組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~의 모든 챕터: 챕터 101 - 챕터 110

150 챕터

28.同じ轍(てつ)②

 お互いに相手だけが唯一家族になりうる存在だと思っていたのに、芽生にとっての京介は〝唯一〟ではなくなってしまった。それがこの感情の正体だ。 そう気付いた京介は、(俺も大概クソヤローだな)と嘆息せずにはいられなかった。 なんのことはない。芽生に誰よりも幸せになって欲しいと願う心の根っこの部分で、自分と同じように孤独な身でいて欲しいとも希っていたってことだ。(芽生が自分にゃねぇモンを得たことで、こんなにも不安になるなんてな。俺はどんだけ自分勝手な男なんだよ) もちろん相良組の面々のことだって、自分の身内のように大切に思っている。だが、構成員をもってしても、芽生ほどの存在にはなっていなかったということだ。(芽生に依存してたのは俺のほうかよ) 京介は自分の身の上を今ほど忌々しく感じたことはない。「それでね、おじいちゃん」 そんなことを一人考えていた京介に、芽生のソワソワとした、だけどどこか弾んだ声音が飛び込んできた。それと同時、不意にこちらへ視線を向けられて、「京ちゃん」と呼びかけられる。何事だろうか? 家族水入らずのところを邪魔する気なんてさらさらなかった京介は、「あ?」と努めて不機嫌そうに返事をしたのだが、そんなのお構いなし。栄蔵のベッドへ腰かけていた芽生が、そこからぴょんと飛び降りてこちらへ駆け寄ってくるのだ。「私ね、京ちゃんと……この人と結婚しようと思っているのっ」 グイッと芽生に腕を引かれてにっこり微笑まれた京介は、思わずフリーズしてしまう。 芽生の言葉は正に青天の霹靂。まさかこのタイミングで芽生の方から婚姻の件を切り出されるとは思っていなかった京介は、思わず「はぁ!?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。*** 孫娘は最初こそしどろもどろではあったけれど、今日一日あっ
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28.同じ轍(てつ)③

 それに……。 あろうことか相良が、まるでそんな孫娘の告白に面食らった様子で「はぁ!?」と声を上げたのも気に入らないではないか。(おい、相良京介! お前、うちの可愛い孫娘に何の不満があるというんだ!) それでだろう。ヤクザ者と孫が夫婦になるなんてあり得ないと思っているくせに、心裏腹。相良が芽生のことを気に入らないみたいな態度を取ったことを腹立たしく思ってしまったのは。「芽生、わたしには何の相談もしてくれてないのに、それは決定事項なのかい?」 栄蔵は自分から呆気なく離れて、相良の手に嬉しそうに腕を絡めてこちらを見詰めてくる芽生にも、非難がましい口調でそう問いかけずにはいられない。 そもそも、さっきまで自分の存在を知らなかった芽生はともかくとして、相良京介は栄蔵が彼女の祖父であることを知っていたはずだ。 なのに、芽生のことを気に入らないみたいな雰囲気を醸し出しておきながら、まるで外堀を固めるみたいに栄蔵をすっ飛ばして、孤児院の恩師と友人に大切な孫娘との婚姻届の証人欄を埋めさせるとか、わざとやったとしか思えないではないか。「わ、わたしは反対だ!」 それで、当然というべきか、気が付けばそんな言葉が口をついていた。*** 正直過去に芽生から渡された婚姻届を未練がましく持っていたこと自体、京介にとっては有り得ないことだった。 それを細波鳴矢のことにかこつけて引っぱり出したのは、その件が自分の気持ちに踏ん切りをつけるためのきっかけに過ぎなかったことを、京介だけはイヤになるくらい知っている。 『YURIKA』の放火をきっかけに捕まえた細波鳴海に自白させた、一連の放火に関する動機。それを千崎経由で聞かされ、その絡みで芽生の身内が大企業の社長・田畑栄蔵だと知った時には強い焦燥感に駆られたのを覚えている。 千崎に命じて鳴海が持っていたというDNA鑑定の書類をスマートフォンへ送らせた京介は、それを栄蔵宛に芽生の写真とともに転送して孫娘を連れて行くと連絡
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29.細波鳴海①

 街へ等しく夜のとばりが降り始めた頃、京介は埠頭に並んだ倉庫のひとつへたどり着いた。 京介が、見張りの若い衆が開けてくれた重い鉄扉を抜けて薄暗い倉庫内へ入るなり、「カシラ」という聞き慣れた声が投げかけられる。 京介を呼んだ男――千崎雄二が流れるように京介へ一礼して、それに倣うようにその場へいた男たちも一斉に頭を下げた。 京介は配下のものたちに目配せすると、千崎の足元で、焼け付いたアスファルト上へいきなり投げ出されたミミズのように忙しなくもがいている細波鳴海の前へ立った。 両手両足を拘束されて地べたへ転ばされた鳴海を乱暴に引き起こすと、噛ませていた猿轡を外す。余計なものを見る必要はないため目隠しはしたままだ。「あんたたち、どうせヤクザ者でしょう!? こんな真似をして一体どういうつもり!? あんたたちの事務所や忌々しい小娘の家へ火を付けたのは私だって白状したんだから、さっさと警察に突き出すなりなんなりすればいいじゃないの!」 手足の自由を奪われた上、何も見えないことが不安感を煽るのか、まるでそれを払拭したいみたいに唯一自由を取り戻した口をフル回転させて金切り声を上げる鳴海に、京介は吐息を落とした。(威勢のいいこった) 聞きたいことがあったから口枷を外したものの、こんなに喧しく喚き散らされたのでは不快で仕方ない。 恐らく対角線上――かなり離れた場所に息子の鳴矢がいることには気付いていないんだろう。 こんな女だって、腐っても母親だ。もし可愛い息子が自分と同じように両手両足を拘束された上、ボコボコに殴られた状態だと知ったら今みたいに強気ではいられないだろう。 先ほどの鳴海同様猿轡を噛ませて口を封じられた鳴矢は、相当痛めつけられていることもあって、弱々しいくぐもった呻き声を上げることしか出来ない。 自分が喚くことで手一杯な鳴海には、鳴矢が発する小さな声なんて聞こえやしないんだろう。
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29.細波鳴海②

 鳴海は京介から吹きかけられた呼出煙にゲホゲホと咽ながらも、今までマシンガンみたいに騒ぎ続けていたのが嘘みたいに押し黙る。火がついた煙草の先を肌に押し当てられたわけでもないのに、火傷を恐れるみたいにビクビクしながら京介の言葉に頷いた。目隠しをしていて見えないが、もしかしたら恐怖で泣いているかも知れない。 だがそんなこと、京介は知ったことではない。相手が泣こうが失禁しようが、やるべきことを遂行するのみだ。「芽生の母親の中村沙奈、覚えてるよな?」 京介が沙奈の名を出した途端、鳴海がビクッと肩を跳ねさせた。それは京介にとって、『知っている』と白状したも同然だった。「彼女が入院した母親の奈央子にも連絡を入れず、赤ん坊を病院でもねぇトコで秘密裏に産んだのはお前の差し金か?」 鳴海が看護師なことは調べが付いている。だが、助産師の資格までは持っていなかったはずだ。 質問に答えようとしない鳴海から一歩離れると、京介は彼女の首筋へかかる髪の毛を無造作に払い退けて、髪の生え際に近い場所へ煙草の火を押し当てた。 突然のことに「ぎゃぁ!」と悲鳴を上げてのけぞる鳴海の腹を蹴って黙らせると、「聞かれたことには三秒以内に答えろ。でないと次は顔にやんぞ?」 低めた声音で脅しをかける。 実際は見えるところに傷を負わせる気なんてさらさらない。 捕まえた際、佐山文至によってボコボコにされていた鳴矢は仕方がないとして、鳴海の方は表面的には綺麗なまま警察へ引き渡すつもりだ。 どうせすぐにバレるだろうが、その辺は警察の上層部にいる顔馴染みが何とかしてくれるだろう。だが、まぁ面倒事は極力避けるに限るのだ。「で、どうなんだ?」 京介の問いかけに鳴海は観念したように「私が脅したのよ!」と吐き捨てた。「脅した?」「産んだ子供、父親の|栄一郎《えい
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29.細波鳴海③

「あなたの病気、雇い先にバレたら仕事を失いますよね?」 安西を見つけ出してそう脅して……黙っている代わりに奈央子を轢いて欲しいとお願いしたら、面白いぐらい安西が動揺した。それを見て、鳴海は(これは使えるな)と思ったのだ。 可愛い息子鳴矢のため、邪魔な田畑の跡取り息子・栄一郎を亡き者にした今となっては、唯一鳴矢の障害となり得る存在は、沙奈が身ごもっているという栄一郎の子だけ。 最初は腹の中へいる間に沙奈ごと葬り去ってしまおうかとも思っていたのだが、栄一郎との会話の中で沙奈の腹の子が女の子だと知って気持ちが変わった。 もしもの時、鳴矢のさかえグループでの跡取りとしての地位を強固なものとするため、田畑の血を引く赤ん坊を鳴矢の伴侶として掌握しておくのはとても名案に思えたのだ。 そこからは沙奈を脅すための材料集めに奔走して、奈央子の生活パターンを調べ上げた。奈央子がスーパーのパートタイマーの仕事をしているのを知った鳴海は、奈央子が遅番シフトの際は、帰りが夜になることを突き止めた。 田畑家から、母子ふたりがつつましやかに暮らしていくには十分すぎるほどの手切れ金を受け取っていたはずなのに、ホント貧乏くさい女ね! と思ったのも鮮明に覚えている。もしも自分が奈央子の立場なら、仕事なんてさっさと辞めるのに、と。 締めのシフト勤務の場合、奈央子は二十一時半に店を出て、家路を急ぐあまりだろうか。ちょいちょい車通りの少ない横断歩道を、赤信号でも渡ってしまう。「ほら。夜道で信号無視の相手を誤って轢いてしまっても、事故で処理されるし情状酌量だってされるはずよ?」 そう唆したら、思い通りに安西が動いてくれたのだと鳴海が自白した。 奈央子が事故に遭ったという知らせを受けたあとの沙奈を篭絡するのはとても簡単だった。「
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29.細波鳴海④

(んなことしたら、芽生のそばにいられなくなっちまうわ) バレなければいいというものではない。 鳴海に脅されたというトラックドライバーの安西にしてもそうだが、後ろ暗いことは極力しないほうが身のためだ。(って極道なんかやってる俺が思うのも妙な話だがな)「怖ぇこと言うなや千崎。まぁ気持ちは分かるがな」 京介はとりあえず側近を宥めると、「けど……まぁ、この女の大切にしてるモン、燃やすぐらいはしても罰、当たんねぇんじゃね?」とニヤリとする。 目には目を、なんなら倍返しでもいい。 そう言外に含ませた京介は、「関係ねぇ人間に迷惑が掛からねぇよう処理しろや」 千崎の情婦である百合香が火傷を負わされたというのもある。 建物ごと火をつけて近隣住民を巻き込むような真似はするなと釘を刺しつつ、家の中身をどこか他人様に迷惑が掛からない場所へ持ち出して燃やすのは構わないと、鳴海への報復については千崎へ一任した。 京介の言葉を聞くなり鳴海が「何をするつもりなの!?」と騒いだが、京介に「誰が勝手に喋っていいって言った?」とすごまれて黙り込む。それでもか細い声で、「息子のために残しておきたいものばかりなの」と泣きついてきたが、そんな泣き言を聞いてやる義理はない。 鳴海は、ひとしきり「せめて鳴矢のアルバムだけは!」と母親らしいことを言っていたけれど、京介としては芽生から両親やそこから受けられるはずだった愛情、その他諸々を奪っておいて虫が良すぎるだろ? としか思えなかった。むしろ鳴海の泣き言を聞いて、「写真から真っ先に焼け」と千崎に指示を出してしまったくらいだ。 京介が千崎へそう命じた時の、鳴海の絶望に打ちひしがれた姿を見て、ほんの少しだけ溜飲が下がった気がした京介である。 赤ん坊を沙奈から
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30.細波鳴矢①

 用の済んだ鳴海を千崎に任せると、京介は佐山文至が見張っている倉庫の対角線上へ足を向けた。 さして吸った気なんてしないのに、すっかり根元の方まできてしまっていた煙草を携帯灰皿にねじ込むと、京介は新たな一本に火をつけて咥えた。そうしておいて、気持ちを切り替えるように大きく吸い込んで、ふぅーと煙を吐き出す。 京介へ一礼する佐山に小さく頷くと、鳴海同様手足の自由を奪われ、目隠しに猿轡を噛まされた状態で床へ転がされている細波鳴矢を見下ろした。「目と口」 すぐそばの佐山へ端的にそれだけを告げると、心得たもの。佐山が鳴矢の腕をグイッと掴んで座らせて、目の覆いと口枷を外した。 先ほど千崎に引っ立てられて行って、鳴海はもうこの倉庫内にはいない。あれだけ喚いていたのだ。母親の存在は視野を奪われた状態でも感じていただろう。むしろ視界が開けた先に、いると思っていた鳴海の姿がない。その方が鳴矢の恐怖心を煽れて好都合なんじゃないか? そう判断した京介は、怯えたようにこちらを見遣る鳴矢の前へしゃがみ込んだ。「ママは……」 案の定、倉庫内をキョロキョロと見回して、すぐさま鳴海の姿がないことを不審に感じたらしい鳴矢がポツンとつぶやく。その声に、京介はスッと瞳を眇めた。(この歳になって〝ママ〟とはまた……) 如何に目の前の男が母親に負んぶに抱っこで生きてきたのか、その甘ったれた呼び方だけで垣間見えた気がして、京介は虫唾が走るのを感じた。(自分の母親が芽生からそういうのを根こそぎ奪っちまったとは思ってねぇんだろうな) そればかりか、母親の言うがまま。芽生を自分たちが幸せになるためだけの道具にしようとしていたのだと知っているから、余計に腹立たしい。「母親の心配してる余裕があんの、ある意味すげぇな。俺、今からアンタにもしっかりと落とし前をつけてもらう気満々なんだけど?」 グ
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30.細波鳴矢②

「俺が大事な女、傷付けられたって名目で何かやらかすのも、大義名分があるってことで、構わねぇよなぁ?」 京介がそう問いかけた途端、慌てたように「そっ、そんなことを言ったわけじゃないだろ!? 曲解するなよ!」と言い訳がましく鳴矢が喚き散らす。 京介はそんな鳴矢を黙殺すると、佐山へ視線を向けた。「佐山、指示しといたモンの手配は出来てるか?」「もちろんです」 京介の言葉に鳴矢が心底怯えたような顔をして、「なっ、何をするつもりだ! この反社ども!」と縛られたままの身体をジタバタさせる。 京介は「うるせぇよ」と鳴矢を一瞥してから、彼の上へわざと煙草の灰を降り注がせた。別に初っ端のように塊で落ちたわけではない。崩れた灰が降り注いだだけだから火傷なんてしないだろうに、鳴矢はまるで熱さを感じたみたいに身をよじった。 そんな鳴矢に軽く蹴りを入れて止めをさすと、京介は佐山が差し出した紙パックと、半ばからスパッと上下に切り分けられたペットボトルの飲み口側を受け取った。「押さえろ」 周りに控える男たちへ京介が命令を下すと、「や、やめろ! 僕に触るな!」と藻掻く鳴矢をお構いなしにガッチリと拘束させる。「なぁ細波さんよ、これ、何だか分かるか?」 京介が目の前でチャプチャプと水音を立てて揺する紙パックを見て、それが未開封なことを確認した鳴矢が「た、ただの牛乳、じゃないか。……だろ?」と縋るような視線で見つめてくる。「ああ、今んトコただの牛乳だ。お前が猫に飲ませたのと一緒だな。だが――」 ククッと笑って牛乳を開封すると、京介は佐山に目配せする。「なんの変哲もねぇ牛乳を飲ませたんじゃアンタ、腹下すとは限らねぇしな、ちぃーとばかり細工させてもらうわ」 言って、佐山が追加で差し出してきた薬のパッケージと思しき箱を受け取った。 いわゆる刺激性下剤の代表格ともいえる、効き目が強めなそれは、飲めば腸の動きを著しく刺激して、腹痛とともに下痢を引
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31.特注の……①

 『田畑栄蔵』と、美しい墨文字が浮き上がって見える手彫り技法の木製の表札が掲げられた数奇屋門に仰々しく出迎えられる。 徹夜明けの京介には、朝の光に燦然と輝く瓦屋根と白壁は少々まぶし過ぎて、思わず目を眇めずにはいられない。 いかにも日本家屋という佇まいは、大会社『さかえグループ』の社長の家として申し分のない大きさと威風堂々とした雰囲気を醸し出していた。 ぐるり先が見えないほど向こうの方まで伸びた真っ白な塀は、敷地全体を囲んでいる。瓦屋根の乗っかった伝統的な土塀というやつだ。 だが古風に見えて、要所要所に配された監視カメラには一分の隙もない。こういう稼業をやっていると分かるのだが、なかなかに計算され尽くした配置だ。 加えて敷地内には住み込みのボディガードも複数名いるらしいから、本当に大したものだと感心する。 どこぞの国の大統領張りにセキュリティ面がしっかりしていると調べが付いていたからこそ、京介も大事な芽生を安心して任せることが出来たのだ。 数奇屋門の雰囲気を壊さないよう配慮された、控え目な色合いのインターフォンを押すと、「相良京介だ。神田芽生を迎えに来た」 カメラがこちらの様子を観察していることは承知の上で用件を話す。 すぐさま応答があって、中から閂を外しているのであろう音が聞こえてきた。 出迎えてくれたのは屈強そうな雰囲気の男だったから、恐らくボディガードの一人だろう。「こちらです」 その男に案内されるまま付き従えば、これまた(どこの施設の日本庭園だよ)と言いたくなるような白い玉砂利が敷き詰められた立派な庭と、圧倒的な存在感を誇る玄関が見えた。 京介たちが玄関にたどり着くより先。引き戸が中からガラガラッと開いて、子犬みたいにちっこいのが飛び出してきた。「京ちゃん!」 恐らく、屋敷の中から京介が入ってくるのを見ていたんだろう。当然のように京介の胸に
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31.特注の……②

 腕の中でじっと自分を見上げてくる芽生と、あえて視線を合わせないようにして振り返ると、一言「済ませてきた」とだけ返した。だが、栄蔵も心得たもの。「そうか」と神妙な顔をして頷いただけで、それ以上は聞いてこなかった。 詳しい話は芽生がいないところでしたい。 京介は、その気持ちは栄蔵も同じなんだな……と思った。***「なぁ芽生。婚姻届だがな――」「今から出しに行くの?」 〝婚姻届〟と口にした途端、芽生からワクワクした瞳で見詰められて、京介は思わず言葉に詰まる。 昨日は一日色々ありすぎた。買い物から戻ってきて捨て猫を拾い、一息つく間もなくランジェリーショップや事務所への放火で呼び出された。芽生の誘拐と殿様の入院。陽だまりへの訪問。芽生を田畑栄蔵に引き合わせたり、夜通しかけて細波母子に制裁を加えたりもした。 一時は流れに任せて出してしまおうかと思った紙片だが、落ち着いてみると、バタバタと入籍するのは何かが違うと思ってしまった京介である。 芽生の顔を見たい一心で、割と朝早い時間――。 風呂にも入らず迎えに来てしまったが、京介は徹夜明けだ。「それ、日を改めねぇ?」「なんで? 私との結婚、嫌になっちゃった?」 京介の言葉を聞くなり芽生が不安そうに瞳を揺らせるから、京介は「んなわけねぇだろ」と、芽生を腕の中へ引き寄せた。 石矢が運転している車の中だ。石矢の視線が気にならないわけではなかったが、荒事を済ませるなり田畑栄蔵のもとへ芽生を迎えに来ている。今更芽生を特別扱いしている事実がひとつ増えたからといって、大差ないかと開き直ることにした。「どうせ出すなら日柄とか……そういうの見て出してぇなと思っちまっただけだ。あと……まぁあれだ。施設に入ってるとかいうばあさんにも報告した後の方がいいだろ?」 栄蔵は芽生とともに|中村《なか
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