、俺自身が教えられましたから」誰かに言わされた言葉ではない。自らの失敗と向き合い、得た答えだった。「姐さんには、感謝しています」「私に?」あやめが問い返すと、水原は気まずそうに視線を逸らした。その頬が、ほんのわずかに赤くなる。「倅が、帰ってきまして」「あら」早苗が目を丸くする。「『親父のようにはならない』と言って、奥様のご実家へ無期限の家出をしていた息子さんが?」「……詳しい説明をどうも」水原は苦い顔をした。だが、その表情の奥にある喜びまでは隠せていない。「今の蛟組なら継ぎたいと、頭を下げてきたんです」かつての蛟組は、水原の強さだけで成り立つ組だった。意見を聞かず、力で抑え、従うことを求める。息子が嫌ったのは、そんな父親と組の在り方だった。だが、あやめと関わり、水原は変わった。その変化は、遠ざかっていた息子にも届いたのだ。「おめでとうございます」あやめが柔らかく微笑む。「からかわないでください」「心から申し上げていますよ」水原は気まずそうに咳払いをしたが、その口元には小さな笑みが浮かんでいた。あやめは紅茶を一口含み、話を戻す。「若い方々の教育について、水原組長はどのようにお考えですか?」「組の仕事
Huling Na-update : 2026-04-25 Magbasa pa